第1話始まり

 命は平等だと、よく言うけれど、僕はそう思ったことは一度もない。

 ニュースでよく交通事故で〇〇人死亡、〇〇さんが殺害されました等、この世は誰かが死んで、誰かが生まれてを繰り返して廻ってる。けれど、こんな事気にしたことなんてない。おそらく誰もがそうなんだと思う。でも、彼女はそうじゃなかった。僕が持ってきたバインダーを、目を輝かせながらページをめくっている。

 彼女は星野美空、社交的で誰とも壁を作らず、模範的な優等生。日常をこよなく愛すと同時に非日常を愛している。そして、天国と地獄は在るのかをいつも考えている。

 僕はというと、適度に人付き合いをし、適度に日常を送り、適度に安息出来ればいいと思ってる。

「今回の被害者って、隣町で見つかったって聞いたけど、県外の人だったんだね」

 全部読み終えたのか、バインダーを机の上に置き、意見交換をする姿勢になる。

「そうみたい、犯人に連れてこられてなのか、連れられてなのかは分からないけど」

「でも、胸に数ヶ所の刺し傷があるって書いてあるけど、これって4年前のと一緒なの」

 彼女の言いたいことは分かる。僕は刑事である叔父に聞かされ、自分なりに事件をまとめたことがあるのだから。

「そう、刺し傷についてはニュースで報道されてないけど、4年前の通り魔殺人事件と同じ手口らしいよ」

 4年前と同じ事件だと聞いて彼女は嬉しそうに笑みを浮かべる。そんなときの彼女の顔はとても綺麗で、永遠に残したいと思う。

「こんな風に殺された人は、ちゃんと天国か地獄に逝けるのかな」

 彼女は思う。死んだ人間に救いは用意されているのか。

「どうだろ、僕は魂とかそういうの信じてないからわかんないけど、君の考えていることはただの生者の傲りだと思う」

 彼女は僅かな間口をポカンと開けていたが、すぐに口元に手をやり、考え、微笑む。

「確かにそうも言えるね」

 そう言うと、彼女は大きく伸びをし、

「そろそろ私行くね」

 荷物をまとめ、もっと話したいけど、と言いながらバインダーを僕に返す。

「それじゃ、明日図書館で。帰り気を付けなよ」

 形だけの気遣いをし、彼女を見送る。その後僕も大学を後にして、家に帰ることにした。

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