悪魔将軍列車殺人事件
ごま忍
第1話白線の内側流し
< 1 >
【3番線にミステリーツアー列車、間も無く到着しま~す。白線の内側にお下がり下さい】
駅員のアナウンスが響き渡る。
「やった~!メロン食い放題だ!」
おっちょこちょい&サッカー馬鹿刑事、花上四太郎は休暇を取り北海道ミステリーツアーに参加していた。北海道に行くことは決まっているが、中身が秘密にされているという変わったツアーだ。
「カ~ニ!カ~ニ!」
その隣りにはEXILE探偵事務所の助手、納谷ルミコとお手伝いでロボットのコロ助が大声で騒いでいた。花上は一緒に行ってくれる人を探していたが、みんなに断れ仕方なく探偵事務所に行った所
「ルミコ君とコロ助君行ってくれば?」
探偵事務所所長で、自称探偵の清野耕助は二つ返事でOKした。そこで花上が旅費を全額負担することを条件に2人が着いて来たのだ。
三両編成の列車が駅のホームに入って来て、静かに止まった。
列車は一両目と三両目が一階のみで二両目が2階建ての車両となっていた。
「さあ、2人とも乗り込むよ」
「おー!」
少人数の客を乗せ列車はゆっくり動き出して行った。
客が少ない為、3人は二両目の二階部分にある客列車に誘導され自由に座る事ができた。しばらくすると添乗員が前の車両から姿を現した。
< 2 >
「皆様、おはようございます。本日は当ツーリストが企画しました、悪魔指揮魔術団ミステリーツアーへようこそおいで下さいました。添乗員を勤めさせて頂きます佐原誠(さはらまこと)でございます。ここから列車は次の無人駅まで止まりませんのでご了承下さいませ」
「おい、花上!悪魔指揮魔術団ミステリーツアーって何ナリか?」
「あれ?おかしいなぁ?」
添乗員が3人に気が付き近付いて来た。
「お客様、どうなされましたか?」
「あの~これは北海道ミステリーツアーじゃないんですか?」
「えっ?すいませんがチケットを拝見させて頂きます」
花上は3人分のチケットを手渡した。佐原は困った顔をして
「お客様、これは二時間前に出発したツアーのチケットになりますね」
「そんなぁ~」
「カニ~!」
そう言うと花上の前にルミコとコロ助が立ちはだかり、腹をおもいっきり殴った。
「ん~、困りましたね。列車は止まれないんですよ」
「いいではないですか、3人くらい増えても大丈夫でしょ」
佐原の後ろには銀のマスクを被っている人物が立っていた。
「仕方ないですね、北海道には連絡しておきますから」
「すいません‥‥」
花上は頭を下げた。銀のマスクは軽く会釈をして、前列で止まり一同を見渡した。
「皆様ようこそ!悪魔指揮魔術団ミステリーツアーへ!これからこの列車の中で殺人事件が起ります。被害者や犯人はお客様かもしれないし、劇団員かもしれません。その謎を解いて下さい。正解者の方には豪華商品を差し上げます。しかし、お客様の中に劇団員が交ざっているかもしれませんのでご了承下さい。最終目的地は終点にあります山神山荘です。そこで一泊して頂き、次の日に解決編を上映致します」
< 3 >
「いったい何が起きるっていうんだろう?楽しみだねルミコちゃ‥‥。あれ?」
花上の側にいた二人はいつの間にか後方の席に移動しており、誰かと話しをしているようだった。花上は二人の元に向かってみると、そこにはうさんくさいパイプをくわえた白髪交じりの男が、ルミコとコロ助にサインらしき物を手渡していた。
「あれ?コロ助君この方‥‥、有名な方なの?」
「花上おまえは失礼な奴ナリな!」
鼻息を荒くしながらコロ助は答えた。
「そうだぞ!この方は、あの有名な映画監督【世界の豆澤】だぞ!こっ、こんな所で会えるなんて~」
どうやらルミコとコロ助は、この男のファンのようだ。いざ名前を聞いても花上にはピンとこない。
「まあまあ、君達あんまり彼を攻めんでも。ワシを知ってる君達の方が珍しいのかもしれないぞ。」
「いやいや、世界の豆澤を知らないなんてどうかしてるわ。この人サッカーにしか興味ないから。」
「そうナリ!豆澤作品のハラハラドキドキ感を知らないなんて損ナリね~。」
自慢気にルミコとコロ助は語っている。
「特に新作が良かったナリね。いや~、今回もハラハラドキドキだったナリね~!」
「なんていうタイトルなんですか?」
花上の質問にこれまた得意気にコロ助はウンウンと咳払いをしながら答える。
「【千と千葉さんの神隠し】ナリよ!いや~、ハラハラドキドキだったナリね~!」
「ほんとにハラハラなタイトルだったわ!前作の【崖の上のポロリ】もよく通ったわ。ほんと危なかった!」
「フォフォフォフォ。ワシもギリギリじゃったよ。よく上映できたと思っておる!」
「さすが!世界の豆澤!」
「照れるじゃないかフォフォフォフォ。」
三人は変に意気投合していた。
< 4 >
「なっ、なんかいろんな意味で気になりますね‥‥。ちょっと見てみたいかもしれないなぁ」
花上がそういうと更に三人は熱い口調でそれに答える。
「見る価値はいっさいないな!」
「私達、映画自体は見たことないもん。あのタイトルでいけるかがポイントなのよ!」
「フォフォフォ、映画自体にはいっさい力は注いでいないからな!」
「さすが!世界の豆澤!イエーイ!」
妙なテンションで三人はハイタッチを繰り返していた。
その時だ!
ジリジリジリーン!
異様なベル音が車内に鳴り響いた。
その後、先程の銀のマスクらしき声が車内アナウンスから聞こえてきた。
「皆さん。お食事の時間がきましたよ」
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