キャラクターステータス 第二部その1




※はじめに。

 本作、ソーサラーシューターズは三度の完結を迎えた作品です。

 新人賞に投稿した初稿、個人ブログに上げるために加筆した第二稿、そしてカクヨムに投稿する上で更に加筆した第三稿。それぞれ以下のような変更点があります。



 初稿………第一部の1章と2章、7章、第二部の1章と最後のクロア戦のみの構成。登場キャラはコウヤ、テンカ、キサキ、チハル、タカミ、クロア、センリの7名。10万字前後。


 第二稿……第一部に3章と4章を追加。ここで初めて龍宮ハクアと國見キリエが登場。第二部では彼女たちの出番があるシーンを追加。あと忌部イノリもここで登場。30万字前後にまで増量。


 第三稿……今回。第一部において5,6章を加筆し、アキラとシノブを追加。また、第二部では新たなライバルとして遠宮キヨネと神夜カザリを登場させ、学院側の敵として明里宗近を追加。最終的に75万字前後となる。



 上記の通り、初稿では存在しなかったキャラクターをどんどん追加した結果、かなり長大化したシリーズとなります。そのため、キャラ語りをしている中で第何稿という単語を出すことがあるかもしれないので、先に紹介をしておくことにします。


 それでは、最後のあとがき代わりの設定語りをよろしくお願いします。




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○鏑木鋼夜コウヤ

 魔力性質 固形

 ステータス

 魔力総量C 魔力出力C 魔力制御B 魔力耐性D 精神強度B 身体能力B 魔力感応D  術式構築C 



 本作の主人公。

 第一部の頃はただの素人だったが、第二部になって格段に成長した。とはいえ、ステータスだけを見れば及第点は越えているものの平均か少し劣るような能力値であり、あくまでシューターズに限って優秀というピーキーな魔法士。

 注目するべきは魔力制御のBで、魔法を扱う際の魔力配分の誤差が少ない。これは、シューターズにおいてマイナス得点を得ずに攻撃するために習得した技術である。発動中の魔法への継続制御が若干低いのでB判定に落ちているが、自身の魔力のみであればA判定でもおかしくない程度には完璧に制御できている。

 また、精神強度もBであるため、霊子体が壊れにくいという利点を持つ。本来Cあれば十分な項目なので、学生としては破格の評価。なお、ウィザードリィ・ゲームのルールにおける精神強度の最高値がBであるため、それ以上の評定でも必ず設定上Bにまで落とされる。鏑木コウヤの場合、彼の精神性が如実に現れているといえる。


 ソーサラーシューターズにおけるその戦術眼は図抜けており、予選では多くの学生や教師陣を驚かせた。それらは二年間の海外留学で鍛えた技術であり、実際に大人のプレイヤーの間で揉まれて培ったものでもある。



 物語としての立ち位置としては、見知らぬ競技に魅入られ、挑戦していく主人公。

 第一部では子供であることと素人であることを強調し、精神的に成長することをメインに据えていたのだけれど、第二部(オリエント復学以降)からの彼は、成熟した青年が他のプレイヤーと同じ土俵で競技に挑む、という姿を描くことになった。第一部に比べて大人びた様子を見せるように努力したのだけれども、成功していればいいなぁと思う。

 

 作中で何度か言及されているとおり、かなり極端な精神性の持ち主であり、危うい一面がある。

 彼の偏執性は『物事への執着』。普段は何物にも必要以上の興味を向けない代わりに、これと決めたものに関しては異常なほどの執着を見せる。これは、彼が生きる過程で自然に身に着けたものであり、何らかの外的要因や異能などの影響があったものではない。純粋に彼の内面が育てたもの。だからこそ、國見キリエは数いる人物の中から彼を『異常者』と断定した。

 集中力が高く習熟が早い反面、自身の不調や周囲のトラブルすらも顧みない危険性が存在するため、常にストッパーとなるべき誰かが必要となる。海外生活においては、龍宮ハクアがその役割を果たしたおかげで、急激な成長を遂げることが出来た。


 あえて『天才ではない』という強調をしているのは、別シリーズ『ウィザードリィ・ゲーム』の久能シオンと同じコンセプトではあるのだけれど、シオンは他人を理由に自分を追い込むのに対して、コウヤは自分で自分を追い込むので、その成長の仕方には違いがある。

 端的に言えば、コウヤは技術の習得を報酬とし、シオンは成果を報酬とするといった違い。競技者としてはコウヤの方が上であり、研究者としてはシオンの方が上という違い。

 余談だが、魔法競技の話をする上でシューターズをメインにした理由は、シオンがプレイする上で一番難があるからという理由がある。シオンは魔法式の起動に恐ろしく時間がかかるので、魔法士が点を取らないといけないシューターズとは相性が悪いのである。



 ちなみに、コウヤの基本設定は初稿から第三稿まで一貫して変わっていない。

 他のキャラは多少なりとも変化が起きているのだけれど、彼だけは全くブレずに物語を駆け抜けてくれたので、彼のおかげでいろんな設定変更をしても話の軸がブレなかったとも言える。


 野球をできなくなった代わりに魔法競技の世界に入った彼だが、今でも野球のことは好きでいる。

 アメリカにいたころも、最初の年は地元の野球チームに混ぜてもらって遊びでバットを振っていた。二年目はシューターズに集中していたため離れていたが、日本に戻ってきてからは暇があればボールを投げている。終章時点でアマチュアの社会人チームに混ぜてもらって試合を楽しむようになったとか。

 競技選手としてのシューターズと、趣味としての野球。どちらも捨てずに、好きで居続けることが鏑木コウヤという少年が手に入れた答えだった。



 主な魔法

・『身体強化』

 魔力を用いて自身の肉体の活動能力を引き上げる。彼の場合は、物理属性の魔法で身体の各部位にエネルギーを注入することで、物理的に膂力を上げている。

 他にも、概念属性でその部位の在り方を強化したり、霊子属性で耐久性を上げたりといった魔法式も使えはするのだが、単純に運動能力を上げる上では、物理属性での強化を好んで使っている。


・『限定透視』

 自身の『目』を概念的に強化し、視点を別の場所に置く術式。

 これを複数の場所に設置することで、他方位から対象を観察して狙撃することが出来る。本来は、狙撃してポイントを作成し、そのポイントに『偽眼』を置くことで発動させるのだが、本編では数メートル先に置くだけの利用だった。


 『ミスターフルスイング』

 コウヤが趣味で作ったネタ魔法。

 アメリカでの腕の治療中、手術が成功して腕は動くようになったものの、まだ経過観察で安静にしなければいけなかった時期に、霊子庭園で野球の真似事がしたいと思って開発。手に持った棒状のデバイスをバットに見立て、ボールに見立てた魔力弾を打ち返すという遊びをやっていた。その開発にはキリエも付き合っている。と言うより、キリエとの雑談の中で思いついた。この魔法を銃型デバイスで使ってキリエと遊んでいたところ、ハクアに見つかってガチ目に怒られたことがあるとか。

 実態としては、魔力攻撃に対して反射の魔法をぶつけ、相手に跳ね返すというもの。ネタ魔法ではあるものの、その反射の範囲と精度がかなり高いため、土壇場でのトリックプレイとして使っていた時期があった(なお、相手プレイヤーの実力が上がるに連れて、まともに使えなくなっていったためお蔵入り。あくまでネタ魔法である)


 三色マント

・『偏向する青き外套オーバーデフレクター

 魔力で編んだマントを作り出し、魔法攻撃の軌道を逸らす術式。二工程。

 薄い青色のマントは、全身を覆うように顕現し、コウヤの意思によって大きさを変えたり動かすことが出来る。魔法攻撃を逸らすたびにマントは面積を小さくしていき、作成時に使った分の魔力が尽きると消滅する。


・『無貌の枯れ草オプティカルステルス

 枯れ草色のコート。その名の通り、光の反射を操作して自身の姿を見えなくする魔法。

 物理的に見えないだけなのだが、ハクアの持つ『無貌の理』の能力を参考にして、他者の視点から認識されづらくするという魔法式を組んでいる。およそBランク程度の認識阻害であり、魔法士相手であれば接近しない限りコウヤの姿を認識することは出来ない。そのため、他のマントと違ってこれだけは四工程の魔法式が必要。

 ちなみに、ハクアから『無貌の理』のことを告白されたのは付き合い始めてからのことで、親族以外の人間にそれを教えたのははじめてのことだった。それくらいハクアはコウヤに心を許していた。


・『闘牛士の赤布ムレータマタドール

 魔力で編まれた赤い布。『青き外套』と同様、コウヤの意思に応じて大きさを変えることが出来るが、顕現できる時間は十秒程度。二工程。

 その赤い布の表面が受けた物理的衝撃のベクトルを横にそらす能力であり、直撃を避けることだけに特化した魔法。主にファントムなどを相手にした時に、瞬殺されるのを避ける目的で開発した。広範囲攻撃であってもタイミングが合えば回避が可能だが、連続攻撃や長時間効果が残るものに対しては脆弱な一面を持つ。




○冬空天花テンカ

 原始『停止冷原』

 因子『氷雪』『固定』『棘』『吹雪』『熱』

 因子五つ ミドルランク

 霊具『白雪湯帷子』

 ステータス

 筋力値E 耐久値D 敏捷値B 精神力C 魔法力B 顕在性C 神秘性C


 本作のヒロイン。

 第一部のときには「は? 何いってんだこの作者」と思った方も、第二部を読めば納得していただけただろうと思う。むしろ役割としては主人公と言っても過言ではないくらいに、後半は大活躍してくれた。弾幕娘だとか二丁拳銃娘はお呼びではないのですわよ。


 雪原の神霊。

 元は『スノーフィールドの停止冷原』と呼ばれるB級霊子災害。一定区間に存在する全ての生命活動を停止させるというもので、擬似的な時間停止ともいえる。春になると雪解けとともに内部の時間も動き出すのだが、死傷者は一人も出さないあたり、災害のもととなった存在のお人好しさがにじみ出ている。


 霊具である『白雪湯帷子』は、彼女が着ている白裝束の湯帷子のこと。この湯帷子自身も冷気を発生させる能力があるのだが、役割としては冬空テンカ自身の身体から漏れる冷気の制御。これにより、出力を調整して冷気を一点に集中させたり、周囲に大きく拡散させたり出来る。そのため、この湯帷子を脱いだ状態では細かい冷気の調整ができなくなり、多くのスキルが使用不能になる。

 第二部における冬空テンカは、大きく成長している。近接能力は相変わらず低いのだが、敏捷や魔法力がBランクあるため、第一部以上にサポート型に仕上がった他、自身でも中距離でのファントム戦を行えるようになった。

 強さとしては、近接戦闘型のファントムには正面では負けるが、中距離での耐久戦が可能となった。大技を幾つか持っているため、耐久値や顕在性の低い相手に対してはかなり優位に立てるという利点も持っている。その脅威は渡良瀬ルル戦で遺憾なく発揮された。



 キャラの役割としては、主人公の相方。

 お嬢様言葉を話すキャラを一度でいいから使いたかったのである。


 初期設定、それこそ初稿以前は、テンカはもっと別の口調で別の性格だった。というか、なんか書いてるとウィザードリィ・ゲームのの七塚ミラになってしまったので、こりゃいかんと思い直して書き直した結果、いつか使いたかったお嬢様キャラを採用することにした。

 ちなみに、お嬢様言葉はキャラを作ってる。本人曰く、「淑女とはこのような話し方をするものなのでしょう?」との事。どこで覚えたのかというと、まあ多分、彼女の元の人格になった引きこもり少女が、お淑やかで綺麗なお嬢様になりたいと願った結果だろう。(お淑やか?と疑問を覚えると怒られる)


 キャラの方向性としては、第一部は小生意気なお嬢様。第二部はデレッデレのデレ娘。本来は気高いお嬢様キャラを目指していたのだけれど、なぜか第二部はデレデレになってしまった。

 そうなってしまったのは、おそらく第一部の最後の別れのところ。「素敵な殿方を、バディにする」のところのセリフがスルッと出てきてから、完全にその方向性が固まった。あそこのテンカは、正直自分で書いていてすごくドキドキするくらい魅力的だったと思う。


 第一部では、十二歳くらいの少女の姿で着物姿だったのだけれど、第二部は急成長して、二十歳くらいの外見になっている。だからこそ、敵に対して挑発的な態度をとったりはするものの、精神的にはかなり落ち着いている。彼女の言う『淑女』の理想像ではある。

 コウヤの女性関係に対しては、わずかに嫉妬を見せはするものの、人間とファントムという種族の違いを理解しているので、束縛しようとはしない。テンカにとってコウヤは唯一無二のバディであり、隣に居られればそれでいいと思っている。

 しかし、コウヤの危機や、コウヤを精神的に追い詰める存在に対しては容赦をしない。具体的に言うとアバズレ女への敵意や、影法師への攻撃性など。


 彼女の前世の前世に当たる、『スノーフィールドの停止冷原』のきっかけになったのは、自室で衰弱して凍死した少女。

 両親はそれぞれ外に愛人を作り寄り付かず、家庭はまともに機能していなかった。また学校ではいじめられ、性的な暴行を受けて引きこもった。毎日を過ごすごとに、時間が止まればいいのにと思い続け、身体の動きが鈍くなっていくのを心地よく思っていた。そうして、死の瞬間まで『停滞』を望んだことが因子となり、停止冷原を産むことになる。


 その記憶を持つテンカにとって、『前に進もうとする人』は嫉妬の対象だった。


 それはかつての少女ができなかったことで、その強さを持つ人が羨ましく妬ましかった。だからこそ、最初はコウヤやキサキに対して当たりが強かったのだけれど、次第に彼らを好きになっている自分に気づくことになる。気づいてしまってからは、ずっと彼らの側に居たいと思うようになり、それが彼女の因子を成長させるきっかけとなった。

 原始分化については、ファントムの成長には欠かせないものであるのだが、本来は数年かけてゆっくり行うものを、彼女は急激な精神の変化を起こしてしまったため、自身の器を超えた因子を生み出すことになり、休眠が必要になった。

 おかげで、休眠後はかなりの成長を見せることになる。第二部における彼女の在り方は『停止』だけでなく『情熱』が加えられており、擬似的に矛盾を体現する能力となっている。


 今回の第三稿において、格上との戦闘を追加されまくった結果、後半はその全てに勝利するというとんでもない戦績を叩き出してしまった。まあ、ヨハンとセンリに関してはシューターズのルールだからこそ勝てたという所はあるが、ルルに関しては圧勝だったので実力以上の戦果と言える。

 ちなみにそのことについて尋ねると、テンカは「愛の力ですわ」とドヤ顔で答える。



 超余談

 シューターズの初稿を書いたのが三年前、2016年のことだけど、その時にキャラの名前を決めようとして、「どうせならあまり被らない名前にしよう」などと思った。

 コウヤはともかくとして、ヒロインの二人については名前自体がちょっと違和感あるけど呼び慣れたらしっくり来るものを、と考えた結果、キサキとテンカが出来上がったわけだけど……まさかその二年後、某アイドルゲーで字は違うけどテンカちゃんが出てくるとは思いもしなかったのである(マジでどうでもいい余談)

 ちなみに、テンカは『天花』と書くけど、これは雪の別称。別案として、ロッカちゃんというのがあったけれど、カタカナにした時のみやすさを重視した。



・パッシブスキル

 『氷雪』・・・『氷雪の操』

 能力低下攻撃に対する抵抗力を持つ。Cランク以下の魔法力を無効、Bランク以下を軽減する。彼女の体力が下がるごとに、この抵抗力は弱まる。

  

 『棘』・・・『氷筍つらつら』

 氷の棘を創りだす能力。自身に触れる者があった場合、自動的に氷の棘が身体から飛び出す


 『固定』・・・『黎明の処女雪』

 外気が低下している場合、身体的損傷を氷で修復し、体の形を戦闘開始前と同等の状態に戻す。蓄積ダメージや消費魔力は回復しない。


 『吹雪』・・・『雪に白鷺』

 気温が低く、更に視界が悪くなるごとに、自身の存在を認識されにくくするパッシブ。

 『凍えろ、吹雪よ風に舞え』と併用することにより、場の仕切り直しを行ったり、姿を消したりすることが出来る。


 『熱』・・・『燃えろ、思念よ煌々と』

 外気が低くなればなるほど、ステータスが上昇していくパッシブ。各ステータス最大2ランク、全ステータスに割り振る場合、1ランクまで上昇。また、相対的に意識が加速していく。



・主なアクティブスキル

 『凍れ、楔よ永久にパーマフロスト・アイスエッジ

 氷の槍を生成して射出するアクティブスキル。テンカのメインスキルで、ほぼ全ての試合に持ち込んでいる。


 『凍れ、大地よ聳え立てフローズン・エドマ

 冷気を立ち上らせ、氷の壁を作るアクティブスキル。低気温において、Bランク相当の防御力を発揮する。また、視界を塞ぐという役割をもたせることもあり、よく利用している。


 『凍えろ、吹雪よ風に舞えブリザード・ホワイトアウト

 吹雪を起こす能力。効果時間と効果範囲によって、消費魔力が変わる。


 『凍えろ、氷河よ彼方までアイスエイジ・グレイシャー

 手に触れた対象を凍らせるアクティブスキル。凍らせた後、思いっきり衝撃を加えて叩き壊すことが出来る


 →『氷床よ、星を覆い殺せクライオジェニアン・スノーボールアース

 『氷河よ彼方アイスエイジ』をより広範囲に、効果をより強力にしたアクティブスキル。膨大な魔力消費の代わりに、寒波が届く範囲全てを氷床で覆うことが出来る。


 ちなみに余談。

 実は『氷河よ彼方アイスエイジ』と『星を殺す氷床クライオジェニアン』は元々別のスキルという設定だった。

 このスキルだけは第三稿で初めて出したのだけれども、ルル戦でなかなか派手な演出をしたので、センリ相手に使わないのはもったいない、と思ってセンリ戦を加筆する過程でテンカに使わせることにした。ところが、そうするとファントムのアクティブスキルは四つまでというルールを破ることになってしまった。

 第二稿の時点では『氷の槍アイスエッジ』『吹雪ブリザード』、決め手として『時間停止アブソリュートゼロ』と『氷河よ彼方アイスエイジ』というのがスキル構成で、ここに『星を殺す氷床クライオジェニアン』を入れるとどれか外さなきゃいけない。最後に大型エネミーを倒すのを『星を殺す氷床クライオジェニアン』にするというのも考えたんだけれど、そう何度も連発すると特別感が薄れるし、何より設定的にはむちゃくちゃ魔力を食うスキルだから、二度目使ったらそこで霊子体が維持できなくなる……とか色々考えた結果、『氷河よ彼方アイスエイジ』の上位互換ということで落ち着いた。

 この話からも分かる通り、この作者は結構ライブ感でバトルを描いている。盛り上がればいいのである。一番ライブ感がすごかったのはルル戦であることは言うまでもない。

 余談終わり。



 『止まれ、世界よ凍々とアブソリュート・ゼロ

 自身の掌握範囲における全ての運動エネルギーを停止させるスキル。

 現実世界においては、物理属性におけるスカラー量を瞬間的にゼロにすることができる。

 霊子庭園のような隔絶された空間においては、十秒間のみ擬似的な時間停止を行えるが、自身も動くことができない(思考活動は可能)


 →『燃えろ、思念よ煌々とパッション・ファーザー

 情熱よPassion更に先へfurther

 アブソリュート・ゼロ発動時、『熱』のパッシブスキルが変化する。

 自身の意識だけを情報界に直結させ、停止中の現象に干渉する能力を得る。上位次元へとのし上がった精神は、物理的な束縛から解き放たれて行動できる。その時の活動は全て熱量として消費される。

 擬似的な瞬間移動となるが、代わりに顕在性と耐久性が2ランク下がる。活動した後は全身から熱を放出するため、氷の能力を低下させて全身から蒸気を噴出することになる。


 テンカの『先に進んだ彼らに追いつきたい』という願いが形になったスキル。『熱』の因子は元々、時間停止に対応する形で発現した因子であり、普段のパッシブスキルはその副産物に過ぎない。


 ちなみに、ルル戦で『朧月』を破ったのはこの能力。

 瞬間的に『時間停止アブソリュートゼロ』を発動させて、別位相に移ったルルの姿を上位次元から捕らえて引き戻した。ルルからするとマジで何をやられたか分からず恐怖しかなかっただろう。




○比良坂綺咲キサキ

 魔力性質 無形 流形

 魔力総量B 魔力出力C 魔力制御B 魔力耐性D 精神強度D 身体能力D 魔力感応A 術式構築C


 神咒宗家の一角、比良坂家の長女。

 コウヤのライバルだが、第二部においてはヒロイン的ポジションにいいた(ヒロインはわたくしですわよ!とテンカがアピールしているので、あくまで『的』ポジション)


 魔法士としての才能はかなり極端で、ステータスによって高低が激しい。魔法を扱う才能は高いのだが、打たれ弱いという一面を持つ。

 その中でも魔力の感応能力が飛び抜けている。評定Aというのは、学生としては破格の評価であり、一般でもゲームのプロプレイヤーや軍事関連の戦闘職でなければそうそうお目にかかれるものではない。

 彼女の場合は、『弱体視の魔眼』によって外界とのつながりを強固にしてきたからこそ、魔力の感応能力が異常に高いという理由がある。そのため、彼女は他者の術式に干渉してその効果を乗っ取ると言った魔法も扱うことが出来る(なお、できるだけで、本人はあまり使いたがらない)


 他のステータスについては、魔力総量と魔力制御のBは、訓練の賜物。本人は細かい作業があまり得意な方ではないのだが、膨大な魔力をいっぺんに扱えるという点で制御能力を評価されている。実際、『メテオレイン』のような大技を連発できるというのは、それだけで強みと言える。

 なお、魔力の精密制御は苦手であるのだが、シューターズにおける精密射撃のみは完璧に仕上げている。どれだけシューターズが好きなんだ。


 身体能力と精神強度が低いため、霊子体での活動は実を言うとあまり得意な方ではない。これは魔眼の制御に多くのリソースを割いていることが理由である。魔眼が暴走した結果、再起不能となったのは仕方ないといえる。



 第二部での役割は、コウヤの戦う理由。

 コウヤがひと足早く競技で結果を出した時に、憧れた少女は挫折を味わっていた。その状況における競技へのスタンスを問うのが第二部のテーマでもある。


 寝ても覚めてもシューターズのことを考えているような子で、外面は可愛いんだけれど、やること成すこと荒っぽく、近くなればなるほど憧れが消滅する残念系女子。

 とはいえ、女の子らしさはちゃんとあって、女扱いされないと拗ねる一面もあったり。


 神咒宗家の一角、比良坂家の本家筋。要するに本当のお嬢様。

 なのだけれど、現在は半分絶縁状態にある。

 比良坂家は霊感呪術の家系で、死霊を使ったり動物霊と交信したりといったシャーマニズム的な呪術が得意な家である。日本神話の黄泉比良坂の伝承から、『生死の境界』に干渉ことを重視しており、結界内に『黄泉』を再現することで生者の侵入を拒むという結界術を伝えている。

 キサキの場合、霊的存在を情報体として視認できたところから始まり、その死霊の情報密度を分散して除霊したことで、『弱体視の魔眼』に完全に目覚めた。

 それが小学校低学年くらいであり、そこから家での立場が大きく変わることになる。


 比良坂キサキには、その幼少期の経験から、自罰的なところがある。

 自分を原因として親族が殺し合い一歩手前の争いをしたのを目の当たりにしているので、揉め事や悪いことが身近で重なると、どうしても『自分が悪いのではないか』という不安を覚えてしまうのだ。

 また、旧態依然としたところのある比良坂家では、分家も含めて良く『女子が』という言い方をよくしており、肩身の狭い思いをすることが多かった。そんなキサキが強迫観念じみた不安から解消されるには、『自分が悪い』と認めてしまうことが一番楽だった。一種の防衛機制であり、『悪い』と認めることで自分を正当化している。

 たとえ自分に原因がなかったとしても、自分が悪いのだと考えれば、その場における問題を受け入れることができる。普段は無邪気に振る舞っているのも、やりすぎてしまっても『仕方がない』『私が悪いのだから』と、加害者としての自己正当化が行えるからだったりする。


 ただし、第二部における魔眼暴走に関しては、キサキ側には非がまったくない事故だったため、自己正当化をうまく行えず、精神的に不安定な日々を送ることとなった。

 これまで自分が悪いと思い続けていた彼女が、初めて『他者』を憎んだため、そのギャップに心が追いつかなくなった。その結果が自殺未遂であったりする。

 彼女にとって一番つらかったのは、被害者としての自分を受け入れられないことだった。『コウちゃんに失望される』という言葉も、他者から見られる自分というものを意識しすぎたからこそ出てきた言葉だったりする。

 自分を見る周りの目が、哀れみに満ちているように思えて、憎くて仕方がなかった。そんな憎しみを覚えるたびに、『人を憎むなんて何様だろうか』という自己嫌悪に襲われる。その自己嫌悪から逃げようにも、自分が悪いという正当化も行えず、どんどん追い詰められていった。


 入院中の彼女はそういった感じでかなり不安定だったのだけれど、そんな折に、コウヤの優勝のニュースを見ることになる。

 その時に、素直に『嬉しい』と思えたことが、彼女にとっては救いでもあった。旧友の成功を喜べた。嫉妬や憎悪を覚えずに、ただ純粋に、その成功を祝うことが出来たのが、キサキの心を溶かしたきっかけでもある。

 ある意味、ソーサラーシューターズという競技に二度救われているのであった。


 ちなみに、彼女の目を治す技術について、『テクノ学園のユースカップで問題を起こした元神童』というのは、当然のことながら久能シオンと久我アヤネのことである。詳しくはウィザードリィ・ゲームの第三部のクライマックスを参照。


 第一部以前の序章と、終章後の後日談はキサキの目の治療が終了した時系列であり、元気にシューターズを楽しむ彼女の姿を見ることが出来る。キサキはこの後プロリーグに参戦し、選手としての情熱を失いかけた朝霧トーコと再会することになるのだが、それはまた別の物語である。




 主な魔法

・『流星射撃シューティングスター

 連続射撃技。三工程。

 それだけでは、単純に魔力弾を連続で射撃するだけの魔法で、せいぜいが魔力弾の弾道を操作できるくらいなのだが、バディであるタカミの視界を借り、なおかつ照準をロックオンする術式を加えることで、えげつない命中率を発揮する。フィールドが見通しの良い場所かタカミの活動しやすい森林であるという条件付きではあるが、オープニングフェイズでこれをやられるとよほど対策を取らない限り完敗することになる。


 パーソナルギフト

・『弱点視の魔眼』

 ものの情報密度を見分ける瞳。

 情報密度とは、その存在が持つ概念的な強さのことである。情報密度が高いほど、多くの意味を持ち、大きな存在力を発揮する。


 彼女の視界は七色に色分けされ、全ての存在の情報密度を見分けることができる。色が濃くなるほど情報密度が高く、薄くなるほど情報密度は低い。また、暖色は元から持つ強度、寒色は加工された強度となる。

 この魔眼は、物質に限らず概念的なものにも作用する。一種の共感覚であるが、言葉や概念といったもの情報密度も『視る』ことが出来る。しかし、普段は日常生活に支障が出るので使っていない。

 本来はオンオフが可能な能力だったのだが、試合中の事故後、常にオン状態になっている。魔力消費はほぼないのだが、普段はメガネを掛けて見えないようにしている。

 発動中はかすかに瞳が輝くのだが、目立った色の変化はない。


 カニングフォーク

・『弱体視の魔眼』

 対象の情報密度を散らし、対象を脆くする瞳。

 見つめる時間、または込めるマナの量によって分散される情報密度は変わっていく。例えば、『硬い』コンクリートならば、『硬さ』を分散して『脆く』する。その本質は高度な情報処理であり、存在の持つ理屈を全て紐解き丸裸にすることでその在り方を分解する。

 消費する魔力に対して、効果が破格なので、かなり有用なカニングフォークであるといえる。

 発動中は瞳が琥珀色に輝く。



・『死誘しざないの魔眼』

 暴走したキサキの魔眼の別名。

 見つめたものを消滅させる死の瞳。

 目を開いているだけで自動的に周囲のマナをかき集め、自身の魔力を消費した上で視線の先にあるものを塵にして消滅させてしまう。情報圧汚染によって『弱体視の魔眼』の制御が効かなくなったために起きた現象であり、今はその効果を失っているものの、いつ再発するかわからない。

 発動中は瞳孔が開き、深淵の如き暗黒色が瞳を染める。


 この能力の設定は、作者としてはかなり古いもので、実は元々別作品で使っていた設定だった。世界観自体も違うものだったんだけど、その作品はもう話として広げるの難しいなと思っていたところだったので、せっかくだから設定流用してやろう、と思ってキサキの能力になった。この魔眼を前提として、弱点視と弱体視の能力を作った感じ。

 魔眼っていう能力はそれだけでロマン。作者は『死誘』と書いて『しざない』と読ませるのを思いついた瞬間、「勝ったな!」とか思ったとか。




○矢羽鷹見タカミ

 原始『鷹と矢』

 因子『狩猟』『弓矢』『鷹の目』『回避』

 因子四つ、ミドルランク

 霊具『鷲尾の矢羽』

 ステータス

 筋力値C 耐久値D 敏捷値B 精神力C 魔法力E 顕在性B 神秘性C



 キサキの契約ファントム。

 久良岐魔法クラブでインストラクターをしている大人のお姉さん。身体のラインが見えるスポーツウェアに身を包み、今日も今日とて彼女目当ての男性会員を魅了する。ちなみに分かってやってる。

 第二部では大きな出番はなかったが、番外編『天空の王者』では主人公を務めた。


 キャラコンセプトは、大人のお姉さん。 

 コウヤにシューターズのことを教える時に、大人のキャラが欲しかったので作ったキャラクター。本当はキサキのバディは別に作るつもりで、タカミは普通の人間の予定だったんだけれど、あまりキャラが多すぎると制御が難しくなるので一つにまとまった。

 バディではあるが、要所でキサキやコウヤたち子供に道を示す大人としての役割を果たしている。特に第一部においてはコウヤの悩みに対する答えを示している。


 発生して二十年くらい経つファントム。

 作中において、ファントムの寿命は因子が力を失った時という定義をしているが、基本的に何のしがらみもないファントムは、十年くらい存在したら次第に大地と同化しはじめるので、二十年、三十年クラスになると長生きの類ではある。

 彼女が存在を続けている理由は、第二の人生が心地よいからというのもあるのだが、キサキとのバディを続けたいからというのが一番にある。キサキとの出会いは、ちょうど彼女が比良坂家から絶縁された頃になるのだが、そんな彼女にシューターズの手ほどきをする内に、情が移った形である。

 キサキにとってはお姉ちゃんであり、家族のようなものと思って接している。


 その原始は『鷹と矢』というイソップの寓話から。

 彼女のもととなった存在は、森の主であった大鷲。バードストライクによって飛行機と激突して死亡したその大鷲は、死後その肉体を剥製にされて飾られることになった。それを触媒に、地震と同様に『事故死』した霊を集めて発生したのが彼女であり、そこから『鷹と矢』という原始が発生した。

 人格パターンとして人間霊の精神も取り込んで入るものの、あくまでベースは動物霊であり、彼女の記憶にある前世も、大抵は森の主として大空を舞った記憶である。


 今の生活には満足している。

 しかし、時折彼女は、青空とともにかつての自分を思い出す。何のしがらみもなく、大空を自由に飛び回っていたあの頃を。

 透き通るような青空の日、空を見上げ、懐かしさに目を細める彼女の姿を見ることが出来るのだった。



 ちなみに少女趣味のきらいがあり、人に可愛らしい服を着せることを生きがいにしている。というのも、彼女自身は長身でスタイルもいいため、どうしても可愛い服が似合わないので、代わりに人に着せて満足しているのである。

 被害者はキサキとテンカ。キサキに関しては、さすがに中学に上がった頃からある程度落ち着いた服装を選ぶようになったのだが、それでもワンピースやらレースブラウスやらばかり買って着させられていた。なので、第二部のデート編でキサキがパンクファッションをしていたなどと聞いたら卒倒しかねない。


 スキル等は第一部ステータスから変更なし。




○泉千晴チハル

 魔力性質:無形

 魔力総量D 魔力出力C 魔力制御D 魔力耐性E 精神強度B 身体能力C 魔力感応E 術式構築B


 キサキの従兄弟であり、コウヤの幼なじみ。

 第一印象が胡散臭い糞ガキというなんとも困ったやつ。とにかく何事に対しても適当で、何気ない行動が他人同士の面倒事の引き金を引くことが多い。

 彼いわく、「どうせいつか知ることなら、今知っても同じだよね?」とのこと。同じじゃねぇよと何度かコウヤはマジツッコミしている。そうするうちに仲良くなった。

 案外付き合いはいいやつで、冗談は通じるし、悪事を率先してはやらないが、イタズラを提案すればさらに強化して参加するという、友人としては楽しいけれど敵に回すと面倒な奴。


 とらえどころのない振る舞いを良くするが、その内面は案外思慮深い。自分の言動がどういう結果を生み出すのかをわかった上で、彼はあえてそれを口にしている。そうして、『こいつなら仕方ない』というポジションを得ることで、軋轢を減らそうとしている。

 それは彼が親から教わった処世術でもある。泉家は比良坂家の分家で、バラバラの一族をとりなす役割を果たしている家である。だからこそ、息子であるチハルもそうした仲介役としての心得を幼いころから教えられていた。

 とはいえ、口の軽い男というポジションはチハルが自分で判断して作り上げたものであり、親としては教育に失敗したんじゃないかと思っているところがあるとか。


 第二部ではほとんど出番はなかったが、キサキにとっては誰よりも重要な人物。


 キサキのことは、親から言われて側にいる関係ではあるが、実はかなり肩入れしている。

 恋と言うには感情が落ち着いてしまっているので、兄が妹を見るような目で見ている。キサキの自罰的な精神性と、自己正当化を行う現実逃避なところなどもしっかり見ていて、その危うさを知っているからこそ、『彼女を守らなければ』という使命感を抱いているところがある。

 今回の第三稿で、キサキの自殺未遂に際してチハルがどういう行動を取ったかを加筆したのだけれど、実は第二稿の時点で構想していたものとは結構変わっている。

 元々は死にたがったキサキに対して「一緒に死んであげる」と言い放つ役どころだったのだけれど、キサキの心理描写を丁寧にした結果、もしチハルがその提案をしたらマジで心中しかねないな……と思い、方向性を変更。精神的に追い詰められたキサキに対して、チハルだったらどういう行動を取るかを考えた結果、ああいう形に落ち着いた。

 チハルにとってキサキは大切な家族であり、一生を捧げるつもりでいる。ただ、キサキはあれで精神的にお子ちゃまなので、彼の気持ちに気づくのは相当後だろうと考えられる。


 ちなみに、彼がテクノ学園に通っているのはなんとなくその場で決めた設定だったけれど、すごくしっくりきててお気に入り。実を言うとシオンたちと同学年。ウィザードリィ・ゲームの第二部から第三部の時系列は、ちょうどキサキが魔眼の暴走で入院して自殺未遂をした辺りになり、そのためにチハルはウィザードリィ・ゲームの方では出番がなかった、という裏設定。

 ソーサラーシューターズの時系列では、テクノ学園でももちろんインハイ予選が行われており、そこでチハルはアヤネと組んで色々悪巧みをする、みたいな構想もあったりするが予定は未定である。




○龍宮白空ハクア

 魔力性質:流形

 ステータス

 魔力総量B 魔力出力C 魔力制御B 魔力耐性B 精神強度B 身体能力B 魔力感応A 術式構築C


 龍宮クロアの妹。神咒宗家・龍宮家の次女。

 天才少女であり、作中において最高のステータスと実力を持つ。純粋な能力で言えば兄よりも遥かに高い。


 軒並み平均以上のステータスを持っているので、まったく隙のない能力を持っている。逆に語ることのないキャラクター。やれと言われて出来ないことがないくらい。その上、実戦経験も武者修行のお陰でかなり積んでいるため、同年代で敵う相手はほとんど居ないといえる。

 唯一兄であるクロアに対しては、マギクスアーツでのみ負け越している。もっとも、この兄妹の対決はなかばじゃれ合いに近いのであまり参考にならない。兄に認められたいと言いながらも、ハクア自身、兄に対して本気を出せていない自分を自覚している。


 存在しないアメリカ編のヒロイン

 初稿では存在しなかったキャラクター。第二稿で加筆した四章で初登場。


 キサキの見せ場と、コウヤの迷い、そしてシューターズのまともな試合を描きたいと思って作った四章だったのだけれど、第一部においてちょっとしたターニングポイントにもなったので成功ではあった。

 ちなみに続く第五章の土蜘蛛編では完全なヒロイン。というのも、第二部でコウヤとハクアが付き合うのは決まっていたのだけれど、二人の関係をもうちょっと深めたい(プラス、ハクアをもっと掘り下げたい)と思ったので、今回カクヨム版では新章を加筆することにした。ついでだからとキチガイ娘ことキリエとの因縁も作ったりして、第二部への導入はバッチリだな、とか思っていた。

 この加筆が、後に第二部の長大化のきっかけになるとはその時の作者は考えても居なかったのである……。


 ちなみにコウヤとはキスまでのプラトニックな関係。

 結構イチャイチャはしていたのだけれど、行き着くところまでは行ってない。そのあたり、実はお互い初だったりする。

 元からコウヤには一目置いていたハクアだったが、キリエの陰謀によって憔悴していく彼を見て、まるでかつての自分の自分を見ているようで感情移入してしまった。かつて実家で無理な訓練をさせられていた頃の自分を思い出し、そこから救い出すには、誰かの支えが必要だと思ったのがきっかけ。

 好き放題やってコウヤのオリエント行きを潰したキリエに、ハクアが食って掛かって宣戦布告する、という形。


 その部分だけちょっと書いてみた。



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「アンタの好きにはさせない。コウヤをアンタなんかに壊させない」

 食って掛かったハクアに、キリエはヘラヘラと笑いながら言う。

「何を怒っているんです? あなたはコウヤさんとなんの関係もないというのに」

「関係なくなんて、ない」

「へえ、ならどんな関係があるんですか?」

 嘲るように顔を歪めるキリエ。

「まさか、友達とでも? あなたのような『顔なし』が、誰かと友情を育めるとでも?」

 小馬鹿にするようなキリエの言葉に、ハクアは何も言い返すことが出来ない。

 彼女の言うとおり、ハクアは人間関係における感情が希薄だ。

 相手から友情を向けられても、自分が同じだけの感情を返せている自信がない。だって自分は、相手の顔が見えないのだから。

 顔のない自分。

 顔の見えない自分。

 そんな自分が、まともな人間関係なんて築けるわけがないことは、嫌というほど分かっている。

 けれど、それでも。

 この胸に抱いた思いは――彼の力になりたいという、この切ない思いだけは、きっと本物だから。

「私がコウヤの特別になる。アンタなんかにやらない」

 切なく狂おしいこの感情に、彼女は『恋愛』という名前を付けたのだった。


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 龍宮ハクアは、人の顔が認識できない。

 普段は生命力の形で人を認識しているのだが、たとえそれで見分けがついたとしても、顔が見えないことに変わりはない。

 相手の表情が見えない。相手の感情が読めない。相手が何を考え、何を求めているのか、それを察知する上で一番重要な表情が見えないということは、人間関係において致命的な欠陥である。彼女にとって、他人というのは、決して埋まらない溝があるのと変わらない。

 だからこそ、彼女は『わかりやすい』人間を好む傾向にある。ただひたすら、自分の目的に邁進する人間。それは例えば兄のような。比良坂キサキのような。そして――鏑木コウヤのような。

 そのシンプルな生き方を邪魔されているのを見て、ハクアは居てもたっても居られなかったのだ。


 こうして始まった交際であるが、最初は二人共『恋人ごっこ』を無理にやってお互いを慰めていたような状態だった。

 だからこそ、燃えるような恋心はなく、あくまで自然と相手を求める依存心だけが生まれてしまった。お互いにそれを心地よいと思いつつ、まずいと思ったからこそ、コウヤの復学をきっかけとして一旦距離を置くことに。とはいえ、最終的には二人共元サヤに収まるだろうと思っている辺り、通じ合っていると思われる。


 アメリカ編は簡単な構想はあるんだけれど、今回の第三稿でもいれることが出来ないくらい本筋から離れる内容になってしまうので、おそらくこのままお蔵入りになるだろうと思われる。まあ気が向いた時に短編という形で書いてもいいかなぁくらいには思ってる。




○風見ジュン

 原始『順風耳』

 因子『風読み』『鬼』『知見』『音』『魔術』

 因子五つ ミドルランク

 霊具『順風鉄扇』

 筋力値D 耐久値D 敏捷値E 精神力B 魔法力A 顕在性C 神秘性B


 ハクアの契約ファントム。

 『順風耳』という鬼神の逸話がファントムとして昇華されたもの。


 第二部では基本的に出番はなかったけれど、第一部のキャラステで内面の詳細を書いていなかったことを思い出したので、第二稿の時の設定をそのまま公開。


 キャラコンセプトはハクアの介添人。

 ハクアのお付きを考える時に、兄のクロアのバディが『千里眼』を元にしたファントムだったので、だったら『順風耳』でいいか、と思った。

 ただ、順風耳って逸話があんまりなくて、どういうふうに能力作ろうかと思ったところで、遠見センリに拳法家というキャラ付けをしたので、なら反対に魔術師にしようと思って、そこから膨らませた感じ。占星術、特に宿曜道はネタとしてどこかで使いたいなぁと思っていたので、それも採用して、今の形になった。

 キャラを作った後に思ったが、順風耳の要素どこに行った。


 元の人格は千年近く前。平安時代頃の、呪術が栄えた時代に生きた留学僧のもの。その時に伝えられた密教の一分野である占星術を、彼は扱うことができる。

 ファントムとしては百年単位で存在している超古参。

 タカミの項目で、ファントムは二、三十年存在すると長生きであるという風に書いたけれど、それは自然発生したファントムや、因子の少ないもののことで、ジュンやセンリのように意図的に召喚されたファントムは、因子が強力なので自然消滅は少ないといえる。ただ、それでも四、五十年すると自我が薄れてくるものなので、やはりジュンとセンリは長寿な方で、半ば土地神に足を突っ込みかけている。ここまで来ると、龍宮家が没落しない限りは自然消滅は無いと考えられる。

 また、ジュンは現代にかなり適応しており、時代が変わるごとにその年代の流行を追っているところがある。最近の趣味はネトゲ。ジャージ姿で引きこもってパソコン操っているファントム。ありていに言ってニートである。だが、そうした生きがいがあるからこそ、彼はこの百年、消滅せずに存在を続けているということもある。


 相貌失認という障害を持っているハクアの介助人として、バディとなっている。遠くの出来事を知覚できるジュンは、危機察知能力が抜群に高いため、付き人としては最適だった。

 かつてはエキセントリックな行動を取るハクアに嫌気を感じていたこともあったが、極めて良好な関係を築けている。口数が少なく、内向的であるジュンを理解しようと何度も話しかけてきたからこそ、ハクアという少女にジュンは心を開いた。彼にとってはそれまでの百年で何度も代わってきた主従と違う、ほんとうの意味でのバディに出会えた形である。

 なお、いつもはフードで隠しているのだけれど、実態はかなりの美少年。だが、生前その容姿が原因で呪い殺されたという過去があるため、あまり好きではない。そのため、ハクアの相貌失認という障害はジュンにとってありがたいものでもあるのだった。


 スキル等は変更なし。




○國見桐絵キリエ

 魔力性質:無形

 ステータス

 魔力総量D 魔力出力C 魔力制御B 魔力耐性D 精神強度C 身体能力D 魔力感応B 術式構築D


 神咒宗家・國見家の長女

 パーソナルギフト『過去視の魔眼』を持つ。その能力の副作用で現実感が希薄であるという障害を持つ。現実と過去の区別がつかないほどの鮮明な過去を視るため、どんな出来事に直面しても落ち着き払った対応が取れる。その反面、緊急の危機に対しても危機感を覚えるのに時間がかかるため、日常生活には注意が必要。

 道の興奮を求め、過激な行動を取りたがるのは、それが過去ではなく現実であると実感したいため。それは本人にとっては切実なものであり、だからこそ強烈な感情を抱かせるコウヤの偏執性に惹かれた。


 第二部のヒロインの一人。

 そう、一応ヒロインのつもりなのである。


 少年のような凛々しい顔立ちと、柔和な物腰をした良家のお嬢様。いつもどんなときでもにこやかな笑顔を浮かべている不気味な少女。別名キチガイ女。

 出てくれば余計なことをするし、出てこないところでも余計なことしかしてない。関わるだけで面倒な女。当の本人も分かってやっているからなお質が悪い。


 ハクアと同じく初稿では存在しなかったキャラクターで、第二稿の加筆で初登場。そして第二部では過去の女としてずっとコウヤに険悪な空気を作らせている。

 当初は第一部の三章のみの登場のつもりで、ただキサキをいじめるお坊ちゃんが欲しかっただけだった。だからプロット段階では少年だったんだけれど、なんか書いててしっくり来なかったので、思い切って少女にしたらカチッとハマった感じ。おかげで第二部にも因縁を持ち込めたので、話を広げたという意味では成功だったと思う。

 ただ、第三稿であるカクヨム版での加筆では、あまりに暗躍しすぎたせいで、こいつがコウヤのこと大好きであることを隠しきれなくなったのがちょっとだけ心残り。作者的には、もっとコウヤに嫌がらせしているようなイメージを抱いてほしかったのである。まあ、その辺りの役どころは、カザリ&ルルがやってくれたというのもあるんだけれど。


 作者のお気に入り。

 第二部の加筆モチベーションは彼女の退場シーンを描くためだったと言っても過言ではない(おかげで、第二稿、第三稿共に加筆はクソ大変だったけれど)

 作者自身、『そういう風にしか生きられなかった異常者』というのが大好きで、ついついそういうキャラクターばかり作ってしまう所があるんだけれど、中でもキリエはかなり好みのど真ん中だったりする。

 自分のやりたいことをやりたい放題やっていて、そんな自分が大っ嫌いで、だけれどもそうして生きることしか出来ないという困った性質。自分をよく理解しているからこそ、自分がどうしようもないクズだと自覚している。きっと自分は幸せになることはないだろうと思いながらも、幸せになりたくてもがく苦しみを抱いている。その内心を欠片も外に見せないところが、彼女の最も異常なところであると考えている。


 キリエの行動基準は単純で、彼女は『未知』を求めている。日常的によくあるようなことでは、それが過去視で見ているものなのか、それとも現実に体験していることなのかが非常に曖昧で、とっさに反応が遅れてしまう。圧倒的な『未知』を経験して初めて、彼女は自分が現実を生きていることを実感できる。

 未知を得るためにキリエの行動はどんどん過激になっていき、とうとう中学二年の時に殺人事件を起こして実家から勘当を食らってしまった。そうして勘当されたキリエはアメリカに行くことになり、そこでコウヤと再会し、少しだけ人間的な感情を取り戻すことになる。


 彼女がコウヤに執着したのは、コウヤの内面が日常の中からにじみ出る異常だったから。外的要因がまるでなく、己の内面のみで過剰な選択を取れるという彼の精神性は、キリエにとって見たことのないものだった。とはいえ、それ自体は成長すればいくらでも見れる程度の『異常』で、コウヤが特別なわけではない。

 では、なぜコウヤだけに執着したのか。それは、単に初めて自分から興味を持ってしまったから、というだけの話である。彼と関われば、きっと見たこともない世界が見れる。そう信じて彼に近づいたところ、いつの間にか恋心を抱いてしまい、それを勘違いしたままコウヤの敵になる選択をしてしまった。

 言ってしまえば、蝶よ花よと愛でられて大切に育てられた箱入り娘が、顔面蹴られてびっくりして興味持ったら恋に落ちちゃったって話。異常性とかそんなんは二の次。ただコウヤがあんな人じゃなかったらもうちょっと違ったアプローチしてたのではないかなと思う。



 彼女が本音を吐き出した相手は、今のところハクアのみ。

 キリエ自身は最後まで気づいていなかったが、キリエがハクアに向ける感情は完全に嫉妬のそれであり、ハクアに対しては他の人間に比べて当たりが異常なほどにきついことが多い。自分と同じか、それ以上の障害を抱えていながら、なぜ平然と社会に溶け込もうとしているのか、という妬みと、そんな彼女がコウヤに信頼されている事実が気に食わなかった。

 ただ、恋敵だからこそ、最後の最後に本音を吐き出せたというのがある。


 ちなみに、裏設定で、コウヤのファーストキスの相手はキリエ。

 そのことを後から知ったハクアは、上書きキスを何度かしたのだとか(その時がハクアのファーストキス)


 主な魔法


 パーソナルギフト

・『過去視の魔眼』

 過去を見通す魔眼。『過ぎ去り視の魔眼』とも。


 その場にある結果を元に情報を分解、再現することで、過去に起きたこと、過去に起こり得たことを見通す。その再現率は、現在において得られる情報の多さによって変化する。

 彼女の場合、要素取得による『情報回帰』、情報解析による『場面回帰』、人の記憶と感応する『視点回帰』の三つと、自身の記憶から情報を組み立てる『回想回帰』の四つを扱える。過去視の能力としては全てを網羅していると言っていい。


 この魔眼は、現在地点において得られる情報を限界まで汲み取り、可能な限り過去を再現する。制御出来るようになればほぼ完璧な過去を得ることができるが、その代わりに、使用者はあまりにも鮮明な過去を見ることになり、現実と過去を誤認する可能性が出てくる。


 國見キリエの場合、過去を現実と同じ感覚で見ているため、常に『既視感』のようなものを覚えながら行動している。どんな物事も、実は過去を見ているんじゃないかと思ってしまうため、どんな出来事にも動揺することが出来ず、体験がおわったあとに「ああ、今のは現在か」と認識し直すことが多い。


 彼女が現実に覚えるのはあくまで既視感でしかなく、別に未来を見ているわけではない。なので読み違えることはしょっちゅうあり、そのたびに痛い目を見る。

 しかし、気にすることはない。痛い目を見ている自分すらも既視感を覚え、すぐに過去になるのだから。


 発動中は、翡翠色に瞳が輝く。


 カニングフォーク

 『現視うつつみの魔眼』

 目にしたことのあるものを現実に出現させる能力。原始とされる3つの魔眼の一つ。


 キリエの場合は、正式には『再現視さいげんしの魔眼』

 過去に存在した物質、現象を再現する能力となっている。

 

 過去視によって目撃したものを、マナと自身の魔力を消費することで現在に再現することができる。

 過去視の精度が高ければ高いほど、再現率も上がる。ゼロから魔力によって作り出すことも可能であるが、材料があれば魔力負担は格段に減る。キリエいわく、デバイス一つを再現するくらいなら、無からでも可能であるとのこと。ただし、メモリまで含めると、情報密度が格段にあがるため、雛形となる素材やデータが必要になる。

 過去から物質を持ってくるわけではなく、あくまで過去にあったものを再現するだけなので、タイムパラドックスとも無縁である。ただし、何でも再現できるわけでなく、あくまで、


 『過去視で見た場所』において、

 『過去にあったもの』を

 『現在に存在させる』

 という、三つの段階を踏む必要性があるので、汎用性は低い。


 発動中は翡翠色から虹色に瞳が変化する。



 現視の魔眼は、暴走すれば思考と視線だけであらゆる事象を引き起こすことが可能になる。それは、神が事象を改変する『神咒』と同等の御業だが、人の身で行使するにはあまりに過ぎた力であるため、一瞬で脳が焼き切れることとなる。

 キリエはあくまで過去視の延長として制御しているため最低限の事象改変しか行えないが、それでも生身への負担は大きい。死誘以上に術者にとっては危険な魔眼である。




 その2に続く!


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