第19話 少年と少女が願いを叶える物語。
昔々、ある魔族の村に一人の少年と一人の少女が居た。
少年の名はアルケイド。
少女の名はエリー。
二人は手を繋ぎ、星の下で約束を交わす。失ったモノを、共に取り戻すために。
*
「よいしょっ……。」
私の名前はエリー。角と尾を持つ竜人の子供です。私は今、お父さんに頼まれた薬草を摘みに行く帰りです。この辺りはたまにモンスターが出現するのでふつうの子供が一人が近づくのはとても危険です。
「やーいやーい!エリーだ!人間の子のエリーだ!」
危険なのに、いじめっ子はいつもやってきます。
「人間の子はテオリアに帰れー!」
「そうだそうだー!」
やってきたいじめっ子が私を囲います。
「うわあああ!!?モンスターだ!!」
「に、逃げろー!!!」
そしていつもこうなります。
「ほんとうにバカばっかり。」
私は帽子を深く被ります。私のお父さんは人間ですが、私は魔族です。だから私のお父さんは本当のお父さんではありません。私のお父さんはお医者さんで、以前行き倒れになっていた私を助けてくれたのです。
モンスターはぷにぷにと形を変えながら私に向かって来ます。私はこのモンスターを見てかわいそうだなと思いました。
「さようなら。」
なぜならこのモンスターは、私に倒されてしまうからです。
*
「すっげえ……。」
俺の名前はアルケイド。俺はたった今、すごいものを見てしまった。なんと、俺より小さい女の子がモンスターを一人でやっつけてしまったのだ。しかも普通に戦ったんじゃない。その子は魔術を使った。地面から大きな土の拳を出してモンスターを吹っ飛ばす魔術だ。…あんな本格的な魔術を見たのは初めてだ。
「誰?あなたもいじめっ子?」
「ち、違うやい!!」
いじめっ子だって?俺はそんな事しない!むしろいじめっ子をやっつけるためにここまで追ってきたんだ。
「じゃあ…友達?」
「……そう、かも?」
…そんな流れで、俺たちは友達になってしまった。
*
「お父さん!薬草摘んできたよ!」
「おぉ~!こんなに沢山ありがとう!本当にエリーは頼もしい子だ!」
「友達も連れてきたよ!」
「ほぉ~!……ってアルケイド君じゃないか!?」
「あるけいど?」
アルケイド。初めて名前を聞いた時、かっこいいなと思いました。でもどうしてお父さんはこの子の事を知っているんだろう…。
「あっ、先生どーも。いつも母上のクスリをありがとうございます。」
「ははうえ?」
「あー、うん。俺の母さんね、病気で体が弱いから、よく先生に診てもらってるんだ。」
「そうなんだ……。」
…お母さん。わたしはお母さんの顔を知りません。本当のお父さんの顔も知りません。
だから少し。ほんの少しだけ私は泣きました。
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