悪魔になってイイノ?12話紀光家撤退戦

紀光家撤退戦


「数分前から群がり始めました」

そう言いながら詩織ちゃんが突き割いていく。

「私は最初、敵を撤退させるような戦い方をしていましたが、もう無理で無駄です。全員が傷を負っても襲ってきます。しかし、突いても突いても復活するのです」

「わ、私たちも戦わなくちゃ」

「そうだね、僕たちも参戦するよ!」

「……ああ。だが、撤退戦で問題ない。この中はもう引き払った。全部私のフォルダの中だ。だから任せたぞ006号」

「はい」

そう短く返事をするとメイドさんは屋敷に戻っていった。

「では撤退を開始します。神奈を守りつつ、皐文が先頭、私が殿、珠樹には臨機応変に前後を移動してください。いいですか?」

「で、でもさっきのメイドさんは?」

と私はびっくりしながら聞くと、

「……あの機体の活動限界はもう近い。だから自爆する。その代わりあの機体のメモリはここにある。だからまた再生するつもりだ」

「え? で、でもあの人は……」

「……珠樹、あれは機械だ間違えるな」

「で、でも……」

「珠樹は正しいよ。でもさ、本人たちが良いって言っているんだよ。その意思を、その決意を、その決定を無為にはできないよ」

「う、うん」

私は置いて行ってしまった。周りに流されて。しかし、

「……よし、敵は全員こちらに来ているな。006号自爆の必要はない。安全なところに退避だ」

とメイドさんに連絡を入れているのを見てほっとした。しかし、その気の抜けた瞬間、視界がグラッと揺らいで、私は落ちていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る