【閉幕】『不穏和音』
「状態を確認。情報を解析。状況を解明。」
【ベンジャミン・グリューン】
フォルネリット星出身。恐竜系遺伝子を組み込んだ自立型有機戦闘兵器が野性化、『リュージーン』という民族を形成。末裔である族長の子、そして十人兄弟の末子として生まれる。
両親、兄と姉は対立民族『アニマン』との戦争で死亡。家督を継ぎ、成人の儀を経て族長となる。殲滅戦の最中、好敵手と遭遇。後の■である■■■■・■■■との交戦を経て、■■となる。
戦争に疲れ、対立を嫌い、和解を求め、共存を望む双方の同胞達とともに故郷を捨てる。
【ヴァネッサ・ヴァイオレット】
惑星シュミリュン出身。シャーマンの家系として名高いヴァイオレット家の長子。巫女と科学者という二足の草鞋を履く。
家督を継ぎ、巫女としての役目を果たすための儀式中に《アンノウン》が襲来。そして惑星シュミリュンは崩壊、消滅。
家族の手引きにより脱出、生存。宇宙空間を救命ポッドで彷徨っていた際に■■・■■■■■が発見、救出される。
【エミリア・ジョルトイ】
惑星ライトニア出身。両親は偽装事故により謀殺される。姉である■■■・ジョルトイとともに劣性遺伝子保持者として収容所に連行される。
非人道的な人体実験を経て強化人間となった後、収容所で騒動を起こす。
宇宙警察によって捕縛、拘束。【彼】の手引きによって師匠であり■■となる■■■・■■■■■に引き取られる。
長い前髪の下にある両目は人体実験による後遺症有り。
【シオン・アジュール】
ウォルタネス星出身。転星届により地球籍を取得。【彼】が身元保証人となる。
灰沢亨の息子である灰沢■やレイモンド・雪村から音楽などを学ぶ。
ウォルタネス星での記録は意図的に抹消。家族構成など当時の情報や状況は闇に葬る形で残されていない。
「最後に一人、情報を追加。」
【
3年前の出来事が引き起こした大災害から無事に生還、唯一の生存者となる。
記憶喪失。本名不明。身元不詳。特別処置により地球籍・日本国籍・日本戸籍を取得。
その後、恩人であり名付け親である紅明美との養子縁組を経て『
なんて強烈な組み合わせなのだろう。
なんて酷い継ぎ接ぎだらけなのだろう。
なんて凄まじい個性の溜まり場なのだろう。
桃花は疑問を抱く。一歩間違えば個性の殺し合いである。アクの強い個性は華にもなり、毒にもなる。
個性など邪魔なアクセサリーでしかないのに何故人間は個性を大事にするのか桃花には理解出来なかった。
理解など不要だ。そして自分には個性は不要だ。この姿も、この色も、この名前も何もかもいらない。
「理解なんて出来るはずがありません。」
「そうだね、《アンノウン》のエサでオモチャでしかないニンゲンを理解するなんて虫唾が走るよ。」
ぴたりと、桃花は歩みを止める。この状況で話し掛ける人物など彼しか存在しない。無駄な思考を省き、必要最低限の言葉を用意しつつ彼女は静かに振り返った。
薄暗い廊下から姿を現したのは黒いスーツ姿の青年であった。濃い緑色の短髪を持つ彼は暗い紫色の瞳を桃花に向けて問い掛ける。
「やあ、調子はどうだい?」
「報告は76時間51分49秒後と定められております。現時点での接触は規則違反ではありませんか?」
「相変わらず細かいね。ロボットみたいだ。」
「
私は私の使命を命懸けで果たすまでです、と桃花は翡翠を見据えながら応えた。そんな彼女に翡翠は「まぁ、別にどうでもいいけどね」と苦笑する。
「マスター・ダークネスのためにも頑張んなさいな。」
「分かってます。」
「ニンゲンとの『仲良しごっこ』は大概にしなよ?」
懐柔されたらマスターがどう思うことやら、と小馬鹿にするように笑いながら翡翠は廊下の薄暗い闇へと溶けるように立ち去った。
翡翠が姿を消した後、彼が立っていた場所を睨み付けると桃花はその場を後にした。
「全てはマスター・ダークネスのために。」
そう呟きながら桃花は指令室へと向かうために廊下を歩き続けた。
『第一章 ビギン・クリムゾン』【完】
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『第二章 スタンド・グリーン』
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