三章:異端裁断

登場人物

ジル・ド・レ

フランス北西部、ブルターニュ地方の貴族。元は粗暴な男であったが、ジャンヌとの邂逅を期に神への信仰を取り戻す。だがその信仰は飽くまでもジャンヌを通したものでしかなく、火刑によってジャンヌを奪われた後には、一転した憎悪となって燃え広がった。本作ではジャンヌ復活のため黒魔術に傾倒。徐々に身体を蝕む狂気に怯えながらも、狂いきった純愛を胸に歩を進める。




フランソワ・プレラーティ

イタリアから流れ着いた、錬金術師の少女。片目を隠す銀髪の奥には、燃えるような灼眼を宿している。見た目の年齢に反し黒魔術・死霊魔術への造詣も深く、ジルのパートナーとして辣腕を振るう。ジルへの興味本位で引き受けた人体錬成だが、気がつけば狂恋の泥沼に足を踏み入れていた。ジャンヌの代替品として抱かれる事すら容認しているが、その思慕はやがて嫉妬の炎へと代わり、彼女と彼女を取り巻くものに災いを振りまいていく。




ラスタ・オルフェ

フス戦争の英雄、ヤン・ジシュカの義娘。元が異民族の孤児オルフェの為、名はチェコの伝承「ヴラスタ」より取られている。義父であるジシュカへの病的な思慕を募らせており、それを餌にシャントセまでやって来た。青騎士ブラゥ・シュヴァリエ参列後は、黒いメイド服を基調としたライトアーマーに首輪をつける、異色の風貌で隠密活動に勤しんでいる。




アリス・キテラー

遠き島国、アイルランドにて魔女裁判に処された、紀元後最初の魔女。身代わりに差し出した召使の呪いで醜い少女のまま生きる事を余儀なくされ、その解呪の為に聖杯を探している。色の抜けたブロンドに四白眼が覗き、色白く痩せこけた四肢からは終始不気味な雰囲気が漂う。利害の一致からフランの元で働く事を決め、血液の貯蔵や薬物の調合など、始まりの魔女の叡智を遺憾なく発揮している。




ベルトラン・デュ・ゲクラン

百年戦争の英雄にして、ジル・ド・レの遠縁にも当たる稀代の騎士。フランによる死霊魔術で再臨を果たし、ジルとの決闘の末、軍門に下る事を承諾する。不死の肉体に生前の数倍の膂力を付与されたその体は、並の騎士では到底歯が立たないほどの堅固さを誇る。生前の通り名は、鬼神オーグル公。




クルトー

またの名をコートード。切尾の意味を持つ通り名は、人食い狼として恐れられた生前に起因する。冬道のフランを襲った事で返り討ちにされ、以降は従順なる足として調教され現在に至る。さほどの長時間では無いが、人の姿を取り人語を解す事も出来る為、使い魔には荷が重すぎる潜入任務などを言付かる事が多い。外貌は赤毛の巨狼。




ジャンヌ・ダルク

オルレアンの乙女。魔女の汚名を着せられ、裁判の末火刑に処される。その肉体はかつて灰になるまで焼き尽くされた事から、本作では聖遺物や髪の一欠を媒介に、一からの人体練成にかけられる事となる。元は小柄な見た目で、色白なもののそばかすもあり、特段の美少女という訳ではない……が、ジルはこの少女に心から恋い焦がれている。




アルテュール・ド・リッシュモン

現フランス軍大元帥。私利私欲の無い生粋の武人であり、優秀な軍人でもある。アラスの和議を目前にジルらの来訪を受け、彼らが歴史の闇で暗躍する事を条件に同盟関係を構築する。以前にジャンヌ・ダルクとは戦場で肩を並べた事もあり、裁判を食い止められなかった事を悔やんでいる。




エドワード・オブ・ウッドストック

黒太子ブラック・オブ・ウェールズの名で恐れられた、英国側の英雄。王太子でありながら卓抜たる軍事の才を有し、存命時は無敗の将軍としてフランスを蹂躙した。この度は何者かの意志により受肉を果たし、最盛期の膂力で以てジルらの眼前に立ちはだかる。黒尽くめの鎧、鉄仮面の下は銀髪の美男子で、ウェールズの赤竜、ペンドラゴンすらも使役する。




ヘリワード・ザ・ウェイク

またの名をロビンフッド。イングランドにおける護国の伝承として語り継がれる、継ぎ接ぎ合わせの群像の英雄。長弓を武器とし、数キロ圏内の標的を確実に射抜く力を有する。好戦的な性格では無いが、向かってきた相手には礼を以て殲滅する、防人としての苛烈さを併せ持つ。




セイタン・ロベイル

悪魔セイタンロベールとして後世に名を残す、ノルマンの伝承。子を産めない公爵家の妻が、神を捨て悪魔に縋った事に端を発する、悪逆の徒の物語は、本来であれば聖人の座に名を連ねる事で終焉を迎える筈だったが、この男は紛うことなき悪魔としてジルの前に立ちふさがった。人の姿を象るうちは、ダガーや剣を用いたオーソドックスな戦法を取るが、ひとたび悪魔に変貌を遂げるや、突撃を中心とした豪快な戦術に様相を変える。一時はジルらを圧倒するも、ラスタの奮戦、リッシュモン旗下騎士団の一斉放射を浴び、黄昏のなか灰に還った。

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