第七節 灯籠ながし


切菜が現れなくなって二日して


七花が帰ってきた



「この子、寄生されているの?」



七花のいる部屋の幻想と切菜のいた部屋の幻想はよく似ていて、


けれど確実に違って


姉の姿は現実に立ち戻らせるようでいて


蝶の声を消し去るような


でも 幻想



「貰ってもいい?」



生まれてくるのが蜂なら きっと


いのちを繋げるための切菜の死を無駄にしてしまう


きっと 俺は


蜂のいのちをゆるせない




こんなに弱かったんだ


自分のことで精一杯で、誰かの願いすら見送れないまま



「―――うん、」



非力を目の当たりにしたいらだちに苛まれながら


幻想は幻想に正しく還っていったような気も、した



「…もらって。」




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