口ほどにものを言う

カゲトモ

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「んもう! はなちゃんったら!」

 まるで身体が傾いてしまいそうなほどの衝撃波、もといミケの声。

「んだよ、うっせーな」

「何よその態度ぉ! あんたが誘って来た時はいつも二つ返事してるってのに、あたしが誘う時にはなんでちゃんと返事してくれないのよぉ!」

「だから、スマホ忘れたんだって言ってんだろ。悪かったって」

「誠意が見られないぃ」

 ガタイいい系猫耳オネェが地団駄を踏んだ。おいやめろ店を壊す気か。

「失礼ね」

「だから悪かったって言ってんだろ」

 謝ったってミケの機嫌は治らない。どうしても昨日行きたい店があったらしい。

昨日は経営するオネェスナックのスタッフ達と飲み会をしていて、そこに俺を合流させてその後二人で違う店に行きたかったらしい。なんでも、飲み会の途中にどうしても行きたくなったのだとか。

「だってルイちゃんが彼氏と上手く行ってるとか惚気てくるんだもん」

 ルイちゃんってのは、俺達よりも少し年下の、そんでもってミケのように体つきの良いオネェだ。元自衛官、だったように思う。身体の割に顔はミケと違って可愛らしく、ギャップ萌えだとかなんとか言っていた気がする。

 そんな(体型が)同じタイプのスタッフが恋人と仲睦まじい話を聞いて、自分も! と思ったのだろう。

 ちなみにミケは今フリーだ。

「あたしも早く彼氏が欲しい~」

「あー・・・はいはい」

「だからはなちゃんとお店に行こうと思ったのにぃ」

 ミケが今片想いをしているのは商店街の南口の近くにある、ビール専門の居酒屋のバイトの子だ。ミケとは全くの正反対の、細くて白くて眼鏡の子だ。

「店に行ったって、別に告白するわけでもあるまいに」

「告白するとかしないとかって話じゃないの、眼福なの癒されたいの!」

「あーはいはい」

「反省の色が見えないわね。あたしずっとはなちゃんのこと待っていたんだからね」

 とか言って、絶対スタッフの子を連れまわしていたに違いない。んで、俺と連絡が取れないって分かってふてくされて帰ったに違いない。

「連絡を返さなかったのは悪かったって」

 本当、本当、悪かったって思ってる。大量の着信履歴があっても今の今まで何も返さなかったのは。

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