掌編『夕闇の季節』

朶骸なくす

ギフト

夕闇深く、消えゆく橙

そんな空に願っていた

欲しいものを願っていた


声を

愛を

美しさを

優しさを

孤独も含めて

覚悟を決めた


正義も悪もないけれど

ただあるだけの季節を過ぎていく

治らぬ橙、夕闇呪い

いやいや、これは祝福だ

良いも悪いもお前次第


武器を使うかお前次第

どう使おうがお前次第


優しくするか

奪い尽くすか


決めろよ、嘆いても

季節は決めろと急かしている

壊れて泣いて嘆いても

季節は待たずにお前を殺す


それが嫌なら足掻いて見せろ

それが嫌なら生き抜けよ

無理やり幸せを掴み取れ

理性の保証はしないけれども


安心しろよ、我らは同胞

家に帰れず橙包まれ

焼けて溶ける身の上だ

忘れないよう死に顔を

日が沈む、その先で

朝が来る頃にゃ終わるだろうよ

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