第3話 選書会議は踊る

第3話<1/7> 序

 雅楽川うたがわてるは少し早く家を出て学校へ向かった。今日は選書会議。1年生にはリスト作っておきなさいって教えたけど通せるかどうかは駆け引きだから。おいおい慣れていってもらうしかないけど、たまげるだろうな。

 私が最初参加した時も凄かったもの。音田先生がどんないたずらするかもあるけど、どんな反応するか楽しみだ。あとかほちゃんがね、あれを入れてくるかどうか。海外小説組がどう出るかは今日最大の問題だ。


 和賀山公わがやまいさおは憂鬱だった。新刊のビッグタイトルが読書界に激震を走らせている。そして老舗出版社は翻訳家と組んで万全の体制でタイムラグ少なく刊行しようとしている。問題は価格なんだよな。予価情報も駆け巡ってるけど公立図書館でも相当躊躇するんじゃないか。国内小説組から買おうなんて言わないだろうし。1年生はまだどう出るか読めないから。面倒な事になりそうだ。


 安形久美子あがたくみこは登校中に餅多もちだツヨシと出会った。図書委員2年生は二人しかいない。なので普段は先生や3年生の面白がり屋に対抗して組む事が多いけど、選書においてはSF小説Loverと孤高のラノベ主義者という立場の違いがあって選書会議ではしばしば衝突し、そして連携もしていた。

「おはよう。餅多くん」

 餅多もちだツヨシはドン引きしていた。クールビューティーなアガクミがが極低温並みの冷たさで挨拶してきた。今日はもう戦闘モードかい。朝から気合い入れすぎだよ。

「おはよう。アガクミ。気合い入りすぎてないかい?」

 氷の微笑を返された。

「そんな事はない。ただ君は今日敵になりそうな予感しかしてないからつい冷たくなってしまうだけ。気にしないで」

ほんと凍り付きそうな回答だな。放課後、荒れそうだ。

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