Long December Days:27

すぐ近くまで車で文成を送り届けたぷでぃんぐに軽く礼を言い、文成はアスクレピオスの中へと駆けた。夜間警備用の玄関を抜け、まっすぐにソフィアのメンテナンスユニットのある部屋へ急ぐ。外部との通信環境の整った部屋など他にないからだ。

文成が部屋に着くと、ソフィアの影はなく、陽奈が文成を出迎えた。文成が時計を見ると時刻は深夜である。生身の部分の多い陽奈は自分の健康に気を遣い寝るようにしている時間をとうに過ぎていた。

「ハル?なんで君がここにいるんだ。僕が出た時はウチにいたじゃないか。こんな夜遅くに……」

慌てた様子で陽奈が口を開く。

「なんか足の接合部が痛くなってソフィアさんに助けてもらっていたの。それで、ソフィアさんの話によると10代の頃だけに時折起こる症状みたいで。とりあえず別の義足に替えてもらって応急処置をしてもらって痛みは引いたんだけど、この足じゃ上手く歩けないから、今日は帰れない」

それを聞いて、文成は陽奈に問いかける。確かに陽奈の足を見ると普段とは別の義足になっていた。旧式の、動きの鈍い義足だ。普段の義足とは比べ物にならないほど性能が低いだろう。

「大丈夫なのか?」

「うん、大丈夫。朝になったら精密検査をして、義足を新しくして帰るから」

そう言った後に、陽奈は苦笑いを浮かべる。

「なんかブンセーの方が顔色も悪いし息は切らしてるし調子悪そうだけど、大丈夫?」

「ここ数日動き通しな上に、今日は大分強い負荷をかけたからな。いい加減休んだ方がいいだろう。……ソフィーは今どこだ?」

「ソフィアさんなら、私の義足の手配をするために自分の義体の接続を切って世界中を探し回ってくれてる。候補をいくつか決めておくんだって」

「……そうか。じゃあ僕は帰ることにするよ。事務所の方がよく休める。お休み、ハル。早めに寝るんだぞ」

文成は陽奈に対して小さなささくれ程度の違和感を感じていたが、不安と疲労による誤解だと判断して、それ以上問い詰めることはなかった。

「うん、じゃあね。ブンセー」

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