Long December Days:26
「その時にソフィーが言った言葉は、とてもよく覚えている。『可愛らしいあなたに、ふたつ良いことを教えてあげましょう。世界は自分の予想を上回ることはないと思ってはいけない』そう言いながら、人差し指をぴんと伸ばしてな。その時点で冷水をぶっかけられたような気分になったよ。そして、中指も伸ばして、さらに続けて言ったんだ」
――どれほど世界が自分の予想を上回ったとしても、驚きによって思考を停止させてはいけない。
「その言葉によって、日本語の勉強をしたんだってことが分かってね。とても嬉しかったのをよく覚えている。あの時交わした握手がずっと心に残っている。ソフィーは、最高の友人だ」
「ところで」と話を区切って、文成がぷでぃんぐに訊く。
「なんでそんなことを今更訊いたりしたんだ?」
「いや、大したことじゃないんだが、俺は一応アスクレピオスの外部への通信を傍受していてね。外部からおかしな接続があったんだ」
怪訝そうな表情を浮かべて、さらに文成は訊く。
「いったいどんな接続があったんだ?」
「やけに念入りに発信元を誤魔化した通信。話を聞きながらついでに逆探知していたんだが、これは海外からの通信だな。それもNEの独立国家からの通信だ。大方ソフィアの奴との通信が目的だと思うんだが……」
「会話の内容は分からないのか?」
「いや、それはムリだ。俺が傍受していることがバレちまう」
文成は暫く何かを考えるような表情をした。
「何かいやな予感がする。この前の一件もある。やはりソフィーは何者かに狙われているのかもしれない。すぐに向かいたい」
「あいよ。じゃあ実験はまた後だな。足を準備しよう」
「ありがとう、ぷでぃんぐ。済まないな、頼ってばかりで」
「いつでも頼ってくれ、文成。どうせお前がいないと退屈してばかりなんだ。礼を言いたいのはむしろこっちだよ」
そう言ってぷでぃんぐは笑う。
「ただし、これがソフィアの奴がなんともなかったら今日のところはゆっくり休んでくれ。いくらお前の義体が最新型でそんじょそこらの義体とは桁外れの性能を持っているからって、休みなしで動き続けてたらその内壊れちまう」
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