ギルドオブザヒーロー

純血

第1話 冒険の始まり

「ギルも明日から待ちに待った冒険者生活ね!」

 ギルの母ノエルがギルに言った。

「おう!俺は誰よりも早く地下100階層の悪魔の大樹の根本にたどり着いて一番に切り落としてやる!」

「ふふ。威勢のいい子ね。」

 ノエルはそう微笑んで応援したが大樹を切り落とすのは簡単ではない。このイーリスの国には100年前、悪魔の大樹が生え、民の生活を害してきた。この大樹を切り落とそうと出来た役職が冒険者なのだが、最も深層に辿り着いた者でさえまだ49層なのだ。冒険者となれるのは18歳から、つまり、ギルはこの大樹に挑む冒険者の一員に加わろうとしているのだ。

 夕食を終え布団に入ったギルは明日のことで頭が一杯で、寝入れそうも無かった。

「役職はどうしよう。敵を切り倒して行く剣士!魔法で攻撃や回復をこなす魔道士!味方を守るタンク!遠距離攻撃の狙撃手!道具整備の鍛冶師!どれになっても楽しそうだ!」

 そんなことを1人で呟いているとさらに眠れなかった。

「ギルー?起きなさーい!」

 母の声が響いてギルはやっと目を覚ました。昨日眠れなかったツケが回ってきたのだ。

「ぎゃぁぁぁ、今日は朝一番で冒険者になってこようと思ったのにぃぃぃぃ!!」

 ギルは朝一発目とは思えないほどの大声で叫んだ。そして既に完成していた朝食を急いで片付け、役場に向かった。

 ギルは死力を尽くして走った。傍から見れば何故そこまで急ぐのか分からない。冒険者の役職は逃げも隠れもしないのにギルは走っていた。

 やがて、石造りの大きな建物が見えてきた。ここが仕事や戸籍などを管理する役場なのだ。

 ギルは役場の職員に話しかけた。

「あ、あの、ハァハァ、冒険者にハァハァ、なりたいんですが…。」

 ここまで全速力で走ったギルは当然息切れが激しい。流石にこの状態のギルに職員も引いたらしい。

「ぼ、冒険者ですね。では、こちらにお名前、住所、希望する役職をお書き下さい。」

 ここで、ギルが悩んでいた役職選択だ。ギルが選んだのは剣士だった。

「はい!ではこれで登録完了ですギルドの方はどうしますか?加入にしますか?結成にしますか?」

 ギルはこのことをすっかり忘れていた。冒険者になれるという気持ちの昂りに押されてギルドなどという言葉は頭の外に放り出されていた。ダンジョンをギルドなしでソロ攻略というのは今まで誰も試みたことではない。故にギルドに加盟していなければ冒険者となってもダンジョンへ行くのは厳しいのである。

「ギルドですかー。どうなんですね?」

「新米冒険者なら、加入をお勧めします。結成と言っても新米なら人はほぼ集まりませんしね。」

「でも、加入の場合はリーダーにはなれないんですよねー。」

「リーダーになりたいのなら結成になりますね。ギルド加入を望んでいる人の中から新米、ベテラン関係なしという人を探してみますね。見つかり次第お伝えします。」

「はい、有難うございます!」

 これで、ギルの冒険者生活の1歩目がスタートした。

 その後ギルは街に出かけた。

「冒険するのに必要なのは防具と武器はとりあえず必要だよなー。」

 ギルの手元には3000コインある。しかし、3000コインでは良い防具を買うことが出来ない。ギルは仕方なく3000コインで買える出来るだけ上質の防具や武器を揃えた。

 家に帰りると、母との話が弾んだ。

「どうだった?」

「とりあえず登録はしてきたよ。」

「役職は?」

「迷ったけど剣士にしたよ。」

「ギルドは?」

「加入してくれる人探して貰ってる。」

「それじゃあ明日から頑張らなくっちゃね!」

 母はそう言って、リュックや服などを用意してくれていた。ギルが冒険者を出来るのは母がいるお陰だ。その母を悲しませたりしないようにダンジョンでは安全を確認しなければならないし、安定した収入も得なければならない。そんな不安が頭をよぎっていたときだった。

「大丈夫!ギルなら出来る!」

 その母の言葉が暖かかった。不安全て吹き飛ぶ程の勇気をくれた。もう何も怖くない。明日からしっかり頑張ってそして、夢見ていた冒険者生活を目一杯楽しもう!

 そのギルの決意はギルと母との絆ぐらい固かった。

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