2ページ

「はぁ~やっぱりマスターの作るお酒は美味しいですね」

「ありがとうございます」

「俺、家でも同じお酒を作ろうとしてアマレットを買ったんですけど、作ってみたら全然マスターのと違うんですよ」

「一応バーテンですから」

「さすがマスター! 俺もこんな風に丁寧に作れたらいいんですけど」

「ふふ、混ぜるだけと言ってもちょっとしたコツがいるんですよ」

「え? 教えてくれるんですか!」

 ルカさんの瞳がキラッと光る。今日のカラーコンタクトはアッシュカラーだ。

「いえ、禁則事項です」

 なーんてね。

「えー」

 ぶぅー、と口を膨らませる表情も、いやはや可愛らしい。ミケのところのミヨとは全然違う。まぁ男の娘と美容男子はジャンルが違うからかもしれないけど、とりあえず中身の可愛さが違う。ルカさんの方が可愛い。なんてミヨに言ったらきっと殴られるな。


「ルカさんは今日もお綺麗ですね」

「ちょっ、マスター、話を逸らそうとしていますね?」

「いいえ、真実を述べたまでです」

 さらり、と言うと、ルカさんは少しだけ照れたように微笑んだ。

「・・・嬉しいです」

 なんだこれ、可愛いなぁ。男の子なのに。成人男性なのに。

「これでも一応頑張っているんで」

「メイク雑誌の編集さんですもんね」

「いや」

 ルカさんは一度視線を外しから上目づかいで言った。

「俺、実はメイクに恋をしたんです」

「恋?」

「唯一の恋です。一目惚れってやつ。昔、テレビのメイクレッスンみたいなコーナーで、ドンドン綺麗になって行くのを見た時にときめいたんです。なんて素敵なんだろうって」

 ふふ、と小さく笑って続ける。

「俺もあの世界に行きたいって思ったんです。だからいろんな人に笑われたけど、こうしてメイクに携われる仕事に就くことが出来たんです。存分にメイクも出来るし、毎日楽しいです」

 そう笑うルカさんはとても綺麗だった。メイクだけでなく、纏っている空気も含めてすべてがキラキラと輝いていて。

「そうだ、今度マスターにもメイクをお教えしましょうか?」

「え」

 眉毛を整えるくらいはするけど、メイクはちょっと・・・どうかな。

「マスターもメイクすればもっと素敵になれると思いますし。あ、なんなら俺が今度メイクを」

「いえいえいえいえ、そんな申し訳ないですし」

 俺よりもミケに教えてあげて、とつい喉まで出かかってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る