THE GROUND ZERO Chapter4
第11章 終焉の一撃
第11章 終焉の一撃【1】
レジスタンスとマグナブラの小隊が衝突したあの日から、四日が経った。
ここ近日は、いつレジスタンスがマグナブラへと侵攻し、全面戦争が始まるか分からないといった超緊張状態が続いており、正直気が気で無いような日々が続いている。
激戦地となる可能性が高いこのマグナブラ荒野も、ここ数日は全く人通りも無く、その荒野のど真ん中にあるゾフィさんの宿に宿泊していた旅人達も、ほぼ全員避難してしまい、宿の中は空室だらけになってしまっていた。
唯一の宿泊客といえば、僕とマジスターとルーナのヘイトウルフのメンバーのみ。まるで貸し切りのような状態だ。
モチロンここが危険なのは十分僕達も承知している。しかし承知の上で、僕達はこの危険地帯に泊まり込んでいた。
僕達は、この戦いの行く末を見届けなければならない……この戦いの結果次第で、僕達の今後の行く末が決まってしまうからだ。
マグナブラが勝利すれば、この地方からはマグナブラの反乱分子がいなくなるため、マグナブラによる完璧な統治が行われることとなる。そうなると僕達は……というか、特に王族暗殺の容疑で指名手配を掛けられている僕は、この地に留まることが困難となるため、別の場所に移動することを余儀なくされる。
しかしまあ、僕達ヘイトウルフとしても、ずっと目の前に強大な敵の居る場所に留まっている気は無く、もっと組織を拡大するために外へ出ようとは画策していたので、特に都合が悪くなるという感じにはならない。
むしろレジスタンスが勝利した時の方が、僕達としては厄介なことになると想定している。
レジスタンスが勝利すると、このマグナブラはレジスタンスの国……つまり、暁の火に反する非同盟国の国となってしまう。
そうなるとここを中心に非同盟国が立ち上がり、同盟国と非同盟国による、世界中を巻き込んだ大戦が起こることが予測される。そうなってしまっては、僕達ヘイトウルフが新たな勢力として出張るのはかなり困難となってしまう。
だったら対暁の火として、非同盟国とヘイトウルフが手を結べば良いじゃないかと考えてしまうかもしれないが、しかしその先にあるモノが、僕達と非同盟国とでは異なるのだ。
特に一部の非同盟国のように、僕達は魔石エネルギーの使用については反対していない。ただ、暁の火がそれをダシに全てを牛耳っているのが気に食わないだけであって、魔石エネルギーは今や、この世界になくてはならない物となっているからだ。
その辺の思想が異なるということもあり、そしてレジスタンスのように、非同盟国の傭兵のような扱いとなることも、僕達は嫌っているからな。
僕達は、僕達の意思でしか戦わない。僕達は犬じゃなく、狼だから。
まあそんなわけで、世界の、そして僕達の運命の選択をも握っているこの一大決戦を、僕達は間近で見守るため、そして、ゾフィさんの作ってくれる飯がとにかく美味しいので、この四日間ここにずっと腰を落ち着けていたのだ。
しかし腰を落ち着けていたからといって、何もしていなかったわけではない。
マジスターは四日前のあの日、あの沈黙の戦場で手に入れた無線機で、どうにかしてマグナブラの無線を傍受できないか試行錯誤を積み重ねている。
昔使った周波数を入れてみたり、もう当てずっぽうでナンバーを入れてみたりと、かなり地道な作業だが、しかしこの無線が傍受できればマグナブラの作戦内容を知ることができるため、僕達としてはかなり優位に事を進めることができる、重大な作業でもあるのだ。
そして僕はというと、あの日にジョンから受け継いだ拳銃を使いこなせるようになるため、晴天の荒野で、朝っぱらからルーナの厳しい指導を受けていた……いや、今も受けている最中だ。
「う~ん……」
ルーナは僕の射撃を見て、腕を組んで唸っていた。
五十メートル先には、ゾフィさんの宿の倉庫から発見した木の板を使って、簡易的に作った練習用の的が六つランダムに並んでおり、僕はそれに向かって射撃を行っていた。
的には全弾命中。パーフェクトだ。
なのに、何故か彼女は不機嫌な表情を浮かべていた。
「あのルーナ……何か僕の射撃に問題でもあったかな?」
僕はそんな状態のルーナに尋ねる。扱いとしては、今にも爆発してしまいそうな爆弾を解体するかの如く、慎重に。
「……射撃に問題は無いわ。むしろ完璧」
「えっ!? じゃあなんで……」
「気に食わないのよ!」
「気に食わない?」
「そう! なんで射撃訓練を始めてたった四日した経ってないのに、こんな完璧な射撃ができるようになるのよっ!」
「厳密には、一日目は的作りでほとんど潰れちゃったけどね」
「それなら尚更よっ!!」
彼女はキイイイイイイッ! とか、なんでなんで! と地団太を踏みながら、怒りを体全体で露わにする。
やはり爆発してしまったか……最初はイキナリ憤怒する彼女に戸惑っていたものだが、今となってはなんとなく、彼女の爆発の予兆は感じ取れるようになってきた。
「まあ僕だってズブの素人じゃないわけだし、たまたまこうなることもあるさ」
「じゃあなに!? わたしはそのたまたまに抜かされそうになっているってわけ?」
「いや……そういう意味で言ったんじゃ……」
しかしまだ、その暴発を上手く収める方法までは体得できてないけれど。
「もういい! アンタの練習ばっかりしてたら、アンタばかり強くなっちゃう! 今度はわたしの練習に付き合いなさい!!」
「ええっ!? ルーナは今は僕の教官だろ? 教える側が教えられる側になるって……」
「問答無用っ! これまで大人しくちゃんとアンタに射撃のスキルを教えてあげたんだから、今度はアンタのその才能をわたしに教えなさい!」
「才能を教えるってそんな無茶なっ!!」
才能は、その個人が生まれたその瞬間にのみ与えられる、その人だけが持つ唯一のものだからな。
そんなものを伝える手段など、この世に存在しない。もし、僕達人間を構成する物質のようなものが見つかり、それをコピーする技術が生まれたら、もしかしたら話は変わるかもしれないが。
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