第6話王都・中

「やっぱり、雑炊が、一番」

「チーズ最高」


食事を始めてからもう5分経ったがこの二人はずっとこんなことを言っている。

二人がそんな事を言っている間に自分はラーメンを食べ終わった。


「なあ、今のやりとりって喧嘩に入るのか?」

「知らん」


アートにそう言い切られた。


「あのさ、早く食事を済ましてくれないかな」

「食べるの、早い」

「量少ないからな。こんぐらいすぐ食べ終わるよ」


でも、味は悪くなかった。これならいくらでも食べられる。



「食事も終わったしまた移動するぞ」

「どこに移動するんだよ」

「そうだなぁ……。人目がないところがいいな」

「観光って、どうなったの?」

「観光する時間がないから 観光は無しだ」

「そ、そんなぁ……」


観光がなくなったせいでコトネはしょんぼりとしてしまった。

それほど楽しみにしていたんだなと思う。


「人目がないところって言っても、そんな場所なんてあるのか?あるとすれば…… さっきの路地か?」

「そこはない」

「なんで?」

「さっき魔法使ったろ? 魔法使ったら魔力が体から放出する。それを察知して王都魔法管理局が魔法が使用された場所に取り締まりしにくる」


魔力? 王都魔法局? 一体なんのことか。それと、魔力を察知して来るとかとんでもない奴らだな。

てことはさっき出た路地には戻れないてことだな。

コネクトも魔法の一つだし。


「じゃあ、移動するか?」


俺たちはファミレスを出て人目のない場所に移動した。



移動している最中にある事が気になった。

俺はこいつらと一緒にいるとき何回か魔法を見たが、見た魔法はたった2種類だけだった。《コネクト》と《サナーレ》だけだ。

《コネクト》はある場所とある場所を繋げる魔法。《サナーレ》は回復魔法。たったこれだけだ。

まだ温存しているのか。それともこれしか使えないのか。


「気になってることが一つあるんだけどいいか」

「なんだい、気になってることって」

「魔法を使ってるじゃん。それってまだ他に魔法って使えるの?」

「いや、私達は……。正確にはこの世界の人間は『単体魔法使者(シンピ)』。稀にいるのが『多数魔法使者(シンピ・アストロリー)』。まあ今まで歴史上に『多数魔法使者(シンピ・アストロリー)』なんて一人だけいたけど」

「歴史上って言っても大体何年ぐらい前の話なんだ?」

「ざっと5万年ぐらい前からかな」


ご、5万年……。かなり昔だぞ。それなのに『多数魔法使者』はたった一人だけか。超珍しいじゃん。


「あと一つの魔法を極めると一部の人が覚醒する『単体魔法熟者(シンピ・チスル)』がある。『単体魔法熟者』は一つの魔法だけしか使えないがその魔法で応用などができる。例えば《コネクト》って言う魔法あるだろ。《コネクト》を応用するとある対象物だけ移動できるとか」


ある対象物だけ《コネクト》で移動できるか。それは便利なものだな。

こうして話していると自分も魔法使えるのかなと思えてきた。


「俺って魔法使えるのかな」


そう聞くとアートが自分の指を俺の鼻に突きつけた。

そして笑みを浮かべた。


「もちろん使えるさ。コトネが使っていた《コネクト》がな!」

「《コネクトを? どういうことだ?」

「この世界だと人生で一番最初に受けた魔法が唯一使える魔法になるんだ」


なるほどな。だからあの時一回だけ《コネクト》が使えたんだな。

でもなんであの時しか使えなかったんだ? ま、そのことは後で聞けばいいや。

歩いているうちにいつのまにか人がほとんどいなくなっていた。


「ここなら大丈夫だろ。じゃあコトネ、頼んだぞ」

「うん、《コネクト》」


コトネがサラッと詠唱し、魔法陣を召喚した。


「あれっ? 手はあげないのか?」

「うん、腕が、疲れるから」

「ほぉん」


魔法陣は隣で赤く光っていた。


「早く、行かないと、魔法陣、消えちゃう」

「ああ、そうだった。結斗、今から行く所はこの国の裏を知れる場所だ。そこそこショッキングだから気をつけろよ」


一体何があるのか。心の準備しておこう。


アート、コトネに続いて魔法陣をくぐった。

魔法陣をくぐった後目の前に広がったのは牢獄が無数に続いている薄暗い場所だった。


「ここは?」

「ここがこの国の裏、下位民衆収容施設『ロウダスト』」


牢獄の中を見るとボロボロの服を着ていて目が死んでる人が多くいた。

周りを見ている時後ろから、


「オメェら上位民衆か! こんなところにノコノコと! ここで殺してやる!」


俺とおんなじぐらいの年の女の子が刃物を持ってこちらに走って来ていた。


「え!? ちょ、待て!!」


俺の声が聞こえてないのか問答無用でこちらに向かって来ていた。

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