異能者たちの苦悩-先にあるのは絶望のユートピアか? 希望のディストピアか?-【オカルトも神話も、歴史も今も、世界も宇宙も、すべてはひとつに集約される】
第250話 禁断の黙示録 ―エトワール 二流派―
第250話 禁断の黙示録 ―エトワール 二流派―
「けどよ、これだけでけー鋳型ができあがってもアンゴルモアの負力は
「一個体のアヤカシが蓄積した負力の積載量としては新記録かもね? この事例は
きっと後進の役に立つわ」
「んで、俺とおまえはさっきからこの超ド級のアヤカシを前にしてのんびり井戸端会議をしてるけど、いったいいつはじめるんだよ?」
「さあね」
二条はどこか他人事のように首を傾げた。
本当にこれからのことは知らない、そんな様子とすこしの苛立ちがみえた。
「――さあね。だって? この
「これはあくまで下準備よ」
「マジか?」
「現在エトワール二流派の
「はっ?」
一条は本当に全身が凍ったように動きが止まったが、すぐに破顔した。
「どいつもこいつもバカなの? もともとバカだと思ってたけど上級のバカなの? そんな余裕あんのかよ?」
崩した顔は嘲笑の意味だ。
「余裕なんてあるわけないでしょ。アンゴルモアがこのままずっと黙ってるなんて保証はどこにもないんだから一刻も早く討伐作戦は決行すべき。専門家のあいだでも日本のミームでアンゴルモアの鋳型が形成されるならその出現場所は日本国内だろうってことだったんだから」
「すでに予定外の動きをされてるのか?」
「そうよ。出現予測を外してるの。ジーランディア付近でアンゴルモアが具現化したのは
「仮に日本でアンゴルモアが出現するなら地形効果から考えても不可侵領域のある六角市が第一候補になるよな?」
「常時ジーランディアの負力が流れてるんだからそうだと思うわ。まあ、近隣都市の
「そんなときだってのに『
一条も二条同様に苛立ちを見せるとズボンのポケットからタバコとライターをとり出して一本くわえた。
「いいえ。そこは『
「あっそ」
一条はもう会話に意味はないとでもいうように、たった一言で片づけた。
「でも、
(衆議院、参議院、与党、野党みてーにひとつの集まりの中にも
「まあ……人の思想ってのも侮れねーけどよ?
(どっちも人を
「そうよ。それに権力を手にした者は往々にして孤独で信頼できる相談相手もいない。そうなると頼るべきは
二条は地上を
「合図って?」
「それはこの場にいれば誰でもわかるって。私がやることは
「
一条が訊ねると二条は腰を屈めてまるで自分の靴の音でも聞くような低い位置で耳を
(なんだ?)
「えっ?」
二条は独りごとのようになにかをつぶやいている。
だが、それは会話でなく自分の足元を見渡してなにかを確認しているようだった。
二条はそのまま体を起こして自分の目の前を指差した。
「ここに?」
(誰かと会話してる。
「わかったわ」
二条がそう返答すると一条に向かって一条の足元より三十センチほど先の場所をトントンと指で合図した。
一条もそのジェスチャーだけで二条の意図を理解する。
「そこ」
「ああ、わかった」
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