思い出にはならない

そっと手を天に伸ばしてみる

指先から魔法がでてきそうな星空の下で

どんな不自由な気分であっても

世界の空は、こんなにも美しかったのだと思い知らされた

あの日、恐怖と絶望を、不幸をいっぺんに運んできたような日に

次の日からは焦燥と不安でしようがなかった日に

いつのまにやら子供たちが外で遊び始めて

夜になっても眠れないと懐中電灯を持ちながら踊り

空に向かって光を照らして

お星さまを作っているの、と零した

結局、魔法は使えなかった

子供たちも使えなかった

だけれども振り返った時にあの夜空を思い出す

この先、見れるかどうかも分からない

ひと時の星にまみれた空を

夜を切なさで包み、星は子供らに子守唄を謡っていた日

二度と見たくないはずなのに、あの空が忘れられずにいた

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