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「久しぶりに頑張っちゃった。とりあえず冷めないうちに食べちゃおうか」
「うん」二人で一緒の食事。本当に久しぶりだ。
夏は遥の作ってくれた料理に口をつける。それは肉じゃがだった。味がしみていて、とても美味しい。
「遥はずっと一人暮らしなんだよね?」
「そうだよ。ずっと一人暮らし。ここでの暮らしは一年くらいだけどね」
私が遥を探している間、遥はずっとこの場所で暮らしていたんだ。遥は私がいなくても全然寂しくないんだ。私は遥がいなくなって抜け殻みたいになっていたのに、遥は全然平気なんだ。遥のいない生活はとても寂しかった。そのときの気持ちを夏は思い出している。
「寂しくないの?」
「寂しくないよ。もともと一人には慣れているし、それに今の私には照子がいるからね。あの子と一緒なら、私はどんなことにも耐えられる」
遥はすべてを捨てて、照子を選んだ。照子のためにそれまでのすべてを投げ捨てたんだ。その捨てたものの中には瀬戸夏の存在も含まれている。だから遥は夏の前からいなくなったのだ。
木戸照子。とても美しい女の子。真っ白な肌をした遥のお気に入りのお人形。
「明日、誕生日だよね。照子は何歳になるの?」
「七歳。早いよね。時間が流れるのって」どことなく嬉しそうに遥は言う。
「遥はもうここから出ないの? ずっと照子と一緒に暮らしていくの?」
夏は遥を探す旅の途中で片っ端から木戸遥の情報をありとあらゆる手段を使って収集した。遥は有名人なので、それはかなりの量になったがそのおかげで夏は遥のこれまでの経歴をほとんどすべて暗記していた。
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