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気持ち早歩きで歩いていると「あっ」と掛けられた声に足を止める。
「すかい!」
「奈々子」
満面の笑みでブンブン手を振る奈々子が見えた。身体の半分くらいあるリュックを背負ってツインテールの髪を揺らしている。
「おはよっ」
「おはようございます」
「おはようございます。今日は家族でお出かけ?」
奈々子の隣には門脇夫婦。馴染みのかどわき青果店の前には三人家族が勢ぞろいしていた。
「はい。今日は水族館へ行くんです」
「そうなんだ、いいね」
そう言えば先日、臨時休業にするチラシが貼ってあった気がする。そうか、今日だったか。
「新しくアザラシが来たとかで、どうしても奈々子が行きたいって駄々を捏ねて」
困ったものですよ。と門脇君が続けるが、その顔はまんざらでもないように思えた。
「わざわざ店も休まないといけないし」
「今日は親父さんは?」
「親父はもう隠居しているんですよ。歳ですしね。それに水曜なら休ませていただいても大丈夫かなって。いつも御贔屓頂いているスカイさんにも迷惑は掛からないかなって」
「うちのことまで考えてもらって申し訳ないな」
「ふふふ、御贔屓さんですからね」
そう笑う顔は奈々子にそっくりだ。
どんっ。
「すかい~!」
右脚が急に重くなった。奈々子ががっしりと俺の脚を掴んでいる。
「奈々子」
「こら、奈々ちゃん!」
「きょうね、ぱぱとままとすいぞくかんいってあざらしさんみるんだよ」
「おー、良かったな」
「うん! あとね、いるかさんもさめさんもみるんだぁ。おさかなさんいーっぱいみてくるよ」
「じゃぁまた今度話し聞かせてくれな」
小さな頭を撫でると、柔らかい髪が気持ちよかった。あぁ可愛い。
「うん!」
奈々子は満面の笑みで手を振って両親と手を繋いで駅に向かって行った。その背中を見つめながら、少しだけセンチメンタルになってみたり?
いやいや、独り身のモーニングコーヒーだって美味しいですから。
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