第9章
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町が見えてきたところで一息吐くようにエリオットはアンナに言った。
「なぁ、俺たちずっと大きな問題を抱えてるよな」
エリオットは馬を止めた。「あの町に行っても何も解決しないすごい問題。そもそもデイジーがいないんだから、あの町に行く必要もないしさ」
「お前の言いたいことはわかる。どうやって元の時間に戻るかだろ?」とアンナ。
馬を止め、振り返った。
「あんたは知らないかもしれないけど、俺は自分が元いた時代になるまで歳を重ねると、たぶんお爺ちゃんになっちゃうんだよ。俺の時代が明日とは思えないし」
「待つのは無理か」
「俺とあんたじゃ時間の捉え方が違う。あんたみたいに永遠を生きてない。爺さんのルーベンに、爺さんの俺が会いに行っても地獄だぞ」
「お前は何かいい案はないのか?」
「俺の思いは一つだ」とエリオット。ニーナの顔を思い浮かべる。「元の時代に戻ること」
「いい案を聞いた。ないのか?」
「ごめん。決意表明しちゃった」
「で? ないのか?」
「惑星の書を使わないか。ここにいたって取り戻しても意味はない」
「これまでの旅が無駄になるぞ」
「意味ないよな。けど俺はここで死にたくない」
「手ぶらでルーベンが許すと思うか?」
「俺たちは負けたんだよ。未使用で回収できたが、それこそ過去に来たら何もかも無駄だ。後のことは戻ってから考えればいい。デイジーを盗賊に預ける運命の歯車だったのさ」
「短絡的だ。きっといい案があるはずだ」
「前向きだな」
「私は常に考える。お前のように弱音と共に生きるボンクラとは違う」
「俺も考えてる。だから惑星の書を使おうって言ってるんだ」
「だが、エリオット。いや、うーん。そうだな――」とアンナ。
思案する様子を見せる。「惑星の書を使うのは確かに悪くないかもしれない」
「お、どうした。風向きが変わったか」
「ローゼンベルク修道院に行くぞ」
アンナが顔を上げて言う。
「いつの?」
「この時代の、だ」
「何しに?」
「もうわかってるだろ。とぼけるな」
「まさかな。けどそれこそ酷ってもんだろ」
企みに気づいたエリオットは嘆いた。「そりゃないよ」
「いや、正解だ。さっきはデイジーの運命を見たが、これからのは私たちの運命だ」
アンナは言った。
「そうか。そうだったのか」
ミッドガルド、ローゼンベルク修道院へ戻る。「全部、茶番だったんだな」
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