二日酔いの朝とゴミ掃除

第1話 おはようの挨拶は拳銃で

 ようこそ欲望と暴力の町へ




 暗い月の無い夜、銃声と雨と人が混じり合う様な不思議な感覚――――


「ッッ…!ッッン!・・・ッン!」


 今聞こえるのが雨音なのか足音なのかも分からない―――――


        ――――もしかしたら銃声かもしれない

「・・・・・ッ」


 自分を濡らしているのは雨なのか血なのか―――――


    ――――血だとしたら自分のモノなのか相手のモノなのか

「・・・・」


 ふと横に視線を向けると、路地の先に町の明かりが見える――――


      ――――走れば数秒でたどり着ける場所が今は遠く感じる


「あ・・・」


 誰かこちらに来る―――


     ―――ダメだ。彼女をこちら側に近づかせてはいけない


「コンッコンッ」


 雨音に混じり木製の扉を叩く音が明確に聞こえた


「これは・・・夢だ」


 そう思った俺は意識を無理矢理覚醒させる


          ・

          ・

          ・

          ・


「うう・・・飲み過ぎた」


 目を覚ますと俺はボロアパートの一室で目が覚めた


「コンコンコンッ」


 玄関からノックの音が部屋と二日酔いの俺の頭によく響く


「うるさい・・・うッ」


「ガシャン!」


 俺はベットから起き上がって玄関に行こうとしたらプロペラの様な物を蹴飛ばしてしまった。天井でグルグル回ってるアレである、正式名称はシーリングファンだったか? 使わないし邪魔くさいから昨日もぎ取って適当に置いといたのを忘れていた


「コンコンコンコン!」


「ちぃッ! 今行くよっ!」


「ガチャ」


 玄関を開けると小奇麗な服を着た男が笑って俺の名を呼び、挨拶して来た


「グットモーニンッ!ビリーご機嫌いかが…わぁっと!?」


「グォン…バン!」


 そう、俺”ビリー・アボット”は訪問者”ジャスパー・オースティン”の胸ぐらを掴んで部屋の中に引っ張り込み、壁に叩きつけた


「チャキッ」


 そして彼の額に銃を突き付けて挨拶した


「おはようジャスパー・・・」


「機嫌は悪いみたいだな」


 ジャスパーはニヤついた顔を崩さずにスカしている。俺は腹が立って銃を更に強く押し付けた


「二日酔いの朝にコンコン、コンコンうるさいんだよ! 景気づけに一発テメェの頭に鉛玉ぶち込んでやろうか!?」


 ジャスパーはやれやれと言った感じで、俺に言った


「おいおい待てって。そんに強く銃を押し付けちゃ弾でないよ」


「俺がお前を撃てないとでも?」


「いいから引き金を引いてみろって、ほら」


 彼のお望みの通り、俺は銃の引き金を引いてやった


「カチン・・・」


 銃のハンマーが落ちる乾いた音が響き、俺は彼を掴んだ手を放した


「ん? なんだこれ」


 混乱している俺の横を、ジャスパーは語りながら通り過ぎてソファーに座った


「大抵のオートマチックは先を押し付けると、スライドが少し下がってハンマーが撃針を叩けなくなる、不発なるのさ。リボルバーを用意してやろうか?」


「いや…いい。弾がでなけりゃ殴ればいいだけだしな。夢見が悪いし最悪だッ」


 俺は彼と話しながら冷蔵庫を開けて、中から瓶コーラを取り出し彼に投げ渡した


「おっと・・・。銃は機械だ、重いが鈍器じゃない。丁寧に扱えよ野蛮人ッ」


「カッ、シュン!」


 コーラを受け取ったジャスパーは、ナイフの背を瓶の首に当てる、そして瓶に沿ってナイフを上に勢いよくスライドさせて瓶の栓を弾き飛ばした


「うるさい。で? 何の用で来たんだジャスパー」


「ガコッ」


 俺はそんな器用なことは出来ないので、歯で栓をこじ開けた。そして二人そろってコーラを飲んだ


 「「ゴクゴク・・・」」


「うーんよく冷えてる。いつも道理お仕事さ、これが資料だ」


 資料を受け取った俺は軽く目を通しながら椅子に座り、読み終えた資料を机に置いた


「ふーん・・・」


 ジャスパーは机に置かれ資料を指さしながら補足の説明をした


「この廃ビルに最近ガキどもが遊び場にしてる。そいつらを追い出すのが今回の仕事だ」


 俺はジャスパーに簡単な質問をする


「いつも道理って事は交渉じゃないよな? マンハント殺しか」


「yes。ただし二度と近づかない様に噂を広める必要がある。たっぷりビビらした後2、3人は生かしておけ」


掃除死体処理は?」


「no。見せしめに残しておけ。死体はむしろ派手な方が良い」


「人数は?」


「15人から20人ってとこだな。正確な人数はお前が現場に到着しだい見張り屋がメールで知らせる」


「わかった」


 俺は資料を丸めて火をつけて、金属のゴミ箱の中に放り投げた。ジャスパーは立ち上がりながら話してきた


「こっちで足に使うボロ車とショットガンを地下の駐車場に用意したからそれを使ってくれ、これが鍵だ」


 鍵を受け取りながら俺も立ち上がった


「仕事を終えたら車は何時ものスクラップ場だな」


「そうだ。じゃあよろしくなビリー」


 ジャスパーは部屋を去って行った


「さて、準備しなきゃな」

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