あまくてすっぱい
カゲトモ
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飲食店が定休日を構えるのは、基本的には平日のことが多い。最近はあえて日曜に休みを入れるところも多いが、うちの近所は大体火曜か水曜が休みだ。俺の店もそう、毎週水曜は定休日。
「くはぁぁ」
両腕を思いっきり挙げて伸びをする。滲んだ視界に映るのは見飽きた街並みだ。今日も今日とて定休日だと言うのに俺は店に足を運んでいた。
仕事じゃない。昨日忘れて帰ったスマホを取りに行ったのだ。気づいたのは深夜を回ってからで、家にも着いていたしもう一度店に行くのが億劫だったから。
朝起きて朝食も食べずに取りに来た。横になればすぐに寝れてしまいそうだが、一度起きてしまうとまた寝るのはもったいないと感じてしまう性分だ。だから、どうしようかな。
スマホにはミケから大量の着信が残っていた。どうやら昨日は飲みに行っていたらしいが、最初に連絡が来た時間にはもう俺は店を閉めた後だった。行きたくなかったわけじゃないぞ。断じて。
「どうすっかな」
ミケでも誘ってモーニングでも、ともふんわり思ったが却下。まだ寝ているだろうし、きっと昨日の事を愚痴るに違いない。
『どうして来てくれなかったのよぉ!』とか野太い声で言うんだろう。そうなんだろう。だから誘わないし、連絡も返さない。メッセージは読んだけど返さない。読むだけはするー。
それじゃぁどうしようか。
腹は減った。どこかでモーニングでも・・・。
「あの店だったらこの時間でもやってっか」
時計はまだ八時過ぎだ。カフェはモーニングをやっていると言っても十時オープンが多い。昔ながらの純喫茶なら七時から開いていたはず。商店街の中ほどにある喫茶メアリーはたっぷり玉子サンドが有名な老舗喫茶店だ。
「今日は久しぶりにメアリーにでも行くか」
今日も風が冷たい。温かいコーヒーを飲んで今日の予定を立てることにしよう。
そうと決まれば善は急げ。腹の虫もぐぅと鳴いた。
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