第27話 「神界」再び

「ハアッ、ハアッ……」


 何度やっても成功しない。

 体力だけを消費していく。


 ――それでも私は続ける。


 成功するまで。

 愛する人の為に。


 ▼


「ぬうううううううっ」


 まだやれる。

 もう少し長時間発動し続けられる。


 今まで短時間しか発動させていなかった弊害だ。

 魔力の消費効率が悪い。


 もう少し魔力効率を抑えられて、もう少し長時間発動し続けられたら……。


 ――わらわは努力し続ける。


 成功するまで。

 愛する人の為に。


 ▼


「何か二人ともやたらと疲れてないか?」


 宿に戻るとアーくんがそう言ってきた。


 確かに私とレヴィちゃんは長時間の訓練で相当消耗している。

 でも、私はうまくそれを隠せているつもりで居たので、アーくんにそれを言われたのは驚きだ。


「……そんなことないよ」

「そんなことないのじゃ」


 レヴィちゃんと顔を見合わせてから同時に否定する。


「そうか、あんまり無理はするなよ?」

「わかってるよ~」


 アーくんの優しさが疲れた体に染み渡る……。

 私は照れ隠しに、軽い感じで返す。


 彼は話し掛ける前に行っていた作業を再開した。


 ▼


「今日、僕は『神界』に行って『創世神』にスキルの復活をお願いしてこようと思う。誰か付いてくる?」


 僕がそう問いかけると、フェラリーとアレシスがついてくると言ってくれた。

 キーがついてこないのは少し意外だったけど……。


「アーくん、頑張ってね!」


 ただ「創世神」に会って頭を下げるだけだから頑張るようなことはない気がするけど……。

 だけど、キーの心遣いには感謝だ。


 こうして僕達は三人で「神界」に行くことになった。


 ▼


「あっ、前回みたいに僕の魔法で飛ぶのは無理だ……」


 早速僕は壁にぶち当たった。


 前回「神界」に行ったときは、僕の風魔法で上昇気流を起こして飛んだのだ。

 今回はそれができない。


「じゃあ私が『魔法適性(木)』と『植物操作』で梯子をつくります」


 そんな手があったか……。

 よし、フェラリーに頼むか。


「フェラリー、お願い」


 そう言うと、フェラリーはどんどん梯子を練り上げていく。

 素晴らしいスピードと精度だ。

 30分程で、「神界」に続く梯子をつくりあげてしまった。


「よし、行くか」


 僕が一番、アレシスが二番で最後にフェラリーという順番で梯子を上っていく。

 もし落ちたときにすぐに対処ができるのはフェラリーだけだからだ。

 スキルが何一つない僕と「魅了」というどう足掻いても落ちたときの対応には使えないスキルしか持たないアレシスが下にいるよりも、上をフェラリーが見ていて、誰かが落ちたら素早く「植物操作」と「魔法適性(木)」でキャッチする方が遥かに安全だ。


 どんどん上っていく。

 これめっちゃ疲れるなぁ。「魔法適性(木)」で生み出した木の上に乗って「植物操作」でその木を延ばしてった方が絶対楽だったなぁ。

 そんなことを考えているうちに僕の体力はゴリゴリ削られていく。

 僕ですらそうなのだからアレシスとフェラリーはもっと疲れているだろう。


 僕が体力に限界を感じた頃、ようやく結界のところまでたどり着いた。

 そこでようやく下を見ると、


 ――木魔法を使ってめっちゃ楽そうに上ってきているフェラリーとアレシスがいた……。


「何でお前らだけ楽しとるんじゃ!」


 つい叫んでしまった。


「途中でこの方法を思いついたんですが、アーツさんがあまりにも一生懸命に上っていたので止めない方が良いかと……」

「んなわけあるかいっ!」


 思いっきり突っ込んでしまった……。


「まあいいや、取りあえずこの結界だ。フェラリーはまだ魔力残ってるか?」

「いえ、もう殆どありません」

「じゃあ少しキツいけど僕とアレシスだけで破るしかないか」


 僕とアレシスは魔力を結界に流し込む。

 そしてかなりの魔力を消費し、ようやく「神界」への道が開かれた。


 こうして僕達は、二度目の「神界」に訪れた。


 ▼


 僕達はすっかり壊された建物が元に戻った「神界」の中を歩く。

 取りあえず「創世神」に会わないと何も始まらない。


 「追跡」は使えないが、恐らくは一度目にいたあそこに居るだろう。

 結界が破られたことは分かっている筈なのだから。


 僕達がしばらく歩くと、人……いや、「神」の姿が見えた。

 「破壊神」。

 僕が今最も会いたくないやつだ。


 彼はどんどんこっちに向かってくる。

 僕に用があるのだろうか。

 僕はその場で待つことにする。


「何故ここに来た……?」


 いきなり物凄い剣幕だ。

 正直言ってかなり怖い。


「お前に『破壊』されたスキルを戻して貰うように交渉するため。そしてお前のやったことがお前の独断なのか『神界』の総意なのか確かめるためだ」

「ここを通りたきゃ死を覚悟しろ」

「どうしてだ? 『創世神』に会うくらい良いだろ? お前のあれが『神界』の総意ならスキルを戻して貰えないんだから。まさか独断であんな暴挙に走ってないよな?」


 どうしてもこいつ相手だと口調が厳しくなってしまう。

 だが、これで会うくらいはさせて貰え――


 ――ブオンッ!


 いきなり「破壊神」は殴りかかってきた。


 意志は固いってことか。


 フェラリーは魔力切れ。アレシスは戦闘向きじゃない。僕はスキルを使えない。

 「破壊神」が殺す気で来る以上、一回触れただけで「破壊」されて終わり。

 恐らく数分生き残れば他の「神」が来るだろうが、それまで生き残れるのか甚だ疑問だ。


 でも、逃げても恐らくすぐに追いつかれて殺される。

 ならば――。


 僕は「破壊神」こいつと戦うことに決めた。

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