Reverse!エリート魔法使いの異世界テレポート!

KACLA −カクラ−

0.Prologue!科学の異世界テレポート!

 【 魔法の国アルカロディア。そこでは僕ら見習いの魔法使いが日々修行をしている。

 少し待て、そんな見習いザコと俺を一緒にしないでほしい。なぜなら、16歳ながら見習い魔法使いや、教官からも一目置かれている実践豊富なエリートだからだ。

 そんな自分はもちろん史上最強の魔法使いになれると自負していたのだが、つい先ほど魔法に失敗した・・・しかも取り返しのつかないミス・・・

 転移魔法「テレポート」を周りからの忠告を無視して使い、結果見たこともない別の世界へときてしまったのだ 】


 周りには天に届きそうなほどの高い変わった形の家。そして地面はなんだか黒く固い。先程からすれ違っている、馬がいないのに動いている不思議な乗り物。どんな魔法を使っているのだろうか?

 俺の知っている世界では、土の上に草や花が生えていてその上を馬車が通っていた。しかし、この世界の地面は黒くて平らなかたい何かに白い線が引かれており・・・・・・


『プーーーーーーー』


 後方から何か大きな音が聞こえる。振り返ると先程よりも大きい魔動車(魔法の動力車)が近づいてくる。


「¥%&#!」


 横を見ると、柵のようなモノの奥にある、レンガブロックで舗装された場所から、こちらを見て何かを少女が叫んでいた。と、思ったら次の瞬間少女は、俺のところへと走ってきて手を取りレンガの場所まで俺を引っ張っていった。


 彼女の話していた言語を聞き取れるようにするべく、今のうちに言語翻訳の魔法『エレファントフット』を実行する。


「あなた、私がいなかったら死んでたわよ?」


 魔法に成功したようで少女の言葉を理解できるようになる。なんだか恩着せがましい気もするが、ここは感謝するべきだろう。


「ああ、悪い」


 だが、俺は本心を隠すために、ぶっきらぼうに返さざるを得なかった。だって自分が魔法に失敗したなんて口がさけても言えるわけがないのだから・・・


「あなた、手と足から血が出てる。大丈夫?」


 彼女は心配そうに俺を見る。彼女の言う通りこの世界に転移したときに着地に失敗したせいか、手足から血が出ていたが、治癒魔法をかけておけば簡単に治る。なにせ、自分はエリートなのだ・・・元だが・・・


「大丈夫。治癒魔法ですぐに治るから」


 上級魔法ができるとアピールしたのだが、なぜかまた目を白黒させる少女。

 もしかしてこの世界では治癒魔法さえも当たり前だというのか!?


「馬鹿なこと言ってないでケガしたところ出して」


 彼女はまさか治癒魔法でもかけてくれるつもりなのだろうか? 彼女は後ろに背負っている袋からなにかを出す。と、いきなり液体を傷口にかけてきた。


「痛たたたた・・・いきなり何をする!」


「なにって消毒よ? もしかして初めて?」


 ショウドク? 何かの聖水なのだろうか? この少女もしや天使か?もしかして僕が魔法使いだから浄化されているのだろうか。


「そうやって傷口にかけると浄化されるのか?」


「浄化・・・そうね。確かに傷口を浄化するものよ」


「やめてくれ。俺は魔法使いなんだ。そんなものをかけられたら死んでしまう」


「あははっ、消毒が痛いからってそんな雑な嘘つかないでよ」


 彼女は笑っている。俺は存在の危機に面しているというのに。しかし彼女の笑っている顔は本当に可愛い。背は普通くらいだけどスレンダーな体。大きな黒い眼をしていてまるで契約黒猫のようだが顔が整っていてとてもかわいい。この子にならバットで殴られて「ぴぴるp---」おっと規制がかかってしまったようだ。とにかく不思議な呪文で復活させてもらいたい。


「私ね、ドジでよくケガするの。だからいつも消毒とか救急用品とかはいつも持ち歩いてるの。でも、確かに痛いわよね。私も一人だと痛くてつけるのに覚悟が必要だもん」


 唐突な自分語り。痛い女あるあるだが、なんだか励ましてくれているようにも聞こえる。

 ショウドクと呼ばれている聖水をかけると彼女も痛いという事は、彼女は天使ではないということになる。次に考えられる可能性、黒い服に黒い髪そして黒くて美しい目。ということはもしや、この子は契約黒猫か?


「それはなんだ?」


 唐突に先ほどの傷口になにかをはられる。聖水を体外に逃がさないようにするためなのだろうか。しかしこれに何の意味が?


「絆創膏よ。これを貼ると血が止まるわ。あなたこれも知らないの?」


「初めて見た」


「あなた面白いわね。そういえば名前を聞いてなかったわ。聞いてもいいかしら?」


「俺はユウ・ガ・ロッテ・フィムだ」


「変わった名前ね。ふざけてないでしょうね?」


「本当の名前だ。そういう君は何て名前なんだ?」


「私は一ノ宮日向いちのみや ひゅうがよ」


 不思議な名前だが、この世界ではこういう名前のほうが普通なのだろうか?


「そうだ。お腹空いてない? 立ち話もなんだしご飯を食べながら話しましょうよ」


 ちょうどお腹も空いていたし、この世界のことも聞きたかったので僕はその提案を受け入れることにした。

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