あなたのカゴの中で

外並由歌

第一章 あなたのカゴの中で

第一節 とらわれの蝶


 強すぎる日差しの中


 仲間と舞い踊る


 風が吹き


 太陽が隠れる


 風が吹き


 白い白い網が降る


 仲間は逃げる、僕を置いて



“姉ちゃん よろこぶかなあ”



 無邪気な声音


 風を切る速さは僕らとは違う


 あまりに疾くて息が苦しかった



 離れてゆく花畑を、


 僕はただじっと見つめ。




 広い空は遮断された


 閉塞が重なり、やがてたどり着く先で


 僕は彼女に出会う



“ユウ?”


“姉ちゃん 新しい蝶だよ 渡り蝶だと思う”



 そこに居た少女は、少年の言葉にそれはそれは美しく微笑んだ



“素敵。くれるの?”


“うん 死んだらまた言って 採ってきてやるから”




 それから二日


 僕は何も与えられず


 ただ見つめられるだけ


 このままでは死んでしまう


 せめて、水を


 冷たくて澄んだ美しい水を


 どうか僕にください


 どうか僕にください……


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る