第九節 うつつ


その夢を見たのはひと月もあと


あの少女が誰か、もうわからない


壊れたみたいに泣いたわけも




思えば


きっと俺は七花のことは何もしらなくて


たぶん守るようなことも何もできなくて


たとえば、切菜への仕打ちと同じように。




大事に見返した思い出の中でふと、


あのアサギマダラのことを考えた


もし切菜のような果楽だったらと


でも


そんなこと知る由もない


姉ちゃんは部屋を出ていってしまった


弟の幻想には目もくれず




それは蝶が空を夢見るようなことなんだろう




だからあなたが幸福ならこれからも、


あなたはあなたのユメの中で。



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