Long December Days:17

ソフィアの焦ったような声が響く。

「文成。今の音なに?弓音みたいだったけど弓なんか持ってないでしょ?」

「そうか。ソフィーにも聞こえるのか。今サイコキネシスを使って見えない弓を引いたんだ」

「嘘でしょ?」

ソフィアのその台詞に文成は苦笑いを浮かべて答える。

「嘘じゃないさ。確かめてみれば空気が震えたことが分かるはずだ。ここのことなら全部データに取っているんだろう?」

少しの間を空けて、ソフィアの返事が返ってくる。自分の見たことが信じられないといった様子だ。

「……本当に突然空気が震えてそこから矢みたいなものが的に向かって飛んでいるわ」

「当然だ。そういう風にしたんだから。さて、100mでは射程の限界が分からないな。思い切って1km先まで的を用意してくれるかい、ソフィー」

すぐに、先ほどと同じように5m間隔の的が文成の前に現れる。どう見ても200個以上あるそれに、文成が怪訝そうな顔を浮かべると、ソフィアが言った。

「ヤケクソで1.5km分用意した。止まったとこから的の数を減らせば貫通力のテストにもなるわよね?」

「了解。早速もう一回試してみる」


第二射は、700mを少し超えたところで的の端をかすり、そこから先の的には命中しなかった。

「有効射程はおよそ700mか。どこにでも持ち込める銃だと考えればこれ以上のものは存在しないな……」

「並の銃よりも射程の長いサイコキネシスなんか取り回しが悪そうだけど、大丈夫なの?貫通力も凄まじいものなんだから、街中で使うのは不可能よ?」

少し満足げに呟いた文成に、仕事モードのトーンでソフィアが問いかける。

「そのことなんだが、実はもう試してあるんだ。同じように5m間隔で四つ的を出してくれ」

「はい」

ソフィアが出した四つの的の内、二つ目と四つ目の的を文成は第三射だけで破壊する。三つめには傷一つついていない。

「こんな風に、矢の破壊力を消すことができるんだ」

「そんなの、非現実的にもほどがあるわ」

怒ったようなソフィアの声。無理からぬことだ。

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