弾ける盃

殺したくはない

ただ振り向いて欲しいだけ

甘美なる液体に口をつけてもらった

喉が渇きましたでしょう、これをどうぞ

貴方は疑うそぶりもなく口をつけて

一口で顔を顰め、なんとも言えない顔をした

「私のことは飽きたか」仕方ないなと続いた言葉

心が冷える 「違います、毒では」そう告げたと同時に貴方は盃に注がれた液体を全て煽った

二の次が「満足か」だった

「いいえ」

俯いた私には貴方の顔を見ることさえ出来なかった

今となっては、どんな顔をしていただろう

空になった盃を私に渡し、貴方は私を抱きしめた

「これで許してくれ」

貴方のことが分からない。私は政略結婚でも嫁いできた

周りからのやっかみも耐えてきた

それが抱擁一つで黒の感情が溶けていく

「守ろう」

その言葉だけで私は

「お許しください」と耳元で囁く

貴方は少し困った顔で

「それを言うのは私の方だ。苦労をかける。だからそこ守ろう」

ああ、私は愚かで弱い存在だけれど、貴方がいれば心の盃は満たされる

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