SS 46-2 明日、晴れたらさ――
「おかえりなさい。」
その少女は悔しそうに歯ぎしりをした……弾むような声で。
表情と言動が合っていない。
「また来ちゃったのね……ふーん、あなた―――」
また? 俺は初めて来たはずだ。この少女とも面識が無い。
こいつは何を言っている?
少女はこちらの様子を見て、姿勢を正し、口を開く。
「―――何番目?」
―――――――――――
「ぬあぁ!」
「うわっはぁ! あでっ!」
嫌な夢を見て、飛び起きた。猫が威嚇するように毛を逆立て、目と耳で周囲を警戒する。至近距離に顏を近づけていたエラはひっくり返ったようだが無視。
数秒後、トルーデの別荘だと気付いて警戒を解く。
「起きるなら言ってよ~。」
「どこを探したら起きる前に言うキツネがいるんだよ……。」
床に座ったエラに砂浜での出来事を聞く。
どうやら俺は流砂にのまれそうになったらしい。エラは「カッコ良く助けた」と言っているが……。
素直に感謝を述べると、いたたまれないエラは下を向いてしまった。
……ウソをつけない性格なのだろう、耳まで垂れている。
はぁ、仕方ない。エラの頭に飛びついてやる。
尻尾で顏をグシグシすると、エラの耳は
「とーぅ!」
「わっ! 何? 何? わふっ!」
「お前、ウソ下手だな。」
「うっ……トルーデにも言われたよ。
「いや、慣れなくて良いだろ?」
「――え?」
エラよ、騙す側になってどうするんだよ。騙されないようになってくれ。
少し残念な
まずは『徒歩で海に入る』、次に『魚を獲る』、そして『海底を探索する』。
突拍子もない事を言う俺に、エラは残念な子を見る目で聞いてくれている。あとで鼻に前足突っ込んでやる。
入口扉の前に
魚を獲るための道具は槍で良いか、と聞かれたエラは、
「漁師は槍、なんだけどね……。」
と、浮かない顏をした。まぁ、不慣れでも獲れなければ漁にならんしな。少しは筋力もあるし、突き次第か。
海底探索については地形を理解するためだ。大陸棚のように傾斜が
エラの
「一張羅だから着替えがなくて……。」
というエラに合う水着を黒球に作らせた。材料は砂と葉っぱである。
なぜ作成できたのかサッパリ分からんが、黒ビキニに胸元までを覆うヘルメットを装着したエラは……ただの変質者である。
「尻尾どうしよう? 耳が変な感じだし、ひっかかっちゃうよー。」
などと目の前で着心地を確かめている。重いはずのヘルメットを
「えっと、どうかな……似合ってる?」
「イカのバケモノみたいだな。」
「ひどいっ!」
水に浸かる練習も兼ねて、砂浜に戻ってきた俺たち。
何かの
ヘルメットが水に浸かる程度の浅瀬で性能テスト等を行う。
エラは緊張からか、両手で槍を持ってビクビクしている。
「エラ、溺れそうになっても、地面に足がついているだろう?」
「こ、これはそういうことじゃないんだよぉ……。」
まったく、どういうことだよ。
ヘルメットから伸びた管は別荘近くにまで上げているし、ヘルメットを傾けなければ
ちなみに俺の尻尾は水に浮いた。俺がヘルメット内にいれば、いざという時の浮き輪代わりになるだろう……自分で言ってて悲しくなる事実だ。
「足元を確かめながらで良いから歩いてみろ。」
「水面がぁ……ほわわー。」
エラを後ろから押し、沈めていく。
顔を水面から出そうと抵抗していたエラは、呼吸できる事実と水中遊歩の楽しさに魅了されたようだ。水は怖く……なくなったか?
水面を漂う俺を見上げ、エラが報告してくる。
あ、見上げたら――
「キツネさーがぼぼぼ!」
「黒球、引き上げろ。」
―――言わんこっちゃない。黒球に吊るされたエラを砂浜に戻す。ちゃっかり槍に貝を刺しているようだ。ヘルメットの隙間を黒球が埋めれば良いか。
「けほっ、けほ……溺れるかと思ったよ。でも楽しかった!」
「良かったな。これならある程度は潜れるだろう?」
「うん!」
まだ日は高い。エラの休憩後、漁を再開した。
10匹程度の小魚と、貝を持てるだけ獲ってきた。全部食べるのだろうか……初日にしては良い結果だろう。エラも満面の笑みである。
「全部食べるのか?」
「え゛……ま、まさかぁ。」
こいつ……。はぐらかしながら調理するエラをつつき、夜を迎えた。トルーデにはお土産話をプレゼントし、膨れたエラのお腹を
そんな二人を横目に、俺はベッドで丸まっている。
浅瀬を歩くならば問題ない。しかし、深い所となると……
「管を伸ばすか、水から酸素を……あっ。」
黒球の高音が
思わず
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