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夏は足を抱えるようにして遥のベットの上で丸くなる。
疲労感が強い。体がとても重かった。今日はずっと歩きっぱなしだ。眠気に誘われるようにして夏はそっと目を閉じる。とても気持ちいい。このまま眠ってしまおうかと考える。
でも遥ともっとたくさんお話しがしたい。二人の時間を楽しみたい。
暗闇の中で、夏がそんなことを考えていると奥のドアが開く音が聞こえた。目を開けるとそこにはパジャマ姿の遥がいた。上下とも真っ白な絹のようなパジャマ。お風呂から上がったばかりの遥はまだ少し濡れているその美しい黒髪を大きな白いタオルで拭きながら部屋の中を移動する。遥の顔は火照っていて、両方の頬が薄い桜色に染まっていた。お風呂上がりの遥はとてもいい匂いがする。
遥は夏の隣に座った。
それから手を伸ばしてベットの上で丸くなっている子供みたいな夏の頭を、とても優しい手つきで撫でてくれた。久しぶりの感触。夏の心が淡い快楽に震える。遥の手。遥の温もり。遥の匂い。ずっと、こんな時間が続けばいいのにな……。そんなことを夏は思う。
なんで私たちは離ればなれにならなくちゃいけないんだろう? どうしてずっと一緒に居ることができないんだろう? ……私がわがままなのかな? ねえ、どう思う? 遥。
しばらくして夏の充電が完了する。
夏の体に少しだけ元気が戻ってきた。夏は眠気を振り切って体を起こすと、そのままの勢いでベットから降りて床の上に立ち上がった。大丈夫。ご飯もいっぱい食べたし、私は元気だ。
「お風呂入ってくる」そう言って夏は遥の顔を見る。
「ゆっくりでいいよ。寝ないで待ってるから」まるで小さな子供をあやすような口調で、遥は夏に優しい言葉をかけてくれた。
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