陰キャラな妹と陽キャラな幼馴染の仲が悪すぎるんだが
柊木ウィング
第1話 妹と幼馴染の関係
────プロローグ────
妹は、元々陰キャラではなかった。陰キャラになってしまったのは、俺のせいなのだ……。
俺は、中学にあがる妹に、 何かプレゼントをしたいと思った。考えた末、パソコンをプレゼントすることに決めた。
それが、のちのち妹を陰キャラにしてしまうなんて……。
「叶美(かなみ)ー。ご飯出来たぞー」
「……」
俺の名前は高梨 浩介(たかなし こうすけ)。高校二年だ。
中学二年生に、 叶美という名の妹がいる。
両親は共働きで、帰ってくるのは夜遅い。つまり、基本家にいるのは、俺と妹の2人だ。
「早くしないと、ご飯冷めるぞ」
「……」
一ヶ月くらいずっとこうだ。
全く喋ってくれないし、二階にある自分の部屋から出もしない。
部屋でずっとネットを使っていて、学校には通っているんだが、いつ家を出ているんだろう……。
陰キャラってやつだ。
「じゃあ俺は学校に行ってくるからな」
「……」
はい無視!
ガチャ……パタン。
早くも、高校二年になり、一ヶ月が経った。
ピーピー。チュンチュンと、鳥の泣く声もする。
いい天気だな〜。なのに、家の状況は、今までと何も変わらないな〜。
「おっはよー浩ちゃん!元気なさそうだねー?」
「あーおはよ。那月はいつも通り、ハイテンションって感じだな」
那月こと、水華 那月(みずはな なつき)は、俺の幼馴染だ。
幼稚園から高校まで全て同じで、家も隣同士なのだ。
そしてこいつは、とても陽キャラなのだ。
「家とのギャップが凄すぎる……」
俺は思ったことを、ボソッと言ったつもりだったのだが、那月には聞こえたらしく。
「あー!あの一件以来、まだ叶美ちゃんと喋ってないんだ!」
「な、なぜ分かったんだよ…! てか、あれは元々お前が原因なんだろ!」
そう、あの事件さえなければ、俺達がこんなにも長く話さないということは、なかっただろう……。
あれは、一ヶ月前に俺の家に遊びに来た、那月が引き金なのだ。
──── 一ヶ月前────
俺と那月は、難関な高校一年生を突破していたので、学年の雰囲気なども知っており、二年になっても緊張などはなかった。
「那月、今日暇なら家くるか?」
「行く行くー! 叶美ちゃんと話したいし!」
入学式の当日に、暇だったので那月を家に入れた。
これがのちのち、悲劇になるなんて…!
「ただいま。叶美?いるか?」
「おかえり、兄さん」
リビングで、ゲームをしていた叶美が、ちゃんと挨拶をしてくれた。
「やっほー!叶美ちゃん元気ー!?」
「げ…」
嫌なのかな?声が漏れてるぞ?
陰キャラの妹と陽キャラの幼馴染が、息が合うはずもなく。
「叶美ちゃんはまだ、そんなくだらなさそうなゲームしてるの?」
「く、くだらなくなんかない!」
いつもこうだ。
会うと必ず、言い合いをするのだ。
俺は、喧嘩するほど仲がいいって言うし、特に気にしてなかったのだが…
「そんなゲーム全部捨てて、友達と遊んだらどう?」
ゲーマーには、言ってはいけないことを口走った那月。
言ってはいけないと思ってはない感じが、ひしひしと伝わってきた。
「あ、あなたに何がわかるっていうの!? 中島キツネさんの新作『私の秘密を知ってもらいたい』の面白さが、あなたにわかるって言うの?」
そう。叶美は中島キツネという名でゲームを作っている方の、ファン…みたいな感じになっているのだ。
別に誰の作品を好きになろうが構わないが、出来ればやめて欲しい…
何せ、キツネさんはエロゲーを作っているんだから。
「叶美、あまりそう言ったエロゲーを進めないでくれ。こいつ、俺の幼馴染だからさ」
幼馴染に変な誤解をさせたくなかったので、早めに釘を刺した。
叶美は俺の立場を考えず、怒りながら、
「兄さんは妹がエロゲーしてるの嫌だっていうの?パソコンくれたの、兄さんなのに?」
うるうるした目でこっちを見ないでくれ…!
「そうだな、学校に行っていれば文句はないさ」
俺はもしかしたら、シスコンなのかもしれない。だから、なんと言われても俺は気にしないようにしている。
「浩ちゃん!甘やかしすぎだよ!そんなんだからこんな感じに育っちゃうんだよ」
その声と同時に、
「ドン!」
「キャ!」
「叶美!!」
「ピ、ガシャーン!!」
何が起きたか、順に説明すると。
最初に那月が、叶美を突き飛ばし、パソコンからゲームを取り出し、地面に叩きつけて割ったのだ。
「あ、あぁ…。 折角お金貯めて買ったのに…グスングスン」
なんなんだよこの状況…。
叶美が那月に泣かされた。客観的に見れば那月が悪い。
が、その原因は俺も気に入らなかったやつのことだし…!
「俺はどっちを責めればいいんだー!!!!」
「「いきなり大声出さないで!」」
「は、はい…」
責めようとした人が責められるなんてあるんだな。
ある意味貴重な体験だ…!
「那月さん、貴方は兄さんの幼馴染なのかもしれませんが、私は二度と貴方の顔を見たくありません!もう来ないでください!」
「お断りします〜!何度でも来ますからね〜」
うっわー…。また喧嘩始めやがったな。
ったく、ここは俺が一肌脱いでやるか…
「おいおいお前ら、その辺にしとけよ。このまま喧嘩が長引くとのちのち面倒だろ?」
俺はこのまま喧嘩が終わると思っていた。なぜなら、いつもなら終わっていたからだ。
なのに…なのに…!
「絶っっっ対!許さないから!」
え…?ガ、ガチギレ!?
その言葉と同時に、叶美はドアを壊すのでは…?と、言いたくなってしまうぐらいの力で閉めて、二階の自分の部屋へ行った。もちろんパソコンを持って。
「ねー浩ちゃん?」
「どうした?仲直りしたくなったか?」
いつもテンションの高い那月が、ちょっとピリッとした雰囲気を作り出してきた。
「今、叶美ちゃんいないしさ、あれしない?」
「あれってなんだよ」
「え☆ろ☆い☆こ☆と」
「ふぁっ!?」
突然何言い出すんだよ…!
でも、今の俺の顔は多分、満更でもない顔してると思う。
那月は、金髪で挑発のモデル体型で美少女なのだ。文句の付け所がないくらい完璧な女だ。
これまで告られたこともない俺からしたら、今を棒に振ってはいけないのかもしれない。
でも、上には叶美が…!
俺の理性よ!頑張って耐えてくれ…!
「いや、それは幼馴染だからすることではないだろ…? 好きな男が出来たら、そん時にすればいいんじゃないか?」
あー…。人生最大のチャンスを棒に振ってしまった。
それでも俺は、妹の事が好きだし…
「私の好きな人はさ、こう…」
那月が何かを言いかけた時。
「ドン!ドン!ドン!ドン!」
上からすごいうるさい音がした。
床抜けるんじゃないか…?
やめてくれよ?抜けたら、俺の責任にされてしまうからな…って、俺は腰抜けかよ!
「ちっ。あとちょっとだったのに…ボソッ」
「ん?なんか言ったか?」
「ううん!なんにも!」
「もう六時だし帰れば?」
俺は、叶美が出ていってから那月と二時間くらい話をしていた。
気兼ねない話だ。
「そうね!じゃあまた近いうちに来るわ!叶美ちゃんにも宜しくね!」
「絶対喧嘩はするなよ??」
とりあえず忠告だけはしといた。
十何年も一緒にいるんだ。こんなのがあいつが聞き入れるわけないことくらい、知っている。
────現在────
と言った過去があるのだ。
役立たずの兄でごめんな…。と、内心で呟いていた。
「今日浩ちゃんの家行っていい?」
「絶対だめだ」
俺の即答の断りに那月が、ブーと口を膨らませて睨んでくる。
だからと言って、叶美ともっと仲悪くなられると困るからな。
「今日俺が叶美を説得するから」
そう言って俺は、那月を宥めた。
そんなたわいのない話をしているうちに学校の門まで着いた。
キーンコーンカーンコーン。
チャイムが、学校全体…いや、外にまで響き渡っていた。
普通の学校ならば、生徒指導室等で「遅刻しましたー」とでも言えば済むのだろう。
しかし、この『真紅高校』には、唯一の校則があるのだ。
それは『遅刻厳禁』というもの。
遅刻すれば親を学校に呼ばれ、三時間の説教が待っているのだ。内申にも響くし…。
「浩ちゃんどうする?このままばっくれる?」
「ばっくれても無駄だよ。俺前一回やってバレて、説教六時間になったからな」
どうしようか…。万事休す…
「じゃあこうしましょ!」
「なんかいいアイデアがあるのか!?」
悪印象ばっかりだった那月が、ようやく役立てる時が来たってのか!?
「私達が子供を作ろうとしていて遅れましたって言えばいいんじゃない!?」
「お、お前!? なななな、何言ってんだよ!?」
「顔真っ赤だよ?まさか信じた?」
こ、こいつ…!男だったら一発殴ってやるところなのに!
呑気なやつだ…。今の発言でケラケラ笑っていられるのだから。まぁ俺も怒ってるから同じか。
「そんなことはさておき、そろそろ意見考えないとな」
一般的な校則、例えば授業中のケータイを使ってはならないとかは、ゆるい罰しかない。
なのに遅刻だけは…!
「堂々と行けばいいんじゃない?」
「それしかなさそうだな。誠心誠意、謝ればいいんだ」
一時間目開始は九時。現在八時五十分。二十分の遅刻だ。
「よし…行くか!」
息を整え、深呼吸をした。
教室に入る前にこんなことする人を見たことあるだろうか?いや、いないだろう。
入っていうことは決めている。
意を決して、ドアを開けた。
「すみませんでしたあああああああ!!!」
そう言いながら、先生に泣きつきながら土下座をした。
それを見て誰も笑わず、しんと静まった。
まだ笑ってくれた方がマシだっつーの!
先生はマジのトーンの声で、
「浩介。遅刻だ。土下座しても無駄だ。放課後、説教くらってこい!!」
「ひいいいい!」
四十代の強面男が俺の担任だ。
あまりの怖さに泣きじゃくり、失禁までしそうだった。失禁してたら高校中退してたな。確実に。
そのまま強面担任は親へ電話し、1限目が始められた。
「やっと一限目終わったー!」
朝あんなことがあったから、授業が長く感じた。
「浩介怒られてたな(笑)」
「うっせ!ほっとけ!」
こんな感じでよくからかってくるのが、高1で友達になった志賀 衿木(しが えりき)だ。
「浩介、遅刻だけは気をつけろよ。遅刻意外特に厳しくないんだからさ」
「そらいつもは気をつけてたさ。でも今日は過去を振り返っててなー」
高一、高二で二回も遅刻とは…。
全くだらしないったらあらしない!…俺のことでしたあああ!
「やっぱり那月が原因か?」
「やっぱりってなんだよ」
「あいつさ、何かと問題起こさねーか?」
言われてみれば確かにそうかもしれない…
記憶にある範囲で、毎年一回以上は大事の問題を起こすからな。
「起こすかもしれないけど、俺はあいつの事を悪くは言わねーよ。必ず…」
「そっか。幼馴染だし、贔屓したくなるよな〜」
「ば、馬鹿野郎!! そ、そんなんじゃねーよ!?」
ったく、飽きないなー。
ま、それがこいつのいい所なんだがな。
「学校終わったー」
俺は、嬉しさのあまり声に出して言った。
すると志賀が…
「終わってもお前は居残りだろ?どんまい!」
「忘れてた…」
ガチの方で忘れてた。いや、忘れたいと思っていたのだろう。
「俺だけならまだしも、那月も一緒だから多少気が楽だわ」
俺は思っていることを素直に志賀に話した。
すると志賀が、ボソボソ呟き出した。
「またあいつか…」
「なんか言ったか?」
聞き取れなかった俺は、志賀に問いかけた。
「いや、何でもない!さっさと行ってこいよ」
「あ、あぁそうするよ…」
肩を落とし、とぼとぼと説教されるべく、生徒指導室へ向かった。
「えぇ!? 遅刻俺だけですか!? そんなはずありません!」
「いや、事実だ。下手な言い訳をして逃げようとしとるんじゃないか?」
「い、いえ…そんなことは…」
な、何でこんなことに…!
那月はどうしたっていうんだ。逃げられるもんでもないはずなのに。
今日は叶美と話をして、どうにかして部屋から出てもらうようにしようとしていたのに…
まさかこの説教には落とし穴があり、那月はそれを見つけ、逃げ出したというのか?
いや、そんなことは出来る訳ない。
まさに…
「ミステリー!!!!」
「何がミステリーじゃボケぇぇぇぇ!!! てめぇ、人の話聞いてないだろ?一時間追加じゃぁああ!!」
最悪の展開…。アニメやマンガじゃないのに、こんなこと起こるのかよ…
その後、計四時間説教された。
「せ、先生…グスン…那月は…何もありませんでした…?」
説教くらって泣きまくっている俺。言葉が伝わりにくすぎる!自覚症状ありですはい。
「特に何もないが?なぜそんなことを聞く?」
幼馴染を売るみたいで言いたくないが、ここは事実を知るためやむなく…
「那月は俺と一緒に遅刻したはずなんです。なのにここにいないので…」
「……………………………そうか」
なにあの間。
これは何かあるな。
「何故なんです?」
すかさず質問した。
「特例だ」
「特例なんてあるんですか!?」
「お前にはない」
差別かよ。
待て、よく考えろ…?
那月はなぜ早く帰ろうと思ったんだ?考えろ…。あいつの行動を先読みしろ…
まさかとは思うが、俺の家に行って叶美に会ってるとかないよな…?
あいつは人をいじるのが好きだ。
俺は那月の家の鍵を。那月は俺の家の鍵を持っている。緊急時の為にな。
つまり、先に行って何かしらを叶美にして、喧嘩をこじらせようとしてるんじゃないか?
あいつはすぐ問題作りたがるからな…!
「先生!今すぐ家に行きたいので帰ります!」
「ふざけるな。どの立場でものを言っている。そんな態度とるなら親来るまで家に返さんぞ」
俺は、これまでにないほど、ピシッと綺麗な土下座をした。
「叶美に何かあるかもしれないんです。どうか家に帰らせてもらえませんか…」
「何かあったのか?」
「何かあるかもしれないから行きたいんです…!お願いします!!!」
俺の土下座に圧倒されたのか、
「わかった。今日の態度は不問にしといてやる」
「ありがとうございます!!!!!」
そう言って学校を飛び出し、三十分かけて家に帰った。
すると…
「ただいま!叶美、大丈夫…か…?」
元気よくドアを開け、状況を確認した。
目の前にはすごい光景が…
「4時間もドアを閉じないでよ!一緒に話そ?叶美ちゃん!」
「や、やめて!帰って!」
こいつらはこんなことをずっと繰り返していたのか…?
というか…
「おい!お前ら!! やめろよ!!!」
「こ、浩ちゃん!?」
「兄さん!?」
とりあえず、ドアの押し引き合いを終わらせることに成功した。良くやった俺!
「那月、お前には二つ聞きたいことがある。答えてもらうぞ?」
「答えれる範囲でなら…」
「一つ目、お前はなぜ説教をくらわなかったんだ?」
「!?」
なんだその反応…。
大体の予想がつく質問だろうよ。
「ほんとに答えなければならない?」
「当たり前だ」
「わかったわ。答えるわ。」
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