このめんどくさい学校で俺にラブコメを!!

純血

第1話 勝ち組!のはずだよな?


 俺は勝ち組だ!そう思った。しかし、

「なんなんだここはぁぁぁぁぁ!!」

 準はそう叫びながら自転車を漕いでいた。

 数ヶ月前、つまり準が中3で受験勉強真っ最中のとき、準はここに入学する為だけに必死に勉強していた。

 村崎高校。ここは準の学区で3番目くらいの学力に値する公立高校なのだ。何故村崎高校に行きたいのかと言うと家からの距離や自分に合った学力、そして体験入学などがきっかけだったのだ。

「みんなで村崎行こうな!」

 石田や智紀とそう話していた日が愛おしい。

 石田久と中田智紀、この2人は準と一緒に村崎を目指していた。石田は別の中学校から受験のために転校してきた。数学が得意で全教科総合すると準と同じくらいの学力だ。智紀は準とは小学校からの友達で準や石田より少し学力が低かった。皆、村崎に行くために勉強していた。

 だが、この後こんなことになるとは3人とも思っていなかった。

「え!?志望校変えるって!?」

 智紀のこの言葉に準も石田も驚かされた。あれほど3人で村崎に行こうと話していたのに……。

「どうして変えるんだ?」

「今の学力じゃ、多分厳しい。悔しいけど、俺は安全圏狙って1つ下の学校狙うわ。」

 この時の智紀の心情は複雑だったのだろう。2人に申し訳ない気持ちや悔しさで一杯だったはずだ。

 村崎を目指す少年は3人から2人に減ってしまったのだ。しかし、準と石田の志望校は変わらなかった。

 あっという間に月日が流れ、受験当日となった。受験までのテストなどで数学の偏差値が43だったこともあり準の不安は大きかった。何にせよ村崎の偏差値は60前後なのだ。一方の石田も模試などでの合格判定が低く不安があったのだ。

 受験場に入り、国語の試験に向けて備えていた。試験が始まる直前に、 準はとてつもない腹痛に襲われた。

「ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!」

 まるで俺の合格を阻止するようにお腹の痛みは止まなかった。

 その影響もあり、やはり国語は不調。得意教科を落とした準は合格できる気がしなかった。そして、石田も得意の数学を落としていたのだ。

 それから数日が経ち、合格発表の日が来た。準は不合格覚悟で足を運んだ。合格者の受験番号が貼られた。

「え。あった。」

 奇跡がおきた。準は合格していた。

「……。俺、落ちたわ。」

 石田は残念ながら落ちていた。

 帰りの足取りが、空気が、気持ちが重かった。準は嬉しいが、悲しかった。

 入学式。準は同じ中学校の石田でも智紀でもない友達、高田雅人、藤本翔太郎、遠堂和也や、その他の知り合いと共に学校へ向かっていた。クラス分けの紙を見るとなんと、その場にいた5人全員が同じクラスだった。

 と、ここまでは志望校合格、クラスに友達もいる、というように勝ち組だった訳なのだ。

 ――ここで時は戻り現在――

 入学して数日が経った今、準はいや、準だけではなく翔太郎、高田、遠堂、そこにいる全ての生徒が負け組だった。だが、準は一番の負け組を見つけてしまうことになる。

 クラスの役員決め。委員長にはなりたくないものだ。決め方が早い者勝ちだったため、準は急いで委員長以外ならいいと空いた委員の欄に名前を書いた。すると、最後まで名前をかけなかった準の後ろの席に座る太田藍人という少年が委員長になってしまった。

 ああ。可哀想。準は心の中で思っていた。最後まで書きに行けなかったあたり、内気な性格なのだろうか。

 たちまち藍人には委員長のあだ名がつく。望んでもないのに委員長と呼ばれる。この苦痛は誰でも分かるはずだ。

 この時、一番の負け組と思われていた少年が後々一番の勝ち組になることは誰も知らなかった。










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