第2話 叶美の気持ちと那月の気持ち
「一つ聞いていい?」
いつも元気よく話す那月が、今回は少ししんみりした感じだ…。余程のことなのか…?
「何だ?」
「私と叶美ちゃん、どっちのが大切?」
「は…?そんなの両方に決まってるだろ」
「私のが良くない!?」
「何がだよ」
ったく、訳の分からんことばっかり並べやがって。
俺の多少の心配した気持ち返せや!
「何が言いたいのか分からんが、そろそろ特例だされた理由を教えてくれ」
「特例…」
今日の那月は何かがおかしいな。
「何かあったのか?」
流石に心配になり、優しく声をかけた。
すると、那月が突然。
「ふふ…ふはははははは!! 特例とは面白い事言ってくれるよ!」
「な…那月…?」
那月がこんな笑い方するのは初めてではない。
問題起こすとこういった笑い方をすることがある。
「浩ちゃん!」
「は、はい!?」
いきなりの事で声が裏返っちゃった…
「特例だされた理由知りたいって言ったよね?まだ教えないけど、時期に知ることになると思うよ!」
「へ…?」
なんかよく分からんことが多すぎて、俺の語彙力の無さを痛感させられた。
「ドン!ドン!ドン!ドン!」
「な、なんだ!?」
語彙力を鍛えようと思った時、叶美の部屋からいきなりドアを思いっきり叩かれた。
叶美は何を考えてるんだ…
まさか!壊す気なのか!?
「叶美!早まるな!ドアを壊してはならない!」
「鈍いやつ…ボソッ」
「那月、なんか言ったか?」
「なーんにも!」
今日は一体なんだってんだ…
午後九時。更に叶美と那月の仲が悪くなった…。
濃い一日だったなー…。
「じゃあ私は帰るよ!また明日ね浩ちゃん!叶美ちゃんにもよろしく言っといて!」
いや、叶美の部屋の前でそんなこと言ったって、聞こえてるだろ…。
「もう絶対来ないで!!!!!」
ほら聞こえた…ってそんな場合じゃないだろ!
「今…叶美が声を出した…?」
普通に感心していた俺に那月が、
「私のおかげだね」
「ちげーよ」
那月は帰っていった。ようやくゆっくり叶美と話せる…
「叶美?部屋にいるだろ?開けて俺とお話しないか?」
優しくドアをとんとん叩いた。
「兄さん…あいつをもう家に連れてこないって言えるなら話す」
なんて条件を出してくるんだ…!
俺は那月と叶美が仲直りして欲しくて話をしようと思っていたのに…
「兄さん…?どうかした?」
「いや、なんでもない!…が、その条件は守れないかな…」
「そう。じゃあ二度と喋りかけないで」
「叶美!?」
そう言って、その後何度も声をかけたが無視られた。
ピピ、ピピピピピー。
目覚ましのなる音。そして、もう朝だと教えてくれる音でもある。
「早く学校に行かないとな。また遅刻したら…やばいことにるからな…」
そう言いながら、唾をゴクッと飲んだ。怖いかったから…
両親はいないから、朝ごはんを作るのは大体俺だ。いないっても、朝4時から夜11時まで働き詰めなだけなんだがな。
金無いからしゃーないな。
「後三十分位は余裕ありそうだな。テレビでも見るか」
占いがやってるな。
俺は二月二十二日生まれだから、うお座だ。
『一位はうお座!今日はいいことがあるでしょう!』
お!まじか!じゃあ学校で先生に褒められたりするのかな〜。
そんな喜びに満ちた顔をしながら、暇潰しがてらゲームをしていた。
すると、リビングのドアが開き、聴きれた声がした。
「兄さん、そ、相談があるんだけれど…突然言われたら嫌…かな…?」
その瞬間、一時的に俺の脳は機能停止した。
いつもならここにはいない人がいて、話しかけてくれたのだから。
声をかけてくれて、脳が正常に働いた時、一番に思ったことがある。
「占い最強じゃね!?」
「兄さん、いきなり大声出さないで」
まさか声を出してしまうとは…。不覚…
正気に戻り、叶美の話を聞くことにした。
「俺が叶美の相談を断るわけないだろ!で、なんなんだ?」
「…相談の前に一つ言うと、兄さん学校は?」
学校?……はっ!忘れてた…
「兄さん…?大丈夫?」
「少し待ってて!今すぐ学校に休み連絡送るから!」
「後でもいいのに…」
後でなんて言われても、俺が妹を優先しないわけがないだろ!
多分、俺も心のどこかで自覚してるんだ。『シスコン』だってことを。
恥ずくて、妹には言えないがな…
プルルルル…ガチャ
学校に電話が繋がった。
「はいもしもし真紅高校の山岸です」
よりにもよって…担任の先生が出るだと!?
ま、今の俺はそんなこと気にしないんだけどね☆
「先生!俺今日妹が話しかけてくれたので。休みます!」
「そんな理由が通るわけないだろうがあああ!!!」
「でも、その意見通してもらいます!」
「馬鹿野郎!! 妹の為に休むやつなんて、普通いねーだろ!」
「それじゃ!」
ブチッ…ツーツーツー。
明日は大波乱だな。
「兄さん大丈夫だった?」
「あぁ!もちろんさ!」
妹には絶対弱い所は見せないって決めてんだ!
「で、何のようだったんだ?」
学校に電話等、いろいろあり過ぎて、本当の用事のことを忘れかけていた。
「兄さんは…私と幼馴染のどっちが大切!?」
「……い、いきなり何言ってんだよ!?」
同じような質問を、那月にもされたから驚いている。
「兄さんは那月とよく喋るのに、私とは話さないから…」
なんか誤解されてない?
俺は叶美の下着を洗濯、干すという作業する時、どれだけ叶美の顔を思い出し、いろいろ妄想してることやら…
それに、毎日のように話したいと思っているけど、叶美が無視してくるんじゃん…
俺のこういった考えが浮かぶ中、叶美に言った言葉はこれだった。
「俺はシスコンだ」
…何言ってんだよ俺!!
叶美が悲しそうな表情で質問してきてんのに、訳の分からん回答してしまうなんて…!
「か、叶美…?」
「兄さん…。いきなり何いってんの!?」
「それについては、ぐうの音も出ません!!!!!」
そのまましばらく、無言状態が続きました…。
「叶美?落ち着いたか?」
「私じゃなくて、自分に問いかけてよ」
「すみません…」
失言続きの俺に的確なツッコミをくれる妹……漫才師にでもなれるんじゃないか!?
「今、変な事考えてないよね?」
「……」
何も言い返せなかった。
「じゃあさっきの質問は最後に答えてもらうとして、他にも質問してもいい…?」
「あぁ!なんでも答えるぞ?」
失言しないよう心がけながらな。
「兄さんはどこの高校通ってるの?」
「真紅高校だ」
「しん…く?」
「少し読みにくいかもしれんが、かっこいい名前だと思ってな!入ったんだ!」
入る動機が高校名の人なんて、聞いたことあるだろうか?
俺はない! 俺だけ…なのでは!?
「兄さん、もう少し真剣味を持ってよ…。顔の表情が緩んでるよ?」
「あはは…そら悪かった!どうしても叶美の顔を見ると緩んでしまってな(笑)」
「どういう意味?」
「可愛いって意味だよ」
「/////」
顔真っ赤だな…。
まさか俺に惚れたとか?
…それは無いな。妄想にしても、もっと現実味のあるものにしなきゃ。
大方、熱でもあるのだろう。
「そろそろ部屋に戻るか? 叶美はリビングにあまり来ないし、慣れない環境ってやつだとやっぱ疲れたりするだろうし」
言ってて思ったが、叶美って同じ家に住んでるよな?
今めっちゃ失礼な事言わなかったか、俺。
言葉返してくれないし…
嫌われたのかな…
「兄さんは…優しいんだね…」
「いきなりどうしたんだ? 優しいお兄ちゃんに恋したか?」
「何言ってんの!/////」
思いっきりグーパンされ、みぞおちに入りました…
痛すぎる…!
すると、いきなり大声で、
「じ、冗談でも、兄弟好き合うことなんてないでしょ!/////」
俺はあながち冗談で言ってないんだけどなー。
気長にこの気持ちを伝えようか。
「ほら、やっぱり顔が赤い。連れてってやるよ。部屋まで」
「別に熱とかで顔赤いわけじゃないのに…この鈍感…ボソボソ」
「ボソボソ言われたんじゃ聞こえないよ。もっと大きい声で」
「うるさい!」
痛い!
短時間に二回も妹に叩かれるなんて…
でも、元気出たみたいで良かった。
「四時か…叶美、何か食べたいものとかあるか?」
結局部屋に行かなかった妹。
陰キャラ卒業してくれたのかな!?
「兄ちゃんは天ぷらとか食べたいな〜」
「………」
あれれぇぇぇぇぇ!?
同じ部屋にいるのに無視されるの!?
「スースー…」
ソファーの上には、寝息を小さく立てて、寝ている妹がいた。
良かった…。無視されてるわけじゃなくて…
ホッとしていたら、妹が起きた。
「ここは…?」
「リビングだよ」
「な、なんでリビングにいるの!?」
「自分から来たんじゃん」
「そんな訳ない!!」
意味のわからん事を言い、自分の部屋へ駆け出して行った。
俺はこの時、一つしか感情はなかった。
「振り出しに戻ったな…」
そんなことをポツリと呟いている時、一本の電話がかかってきた。
初めての人だ。
「もしもし?どなたですか?」
「……兄…さん…?」
「え…叶美!?」
突如、部屋へと駆け出したはずの叶美が、電話をかけてきた。
なぜ電話!? そして、なぜ番号知っている!?
そんな疑問がある中、叶美と話したいという感情が勝った。
「ど、どうしたんだ?いきなり…」
妹相手に緊張してんじゃねー!
さっきまで話してただろうが!
「お礼…したくて…。今日はありがとう…/////」
お礼だけの為に電話してくれたのか…?
叶美には見えてないが、俺は泣いていた。嬉し泣きってやつだ…!
「いつでも相談乗ってやるからな…グスン いつでも話しかけろよ!」
「え…なんで泣いてるの?兄さん…」
「ば、馬鹿野郎!! な、泣いてなんかねーよ!!」
「あ、はい」
そう言って、切られました。
ガチャ。家のドアが開く音がしたが、俺は気づかなかった…
「もう少し話したかったな…妹と…ハァハァ…」
そんなことを言いながら、妹の顔を想像していた。
これはもはや、シスコンで表せれる領域を突破してしまったのではないか?
自分で今少し思ったこと。それは、シスコンから変態へジョブチェンジしたのでは…だった。
「浩ちゃん…シスコンだったの…?」
「え……な、ななななな…那月!? どうして家へいるんだ!?」
なぜか、部屋の中へいる那月。
しかも、変な誤解までされてるし…
誤解ではないな。
「え、だ、誰がシスコンだってぇ??俺はそんなことないよ…?」
苦し紛れの言い訳。通じるわけもなく…
「シスコンだったなんて…。でもさ浩ちゃん!私だってルックスは叶美ちゃんに引けを取らないと思うんだよ!」
そらそうだろうな。
綺麗な銀髪に、腰までかかる長い髪。モデルになろうと思えばいつでもなれる顔。
そんな条件揃ってるから、俺は自慢できる幼馴染を持ったと思ってたんだからな。
「ねぇ…浩ちゃん…。今からエッチしない…?」
そう言って、俺を軽く壁へ寄せ、身動きを取れないようにしてきた。
顔を俺の胸あたりにして、俺の顔をじっとしたから見つめてくる。
ゆるい服を着ているせいか、胸も見えそうになっている…。
ショートパンツって言うんか分からんが、足もめっちゃ見える、露出の激しいズボンを履いて、息遣いも「ハァハァ」聴こえるし…。
ちょ!エロすぎでしょ!
あ、ハァハァは自分も言ってたか。
「ねぇ…浩ちゃん…?」
やばいやばいやばいやばい!
俺は妹が好きだ。大好きだ。
が、しかし、こんな美女が目の前でこんなことしてきたら…高校二年十六歳、彼女いた事ない童貞からしたら、理性が保てるはずがないだろ…!
無防備に近づいて来すぎだ…!!
もう…このまま妹コース外れて、幼馴染コースへといこうかな…。。
俺は、そっと那月の肩に手を乗せ、理性を崩し、欲望のままへやろうとした時…
バン!
力強く、家のドアを誰かが開けた。
リビングにいたので顔は見えないが。
と、思っていたら、リビングにいきなり入ってきた。
俺の前にいた那月を突き飛ばし、俺に掴みかかってきた。
「浩介!! てめぇなんでサボったんだ!?」
いきなり現れた、モブキャラA君…ではなく、志賀だった。
「って!なんで志賀がいるんだよ!」
「そんなことはどうでもいい!さっさと理由を答えろ!」
なんでキレてるんだ…?
状況的にキレたいのは俺の方なんですけど。
後ちょっとって所で邪魔されたんだから!
仕方なく、怒らず理由を言ってやった。
「妹が俺に話しかけてくれたからな。嬉しくてつい…」
「ついだ…? はぁー…。もういいや。今回は俺なんの手助けもしないからな。明日頑張れよ」
「一体何を伝えたかったんだよ」
全く状況が理解できない俺を前にし、志賀は横を見た。
そこには、突き飛ばし、こかされた那月がいた。
「那月じゃねーか…。そうか、二人ともサボってこんな所でイチャイチャしてたのか…」
二人とも?じゃあ那月もサボったのか?
「優しい俺が一つ忠告してやるよ。明日、お前ら自殺しないようにな」
「「しねーよ!」」
ハモった。
お互いにしたくない理由があるんだろう。
志賀はやれやれと言わんばかりの顔をして帰った。
那月もちょっと強ばった顔つきをしていた。
「浩ちゃん!ごめんね!途中までで終わっちゃって!またいつか続きしようね!」
そう言って帰っていった
やばい…意識してしまう…!
やめろ!俺はシスコンなんだ!
「明日…俺大丈夫かな…?」
フラグのようなものを立て、俺は眠りについた。
次の日の朝。とんでもない事件とともに始まったのだ…
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