カモシカとシカの風船

アほリ

1#風船を見付けたカモシカの子

 ニホンカモシカのゲンタは、父カモシカのマウシイと母カモシカのミミカの間に産まれた小肥りの子カモシカだ。


 父カモシカのマウシイは、迫り来る野犬の群れに母カモシカのミミカを守る為に独りで立ち向かったという勇敢なカモシカの王様だった。


 そんな父カモシカのマウシイの、子煩悩な献身過ぎる程に育てられた為に、太りぎみな体型になった。


 「腹へった・・・腹へった・・・腹へった・・・」


 ゲンタは独り立ちして1週間、餌の草木の芽や実を探し回って山野を駆け回っていた。


 駆け回っているうちに更にお腹が減り、対にヘトヘトになって地面に倒れこんでしまった。


 「腹へったぁ~~~~!!腹へったぁ~~~~~!!」




 ゆらり・・・



 「ん?」


 カモシカのゲンタは目の前の木の枝に、一際巨大な木の実が成っているを発見した。


 「艶々して美味しそうだ!!」


 ゲンタは、興奮してふくよかな鼻の孔をパンパンに孕ませた。


 「よいしょ!よいしょ!よいしょ!よいしょ!」


 カモシカのゲンタは、崖をよじ登る要領で、木の枝にフワフワと蠢いている緑色の木の実を木によじ登って採ろうとした。


 「あれ?」


 ゲンタは気付いた。


 「これ、木の実じゃない。緑色のゴム風船だ?!」

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