NOT_永久機関における僕らの立ち位置

梧桐龍睛

prologue

_断章

 ――遠い昔、この世界に8人の魔女が生まれた。


 魔女は、自身の幸福を代償として、人々に文明を授けた。



 一人は炎の知恵を授け、獣を殺した。


 一人は大地の知恵を授け、峯を均した。


 一人は金の知恵を授け、欲を満たした。


 一人は水の知恵を授け、喉を潤した。


 一人は草木の知恵を授け、穂を垂らした。


 一人は光の知恵を授け、夜を導き


 一人は闇の知恵を授け、身を隠させた。


 しかし、最後の一人は何も与えることができなかったので、その感情を与えた。



 魔女は人々の尊崇を集めると同時に、やがて人々に疎まれた。



 炎の魔女は、ほむらの如く気性が荒く、気位が高かかった。


 大地の魔女は、怒りで雷鳴を轟かせ、地を揺らした。


 金の魔女は、この世のすべてを欲した。


 水の魔女は、拭えぬ渇きと不平等を齎した。


 草木の魔女は、人を醜く肥えさせた。


 光の魔女は、眠りを忘れさせ、快楽におぼれ


 闇の魔女は、永遠の眠りにつき、目覚めなかった。


 しかし、最後の一人は、心を失っていたので人々から疎まれることなく、愛された。



 やがて人は七人の魔女を怖れ、その知識だけを得られるよう、その心の臓だけを取り出し、体は地の果てに捨て去った。


 何も与えられず、何も感じなくなった最後の魔女をその手で愛でながら――。



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