不慮の事件
西書
第1話 死刑執行台
20xx年、
本国では今だに死刑制度が施行されている。
ここ10年の死刑執行回数は年間平均約12回
以前に比べ減ってきているが1カ月に1人、死刑で亡くなっている。
執行システムは簡単だ。
死刑囚が死刑台に上がり、刑務官が備え付けられた縄を首に掛ける。
準備が整い次第、3〜5名の刑務官が別室に用意されたボタンを同時に押す。
すると台の床が開き、落下。
落下中に縄が伸び切り死刑囚の首は骨ごと砕け死に至るというもの。
(この時複数人が押釦するのは刑務官の人権を守るためである)
しかし、「死刑宣告」を発令した側の人間にも責任がある。
死刑執行時、万が一生き残るようなことがあれば法に触れる可能性があるのだ。
そのため執行台のメンテナンス及び改善、開発など
設備の確実さを向上・維持させる業務項目がある。
~~
ある拘留所で「新型の死刑執行台」の説明会が厳粛に執り行われた。
開発者である●
人を殺す装置など作りたくない平和主義者だが、
研究熱心で抜かりのない設備を作ることに定評があり、
国から死刑執行台の「開発総監督」という異例の指令を受け
新型の執行台を製作した人物である。
この日は完成台を初めて識者の前に披露する日だった。
「初めまして皆様、竹邑と申します。
新型…といっても従来のものとほぼ変わりないのですが、
確実性を上げるために――」
識者と警護官など、合わせて20名ほどが彼を見つめる。
説明は至って簡単で、すぐ終わる予定だった。
「じゃあすみませんがそちらの方、来ていただけますか。」
獄中囚人の中からランダムに選ばれた1人が
付き人としてこの説明会に参加していた。
一種の課外授業みたいなものだろうか。
竹邑は彼を執行台に立たせ、縄を軽く首に掛けた。
「今は装置の電源を落としていますが
本来ならばいずれかのボタンか、もしくは複数同時に押すことで
この床が抜け落ちる仕組みになっています。
作動条件は自由に変更できます。」
と言いながら床に転がっていたボタン拾い上げ、慣れた様子で小突いた。
その瞬間――
「ガタン!!」
「うわぁっ!」
「キャァー!!」
なんと装置が作動し執行台の床は抜け落ちた!
軽くかかっていた縄は落下中に首を締め上げ囚人の命を一瞬で奪った。
大きな体が床下でぶら下がっている。
「はぁぁぁあ!!???」
竹邑は動揺と混乱で尻もちをつき、やがて過呼吸に…!
「何が起こった!?」
「分からん!囚人が死んだ!」
「…はぁはぁはぁ…はぁ…」
「竹邑先生!大丈夫ですか!!?」
竹邑は自力で立てなくなってしまい救急隊に運ばれてその場を離れていく。
見ていた誰もがまるで状況を理解できず、
囚人の無残な姿にパニックになる者も現れた。
看守は瞳孔と口を開けたまま死者を見つめている。
公開処刑を初めて見るような顔だった。
ガヤガヤと騒ぎ始めた会場の隅で何かが怪しく光った。
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