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「ウィズ!どうしたんだいきなり!」
ウィズの嬉しいけど驚きな大胆行動に、俺は慌てて問いただしたが、ウィズの返事はない。
見ると、ウィズは白目でぶっ倒れていた。
「ウィズ‼」
その後、魔力式手持ちストーブを持ってきたバニルに氷を溶かしてもらい、俺は部屋を脱出した。まだ外は危険かもしれないので、しばらくは店内に残ることにしたのだが。
「あぁ、疲労だな」
ウィズが倒れたことをバニルに相談すると、答えはすぐ帰ってきた。
「ここ最近、この赤字発生機が作った損失を清算するために不眠不休で働かせていたのだ。これが初めてではないし、こやつはリッチーなだけあってしぶといからな。大丈夫だと思ったが、とうとう倒れたか」
そういうバニルの顔は、仮面でよくは分からないが、少なくとも、倒れた上司を心配するものではなかった。
どちらかというと、ずっと使ってきたテレビの映りが悪くなったときの顔だ。
「つまり、ウィズは大丈夫なんだな?」
「あぁ、ほっとけばすぐに復活するだろう」
上司をほっとけとか言うバイトって、いや、こいつらの関係は今に始まったことじゃないか。
すると、バニルが唐突に。
「そうだ小僧、このぶっ倒れ店主がなにか訳のわからないことを言ったかもしれんが、全て病人の戯言だ。決して真に受けるなよ?」
つまり、ウィズが俺に迫ってきたりしたのは疲労で気が動転してたからと。残念だが納得だ。最近、どうもウィズは俺のヒロインルートからずれている気がする。
ん?ならあれもなのか?
そのことをバニルに訪ねようとすると、店の扉を開けてめぐみんが入ってきた。
「カズマ!やっぱりここに居ましたか。大丈夫です。もうみんな怒ってません。よく考えたら、カズマが調子に乗ってふざけたことを言うのはいつものことですしね」
「じゃあなんで来たんだよ」
「アクアがお腹すかせて駄々をこね始めたんですが、冷蔵庫の中身が特殊すぎて私達じゃどうすることもできなくてですね。このままだと、アクアがギルドへ呑みに行って散財して来そうなので」
またアクアかよ。
「ったく、しょうがねぇな」
俺は屋敷に帰ると、冷蔵庫の珍食材でなんとか夕食を作り、いつも通りの食事の後、寝ることにした。
次の日、ウィズが街を出たことを知った。
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