Xmas番外編!ファミネコヒーロー

紅音

第1話今日は何の日?

 僕が住むこのアヨリ町にも、「クリスマス」はある。もちろん、「クリスマスイブ」もあるわけであって。

 今日は、クリスマスイブである。


 「も~い~くつね~る~と~」

カルハがどこかで聞いたことのあるような歌を口ずさむ。

「それってあれじゃなかったっけ。お正月」

隣を歩いていたナタリが言った。あぁそうか。「もういくつねるとお正月」ってやつだったっけ。

「お正月より先にクリスマスじゃない?」

僕が言うと、カルハはのんきに、「そんなのどうだっていいじゃん~」と口を尖らせた。

 クリスマスイブもハロウィン同様、町を挙げてイベントが開催される。

 そのため、すでに少し前から町中が色づき始めていた。

 「今年もすごいにぎわってるね~」

ナタリが言った。町の中央広場には、僕らの身長をはるかに越えるクリスマスツリーが設置されていた。

 アヨリ町は、中央広場を中心に、八方位の方向に道が伸びている。それぞれ住宅街だったり商店街だったりするのだが、南通り商店街では毎年大規模なイルミネーションが、北通り商店街では、毎年イベントで盛り上がっている。この二つの商店街は毎年集客数で争うというのが恒例となっていた。

 「どっちにせよ北も南も行くんだけどね~」

カルハが代弁するかのように言った。

「そうだね。どっちもすごいし。どっちの商店街にも行きたいところあるもんね」

僕が言うと、ナタリもカルハもうんうんとうなずいた。

 口から零れ出る空気は、白い湯気となって消えていく。

「もう一年も終わる……」

このつぶやきも、喧騒に溶けて消えていった。

 僕がカイナにいちゃんからヒーローを継いでから、どのくらい経ったんだっけ。冬を迎えるのは二回目かな。去年の冬は特にこれといった事件は無かったからあんまりよく覚えていないけれど。

 今年はハロウィンで一騒ぎあったから、もしかしたらクリスマスも、なんて考えが頭をよぎる。

 「ファミ?」

ナタリの声で我に返る。

「どうしたの? 考え事してた?」

「あぁ、うん。ちょっとね」

空を見上げると、星がきれいに輝いていた。商店街は光で満ち溢れているのに、星が見えるだなんて不思議だな。

 商店街での用事も済ませ、僕らは来た道を戻っていた。

 今日はこれからナタリの家でクリスマスパーティーだ。さっきの買い物は、そのパーティーで必要なものをそろえるために行ったのだ。

 「ふたりともこのままうちくるでしょ?」

ナタリが言った。

「うん。そのつもり」

「もちろん!」

 今夜はクリスマスイブ。今年は平穏に過ごすことができるのだろうか……。


(つづく)

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