第139話 読点をどう使うか

 はい、前回の続きです。


> 連休真っ只中とはいえ、田中は内科の当直だし、佐藤はレストランのシェフ、書き入れ時だ。


「書き入れ時だ」が両方にかかるので、「田中は内科の当直で書き入れ時、佐藤はレストランのシェフで書き入れ時」となってしまう、これを回避するために138話では文章を二つに分けました。


→ 連休真っ只中とはいえ、田中は内科の当直があって時間が自由にならない。佐藤に至ってはレストランのシェフ、書き入れ時だろう。


 でも待って。読点の使い方をちょっと変えるだけで、こんなめんどくさいことしなくていいんでない?


 元原稿はこんな短い文に読点がなんと三個! 読点は打ちゃいいってもんじゃなくて「文の意味が正確に伝わるように打つ」のが正解ですよね。

 この中で要らない読点が一つあるわけだ。それは……


 この読点を入れてしまったばかりに『書き入れ時だ』が両方にかかることになっちまった原因でもある「書き入れ時だ」直前の読点です。


 この読点を取り払ってしまうと「田中は内科の当直だし」と「佐藤はレストランのシェフ書き入れ時だ」の二つに分けられます。つまり、「書き入れ時」は佐藤にのみかかる言葉になるわけですね。


 さて、ここで読点を取るだけだと佐藤の方の文章がおかしくなります。読点があったところに接続詞が必要ですね。「だから」「なので」などをぶっこみましょう。

 「佐藤はレストランのシェフなので書き入れ時だ」はい、OKですね。

 これで再構築するとこうなります。


⇒ 連休真っ只中とはいえ、田中は内科の当直だし、佐藤はレストランのシェフなので書き入れ時だ。


 これでも過不足なく伝わります。あとは『→』で示した文と『⇒』で示した文、どちらがその小説の雰囲気に合っているかで選択すればいんじゃね? ね?

 これは字数が多すぎちゃったときに削る裏ワザとしても使えますよね。二文を一文にして字数を抑えるとか、またその逆とか(よほど三十六万字を十二万字に改稿させられたのがしんどかったらしい如月)。


***


 よく思うのが「読点打ちすぎ問題」でして。一文に読点が四つも五つも出てくるんだったら文章分ければいいのにと思います。あまりにも読点が多いと結局何が言いたいのかさっぱりわからなくなるんですよ。

 如月自身、一文が長すぎる傾向にあるんですが、それでも読点三つ以内に収めます。それ以上になる時は文章をぶった切ってしまいます。その方が読みやすいからね。

 読ませる文章を書く人は、一文が短い傾向にあるそうですね。読んでいる側が処理しきれないほどの長い文章は好まれないということでしょう。

 長い文章でもサラリと読ませてしまう作家さんは本当に上手い作家さんなんだろうなと思います。サウイフモノニワタシハナリタイ。


***


 さてここからは読点の場所でエライことになるネタ。

 小学校の国語の教科書にあったので、小さなお子さんをお持ちの方はご存知かもしれません。


「山本さんとおったよ」


 ここに折り紙をする二人の女の子の絵と、男の子の前を女の子が歩いていく絵があります。そこに読点をつけた文章が添えられています。


「山本さんと、おったよ」折り紙

「山本さん、とおったよ」歩いていく


 さすが教科書、イラストをつけても問題の無い例題を考えて来ますね!

 私が思いついたのは銭湯の玄関と脱衣所バージョンです。小さい頃に一休さんの話にあったのを見たような記憶があります。


「ここで、はきものをぬいでください」玄関

「ここでは、きものをぬいでください」脱衣所


 だけど最初に思いついたのはこっちです。


「彼女がぱんつ、くれるって言ってたよ」パンツ要らんし。

「彼女がぱん、つくれるって言ってたよ」パン作れるんだね。


「ぶらし、わすれた」ブラシ忘れたのか。

「ぶら、しわすれた」え、ノーブラ?


「みんなもえろ、本気になって」みんなで燃えるんですね!

「みんなも、えろ本気になって」みんなスケベですね!


「あのおかまで、かけていく」昭和の歌謡曲みたいですね。

「あのおかま、でかけていく」オカマちゃんだって出かけますよ!


 いろいろすいません。

 ほら、有名だし。私が考えたんじゃないし。好きだけど。



 また最後の最後でシロートが変態を暴露したようだな……。

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