格遊仙女が空から降ってきた

瑠輝愛

プロローグ 落ちものヒロイン?

 K.O.

 You Loose.

『相手になりませんわ。おーほほほ』

 その瞬間、俺はアーケードコントローラーアケコンをぶっ叩いた。

「っざっ……けんじゃねーぞ。下段ばっか擦りやがって。このチンパンが!」

 どうせ聞こえない画面の向こう側にいっても、虚しいだけだとわかっている。

 だが、腹が立ってムカついて仕方がない。

 2Dゲーはコンボが難しいからと3Dゲーに移って、もう十年以上になる。それでも全く勝てない。

 笠健人リュウ・ケントは、年齢=連敗年数である。なんて笑い話にもならん。

 実際はその更に数十倍は負けているが。

 ネットで配信している強い連中の講座とか見たけど、全然役に立たない。

 だからもう参考にしていない。

 汚物でも送りつけてやろうかと思ったが、住所を知らないので諦めた。

 もう三十も超えたおっさんだ。

 俺にはもう格ゲーは諦めて、ソシャゲで虚しく二次元キャラのオッパイ触るしかないのか。あんな硬い画面のどこに浪漫があるのか。

「あぁぁぁぁぁぁ。もうっ、こうなったらなんでもいいや。ヤリでも鉄砲でも降ってこいやっ。何なら金でいいや。今からソープで童貞捨てに行くわ」

 といつものように天井を見て喚くと、二つの丸い見慣れぬ物がぶら下がっていた。

 ぽよんぽよん揺れている。

 何だ? とじっと見ていると――

「うわっ、部屋汚っ、くっさ」

 と女の顔がしかめっ面で出てきた。

「うわわわわわわ」

 ホラーの耐性がない俺はすぐに部屋の隅に避難すると、得体の知れないそれは床に落ちてきた。五体満足の姿なのは幸いだ。

 そして、女はこちらを見るに睨みつけていった。

「部屋、掃除して」

「は?」

「いいから!」


 三ヶ月ぶりに部屋を掃除し、空気を入れ替え、パンツ一丁だった俺はズボンを穿いた。

「なあ、あんた誰だよ!」

「私か? 見ての通り人間ではないぞ」

「天井をすり抜けてくる人間が居てたまるか!」

「なるほど、コミュ力は多少あるようだな」

「幽霊なのか」

「違う。格遊仙人じゃ」

「なんだそれ」

「今風に言えば、格ゲーの仙人だの。私は女だから、さしずめ格遊仙女かな」

「あんた、なんなんだ」

「さっきからもう少しクチの聞き方に気をつけなさいな。こんな美少女前にして」

「あ……」

 おっぱい大きいし、レースのような布地の服に大事な場所は紫や白の布地でビキニっぽい。脚や腕は素肌が見えている。何より、目が大きくてめちゃくちゃ可愛いぞ。

 そう思ってきたらオラ、めちゃくちゃ緊張してきた。

「あう、あの、ほ……」

 仙女はため息をついた。

「話を進めるか。おまえ、格ゲーやってて楽しいのか?」

「え?」

「楽しいのかと聞いておる。そこのおまえにも」

「俺しかここにはいないだろ。怖いこと言うな」

「仙女は千里眼もあるんじゃ。まあ気にするな。さて、答えを聞かせい」

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