異能者たちの苦悩-先にあるのは絶望のユートピアか? 希望のディストピアか?-【オカルトも神話も、歴史も今も、世界も宇宙も、すべてはひとつに集約される】
第246話 禁断の黙示録 ―forbidden apocalypse(フォービドゥン アポカリプス)―
第246話 禁断の黙示録 ―forbidden apocalypse(フォービドゥン アポカリプス)―
××××年 七月某日。
日本よりはるか南東にあるジーランディア大陸の上空、数キロ先で
のちに世界規模の三大災害魔障と呼ばれる『ノストラダムスの大予言』によって超巨大なこのアヤカシはついにこの日、対流圏で具現化するまでに至った。
この事態に伴い日本から討伐隊として、ここに出向いているのが外務省の
(でかっ。これがアンゴルモアか……)
一条は宇宙の闇のように黒い直方体に腰をかけながら、どこか呑気にその超大型のアヤカシの前で紫煙を燻らせていた。
休憩しているような一条の周囲数キロはまるでアンゴルモアを覆い隠すような濃い
「アンゴルモア!?」
一条は怒鳴るように呼びかけると、アンゴルモアの血走った大きな眼がギョロリと一条へと向いた。
その眼球はそこから微動だにせずじっと一条を見据えている。
(すげー圧迫感だな)
一条とアンゴルモアは能力者とアヤカシという立場ではそう遠くない距離の場所にいた。
(まさか日本のミームがここまでいくとはな)
「それでどうやって
一条はあごをしゃくったと同時に口から――ふぅ~。と煙を吐いた。
「なんであんたが
「はっ?」
「
「いや。
「自分の
「……んで?」
「まるで
「レームダックの
「だったら最初から
一条はなにも答えずにまた大きく息を吸い込んだ。
「……『
「……いちおう俺だってミーム拡大の責任を感じてるんだよ」
一条の顔の前をタバコの煙が川を泳ぐ魚のように流れていった。
「ぜんぶを投げないところがあんたらしいといえばあんたらしいけど。『ノストラダムスの大予言』は終末論として特に国民受けが良かったってことよ」
「まさに日本産の超巨大アヤカシってことだな。まあ、
一条は自分が座っている黒い直方体にタバコの先端を向けて灰を落とした。
灰はここを吹く風に流されることもなく黒い直方体に吸い込まれていった。
「この外見を見て
二条はアンゴルモアを見ないまま腕を組んだ状態からアンゴルモアを指差した。
「誰がどう見たって
「参加表明だ?」
(国の威厳のために逃げられない国がどんだけあると思ってんだよ。
「その折衷案は誰が考えたんだよ?」
一条が苛立つようにタバコを吸うと咥えタバコの先端が炭のように灼けていった。
「五味さん」
「だいぶ譲歩したんだろ?」
「当たり前でしょ? 最初なんてもっと細かく分けようとしてたのよ。日本なら道、都、府、県のように細分化して送るってね。あとでどんな影響が出てくるのかもわからないのに。リスクヘッジとしてもっとも最悪の選択。将来のリスクを鑑みないでバラバラにして散り散りにさせるなんて……一ヶ所で処理したほうが確実でしょ? なにが各国一緒に手を繋ごうよ」
二条は、まるで今でもその会議室に参加しているように眉間にしわを寄せた。
「なあ二条。いっそ近衛と九条……あとおっさん引き連れて御前会議ぶっつぶしてみるか?」
一条はアンゴルモアから目を逸らして今にも落ちそうなタバコの先端を見た。
タバコの先は綿毛を燃やすようにいまだにジリジリと燃えている。
同時にまた一条の口から煙が流れていった。
「はぁ?」
二条は両手を「Y」の字の上のように広げて呆れることにさえ呆れている。
上空に吹く風が二条の髪をなびかせた。
二条はそのまま腕を組み直し自分のうしろにある横長の黒い直方体に腰をかけて足を組んだ。
「まったくもって意味ないわよ。むしろトップダウンの
「だよな。代表者の首を挿げ替えるだけにしかならねーよな。そもそも『円卓の108人』の古参メンバーは世界的な名家や
「関係ないように思えるけど石油メジャーは今でも
「史実とは別の歴史があるんだよな」
「歴史に名を残した大事件で暗殺された政治家だって混ざってるんだし。むしろ見る人が見たら円卓への引き上げだってわかるくらいよ。下手をすればそれは世界規模の栄転よ」
「少人数がそれに気づいたって
「きっと2000年代になればコンピュータってのが世界中を席巻するわよ。1900年代の初期は武器商人や暗殺家の一家が多かったのにね」
「途絶えたとされるサンソン家の
「良くも悪くもあのころは時代に必要とされていたのよ。
「っても要人の暗殺もマッチポンプなわけだよな? プロの暗殺屋が
「大衆に与えてもらった権力を維持しながら世間との距離を置くためのポーズでしょ。大勢の人間を生き証人とすることで彼らはきれいに世間から姿を消すことができる。翌日になって派手な見出しが躍ればそれはもうれっきとした死亡証明書なのよ」
「大衆の視線を浴びつづけてた人間がよく裏に回る気になるよな?」
「どこかで気づくのよ。もてあますほどの力は暗幕の中で使うほうが最大限に発揮できるってね。それが
「ああ。
「歴史は大きな
「日本でいえば
「……会ったことあるの?」
「何度か、な」
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