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「それでも盗撮と同じでしょ? 記録してるわけだしさ、事前に説明もなかったよ」
「説明したら監視にならないでしょ? 抑止力としての機能じゃないんだよ。それに夏だって、まったくなんの制約もないとは思ってなかったでしょ?」
まあ、それはそうだけど。……でも、やっぱり遥はどこかずれている気がする。
だけど夏自身、黙って銃を持ち込むというルール違反をしているので、あまり強くは否定はできない。(……半笑いで言われるとちょっとむっとするけど、まあしょうがない)
思い返してみると、木戸研究所の中にあるディスプレイやモニタの中には常に白いクジラが泳いでいた。あれは単なるスクリーンセーバーのような映像ではなく人工知能が画面の向こう側から私のことをずっと見ていたんだ。
それだけじゃない。ドームに入るゲートを通るときにも、……あのときはまだドームのことを巨大なガラスの壁だと思っていたけど、あのガラスの壁にも確か白いクジラの映像が流れていた。地上の施設もすべて監視しているんだ。……ゲートを通ったときから私は監視されていたのか。
「これがもう一つの研究成果なの? あんまりいい趣味じゃないな」と夏は言う。
そんな夏の言葉に対して遥は笑っているだけでなにも言わない。
その笑顔を見て、夏は反論を諦める。遥は天才だけど変わり者なのだ。いや、天才だから変わり者なのかな? とにかく常識がない。文句を言っても無駄なのだ。
夏は思考を切り替える。
それからシロクジラのことを、……澪という名前で呼ばれる人工知能のことを考える。
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