25
夏はどこからか自分を見ている視線を感じた。でも周囲を見渡しても誰もいない。それは隠されている監視カメラの視線なのかもしれない。そう思うことで夏は気持ちを落ち着かせることにした。夏はぎゅっと自分の左手を握る。
夏の体は照子の部屋のドアの前で金縛りになったように動かなくなった。このドアの向こうに照子がいる。部屋の中でずっと一人で座っている。その姿を夏は想像する。すると、どうしてだろう? 夏の体は小さく震える。恐れている? 恐怖を感じている? 夏は意識的に呼吸をする。神経を集中させて心と体を落ち着かせる。自分の心臓の音が聞こえる。自分の体の一番深いところから聞こえてくる音に、夏は耳をすませている。
……大丈夫、私は大丈夫だ。
私は元気だ。体力もあるし、走ることにも自信がある。いつだって逃げ切れる。それに、いざとなったら戦ってやる。
だんだんと夏は自分の体を自分の意思で動かせるようになる。
夏は床に張り付いた足をゆっくりと動かして、照子の部屋の前から通路右方向に移動する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます