稲雀
亀と麦茶
一、月下の門
ある秋の夜のことである。空には薄月が上り、風も吹けば肌を切らんばかりの寒さなのだが、それを気にもしない顔をして微光を見上げる男がいた。
男は家も妻子も捨て、山寺に一人暮らしていた。それは
どれ程のあいだ人と言葉を交わしていないだろうかと思いながら、月を見て、心の隅にある寂しさを押し込め切れずに、身をぶるりと震わせる僧の姿が、陰となって描かれていた。
月がやたらに明るいのを見て、そうか今日は十五夜だったかと気付いた男は、美しく澄んだ夜を一人でいることに、よりいっそうの寂しさを心に感じたのだろう、白い息を一つ吐き出した。
古代人であったら、この寂しさを歌にして少しは昇華することもできただろうが、男は、自らの
月にまつわる歌、説話を何か思い出そうとして頭を抱えた後、男は「門でも
「僧は敲く月下の門」と詠んだのは
稲雀 亀と麦茶 @chart_clock
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます