Long December Days:38
「そんなくだらないもののために僕の人生は決まっているのか」
冷たく言い放つ文成に、男はほんの少し戸惑いながら言い返す。
「くだらないものではない。全ての生命のために必要な行いだ。宇宙の存亡がかかっているのだ」
「宇宙の存亡が路傍の石で決まってしまうなら、宇宙など滅びてしまえばいい」
少し考えるようなそぶりを見せて、男は文成に言う。
「雪河智絵のしたことは無意味なことではない。昔から今までずっとだ。どうか早まった真似をするのは今は控えて欲しい」
怒りの表情を隠しながら、文成が男に告げる。
「僕は冷静だ。そして、僕はニコラスも、君たちネル人も嫌いだ。君たちが苦しむのなら僕はなんだってしてもいいと思っている。だが今は君の命を助けることがきっとニコラスをとても苦しめることにつながるだろう。……もう質問は終わりだ。話を続けてくれ」
「ありがとう、感謝するよ。――俺はニコラスみたいなネルの違反者を取り締まるのが仕事だ。せっせと仕事に打ちこみ続けたおかげで、ニコラスの横暴を制限することに大方成功している。奴は洗脳や魔法を通して多くの下僕を造り出しているのだが、その下僕の洗脳を解いたり、無力化したり、ニコラスをネルに呼び戻して封印したりしてな。最近までお前にあまり手を出してこなかったのはニコラスが封印されていたせいだ。今もまだ奴は封印から逃げきれていない。下僕はせっせと増やしているから、油断はできない状況だが、このままニコラスがソフィアにお熱になっているとすれば、10年もすれば――ニコラスと俺たちの戦いの歴史の一割にも満たない期間で――ニコラスを完全に封印することができる。しかし、ストレスによる怒りの矛先がこちらを向いたらしく、ニコラスがこちらを潰すことに労力を割きだしていてな。ニコラスが俺の命を狙ってくるのも、こちらを潰すことが地球征服の近道だという結論を出したためだろう。できれば、ニコラスが直接出てきた状況で不意打ちを仕掛けたい。いくら奴でも周りが見えなくなるほど挑発すれば、隙ができる」
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