3#カモシカ、風船をなくす

 カモシカのマウシイの口には赤い風船の結んだ吹き口をくわえていた。


 やっとゲットした大きくて柔らかくてフワフワした木の実。


 ・・・どこで食べようかなあ。風雪が来ないとこでゆったりとして食べよう・・・


 カモシカのマウシイが加えた木の実ー風船ーは風でなびくようにゆらゆらしていた。


 風雪がしのげるくぼ地を見つけた。


 カモシカのマウシイは、くわえていた風船を前脚で押さえて風船を確かめた。


 ふくよかな鼻の穴を風船につけてクンクンとにおいを嗅ぐ。膨らませてだいぶ時間たった独特なゴムの臭いがした。


 風船の艶も雪で濡れたあとと、さっき嗅いだ鼻の跡以外なくなっている。


 「もう我慢できねぇっ!いただきま~す!」


 カモシカのマウシイは赤い風船に歯を近づけた。


 キュッと風船を引っ掻く音。フワフワしててなかなか噛めない?!


 もう一度・・・


 突然いきなり強い風雪が吹き、カモシカのマウシイは風船を押さえいた前脚を離してしまった!


 ヨロヨロと空を舞う大きな木の実。カモシカのマウシイは立ち上がってその風船を掴もうとするが風雪に煽られるように上へ上へ。


 マウシイは飛びかかったが、木の実は吹雪の空の遥か上空に吸い込まれていった。


 カモシカのマウシイはただぼう然と白すぎる空を見つめるだけだった・・・

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