夏色恋物語

一目惚れの人を祭りに誘う

賑やかな色とりどりと弾ける言葉の濁流に揉まれながら

繋げた手を、もう一度、強くつよく握りしめた

慣れない服、慣れていない靴

手首にかかる小さな紐

せっかく綺麗にまとめた髪はほつれているはずだし

結構、みっともないと思う

人波を渡る貴方は

私には目をくれず、ただただ手を離さないでいてくれた

どうして言葉にできないのだろう

こんなにも身体は正直なのに

喉まで出かかっている言葉はゴクリと音をたてて内側に吸い込まれる

歩いて歩いて、露店に目もくれず

いつのまにやら階段を上り、神社の社のその先へ

ああ、そこは知っている

ちらほらと人がいる、穴場

それは祭りの最後を飾るにふさわしい場所

ちり、と肌が焼ける

歓声が上がる

無理やり人の波を抜けてきたせいで

手は汗ばみ、肩で息をしていた

お互い、見つめ合うことはなかったけれども

確かに今年、私は好きな人と花火を見た

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