第251話 禁断の黙示録 ―ハン・ホユル―
雲の下から黒い物体がワイヤーもなくエレベーターのように迫りあがってきた。
それは今、まさに一条と二条が座っているのと同じ物で大人三人ほどが入っていても窮屈にはならない大きさだ。
黒い物体の頂点をすり抜けて人の頭がスッと姿をみせた。
その頭部は布で覆われていて目元だけが出ている。
隙間からのぞく眼だけで眼光の鋭さがわかった。
ただ
もっとも睫毛が長いのは日々
灰色に
(……
「ハンも参加することになったって。というかアンゴルモアの由来がモンゴルだっていう一説に責任を感じて自薦でここにきたんだってさ」
一条は二条のその言葉にうなずきながらさっそくさっきのタバコに火をつけた。
ハンはいまだ黒い物体に下半身を埋めたままで真横に両手をおき肘掛けのようにしている。
「ああ、そうなの?」
一条はタバコの煙を一度自分のうしろで吐いてからハンへと向き直した。
心ばかりの気づかいで手のひらをパタパタさせて煙を散らしている。
「ハンよろしく。けど、そのアンゴルモアを見てもわかるようにそいつは完全にメイドインジャパン。日本のミームでそうなったんだから今回のアンゴルモアの鋳型生成にモンゴルは関係ねーぞ?」
一条はもう、何度目からわからないけれどアンゴルモアの「眼」と見つめ合った。
ハンは一条の挨拶にただコクリとうなずくだけだった。
それは無視をしているというわけではなく寡黙な人物だという印象だ。
「面倒に巻き込まれる前に帰ったほうが得策だぞ?」
ハンは小さくかぶりを振る。
だが、それとは反比例にその目には大きな意思が込められていた。
「いいのか?」
ハンは再度うなずく。
「
{{
ハンの右肩がポコっと膨らむとそのローブの生地が裂けて中からゼンマイや歯車、大小様々な機械部品が溢れてガチャガチャと組み合わさっていった。
歯車もガラガラ噛み合い小さな部品になる。
その小さな部品たちもさらに別の部品と組み合わさって別のパーツになっていく。
いくつもの部品が重なりそれは機械の九官鳥へと姿を変えた。
(おー!! ハンの能力ってドール・マニュピレーターだったのか?)
『それでも責任がゼロってわけにはいかない。由来があるだけでも数パーセントは加担していることになる』
(なんて律儀な)
『それに俺がアンゴルモアの討伐作戦のメッセンジャーになることで
(なんで鳥が話すんだよ? 前に会ったときハン本人はどうしてたっけ? そういや会話してないかも……。――晴には
二条と親しかったのか? 初耳だな……)
「一条。そういうことでハンが潤滑油になってくれるってさ。それに五味さんの代理もハンがしてくれるって。……もう、すぐ作戦決行らしいわよ」
この瞬間も二条の足元からはつぎつぎと雲が転がっていって積乱雲に積み重なっている。
「作戦決行って二流派の決着はどうなったんだよ?」
「
「星読みか……むかしも星を
「それも時代よ」
「何回変えてんだ? 携帯のアドレスじゃねーんだぞ、ってな」
「祝事で変えることもあったんだからいいじゃない。あのころはそんな
「まあな。んで、どっちの流派がテープを切ったんだ?」
「二流派同時にはさみを入れたって」
「はっ!? バカなの? やっぱりバカなの? そんなこと最初に考えつくだろ?
頭の中お子様か?」
ハンは一条と二条が的外れな痴話げんかをしている前方で浸かるように入っていた
黒い物体から腕だけを使って体を上方へと跳ね上げた。
空中で伸身宙返りしてそのまま黒い物体の天辺にストンっと降り立つ。
身軽なハンは片足をもう一本の足に絡ませてフラミンゴのように立っている。
(おお、まるで
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます